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石橋学神奈川新聞川崎総局編集委員が名誉毀損で敗訴

横浜地方裁判所川崎支部の判決が言い渡される

 石橋学神奈川新聞川崎総局編集委員の記事や選挙演説中の発言が名誉毀損にあたるとして、川崎市議会議員選挙の候補者であった佐久間吾一さんが280万円の損害賠償を求めて提起した民事訴訟の判決が、横浜地方裁判所川崎支部で言い渡され、石橋学さんに15万円の金員の支払いを命じました。

 この民事訴訟においては、佐久間吾一さんが川崎市議会議員選挙の候補者という公職の候補者であるという立場に鑑み、神奈川新聞の記事に対する名誉毀損を認めませんでしたが、これをもって神奈川新聞の記事の正当性が認められたとするのは早計であると思います。

一般市民に対しても「差別主義者」という決めつけをなしていた石橋学神奈川新聞川崎総局編集委員の記事

 石橋学さんは、公職の候補者であった佐久間吾一さん以外にも「差別主義者」と決めつけた記事を執筆しており、その中には一般市民を標的にしたものもあります。

 JR川崎駅前で行われた日本ウイグル協会の街頭活動に、在日外国人を排斥するヘイト活動を繰り返す差別主義者の渡辺賢一氏が加わり、同協会のハリマト・ローズ副会長に「関係ない横断幕を出してはいけない。やるなら遠くでやって」ととがめられる場面があった。渡辺氏はスピーチも許されず、15分ほどで立ち去った。

 差別扇動団体「日の丸街宣倶楽部」代表の渡辺氏は、街宣で在日コリアンを「寄生虫」呼ばわりするなど川崎市や市議会からも問題視されている。ローズ副会長は「ここはウイグル人の問題を訴える活動。自分の好きなことをしたいなら近くに来ないでほしい。チラシまきを手伝うくらいならいいが、それ以上のことは駄目と告げた」と話した。

 渡辺氏は市民に対する暴力行為を繰り返していることもあり、周囲では県警が警戒に当たり、差別に反対する市民もヘイトスピーチをしないか監視の目を光らせていた。横浜市在住の男性(46)は「ウイグル問題に便乗して中国人差別をあおろうとしたのだろうが、人権を痛め付けている差別主義者が参加する訴えが共感を得られるはずがない。協会は正しい判断をした」と話した。(石橋 学)

差別主義者の「便乗」拒否 市民も監視

 私はもちろん参政党には投票しない。なぜなら、差別をあおるデマをまき散らすヘイト団体だから─。

 そのように稿を起こした私は、締めくくりの取材のためJR川崎駅東口へ向かった。8日午前にあった参政党の演説会。ほどなくこの国の荒廃があらわになる。遠巻きに警備していた警察官が表情も険しく耳打ちをしてきた。

 「安倍元首相が撃たれた」

差別主義者の愚劣 筋違いな「報復」

 集まっていた100人ほどの支持者の中には川崎で見知ったレイシストたちの姿があった。その顔ぶれが参政党がどのような団体かをよく物語っていた。

 渡辺賢一氏。日本は外国人に乗っ取られており、日本を取り戻さなければならないと、在日外国人を迫害するヘイト街宣を30回以上繰り返す陰謀論者で、差別者集団「日の丸街宣倶楽部」の代表。

 佐久間吾一氏。ネオナチの瀬戸弘幸氏や弟子の有門大輔氏らと差別活動をともにし、川崎市議選候補者として在日コリアン集住地区に乗り込み、退去を迫るという桁外れに卑劣な差別主義者。

 その瀬戸氏は30年にわたって外国人排斥を続けてきた筋金入りの差別主義者で、この国で最悪のレイシスト、桜井誠氏が党首のヘイト団体「日本第一党」の最高顧問。その一派である中田聡氏、川崎区にある瀬戸氏のアジトに出入りする氏名不詳、サングラスに真夏でもニット帽の男も聴衆の輪に加わっていた。

 50人も候補者を擁立するカネも議席を得ようという勢いもある新興団体にすり寄ろうという魂胆が見え見えだ。

 そもそも自分たちが言ってきたこと、してきたことと何ら変わるところがないのだ。神奈川選挙区の候補者、藤村晃子氏は選挙演説で「北海道の静岡県ほどの面積の土地が中国に買いあさられている。侵略された土地を日本に取り戻そう」とデマ宣伝を繰り返す。

 根拠を聞けば、北海道選挙区で立候補した大村小太郎氏がそう言っていたからという。呆(あき)れた。大村氏は日本第一党から東京都練馬区議選に出馬した差別主義者。参政党が抱える差別性を証明するにはこれで十分だ。実際、瀬戸氏によると佐久間氏と中田氏は既に入党を済ませたという。

 選挙カーの上では参政党共同代表で比例候補者の吉野敏明氏の演説が続いていた。「ユダヤマネーに産業が乗っ取られる」「次の参院選までに乗っ取りが終わっちゃう」「天から降りてきて言葉をこの口を使ってしゃべっている。天が『この国を救ってくれ』と言っている」といった陰謀論からオカルトまがいの弁舌に喝采が起こる中、スマートフォンで知ったか、誰かが「安倍晋三さんが奈良で撃たれた」と叫んだのだった。

 ここから始まる渡辺氏のツイートが差別主義者の底なしの卑劣さ、ヘイトスピーチの危険さをあますところなく伝える。

 〈一刻でも早く日本を取り戻さなくてはならない。日本の元総理が撃たれるなんて異常だ。そして、漁夫の利を得る奴等にもう乗っ取られてるんだと思う〉

 事件直後からツイッターでは「犯人は在日か」というデマがあふれ返っていた。大事件のたびに繰り返される、属性を犯罪と結び付ける卑劣で危険な差別扇動。そこへ「日本を取り戻す」「漁夫の利を得る奴等」「もう乗っ取られてる」というヘイトワードをぶちまける。渡辺氏は熱心な安倍氏支持者として振る舞っていたが、敵意をあおる最高のネタとして事件をダシにしまくるのだった。

 死亡が確認された後は報復の実行をより強くあおり始める。既存政党への批判に参政党への高揚感までにじませ、薄ら寒くなる。

 〈政治家の先生様よ。日本の元総理大臣が殺されて「残念です」「哀悼の意を捧(ささ)げます」で終わりですか? 元総理が殺されても「遺憾の意」みたいなマネで終わらせるつもりか? 既存の政治家、政党はだからクソなんだよ〉

 ツイッター上では容疑者が元海上自衛官と分かった後も「帰化人ではないか」という醜悪極まりないヘイトスピーチが続いたが、渡辺氏はそれを上回る卑劣さをみせた。動機に宗教団体が関係しているらしいと報道されてなお、憎悪のまなざしを強引に在日コリアンへと引き戻す。

 〈もともとは団体幹部を狙った? 統一教会にせよ、創価学会にせよ、結局は半島系ではないか。そんな奴等がこの日本にのさばってる現実を正したい。無防備の人間を後ろから撃つなんて武士道には無い。日本人のマインドではない〉

 なんという執拗さか。かくして卑怯(ひきょう)にも、一方的かつ誤って「敵討ちの相手」とされたマイノリティーへの全く筋違いな「報復」というヘイトクライムの危機が迫る。

刃が突き付けられた先は

 私は知っている。参政党の演説に拍手を送っていた渡辺氏が、あの場で何をしたのか。

 ニット帽男の耳打ちで襲撃事件を知った渡辺氏は驚愕(きょうがく)の表情を浮かべ、いても立ってもいられないといった様子で聴衆の間を行ったり来たりし始めた。カメラを向けている私に気付くと「安倍さんが撃たれたって本当か、おい、新聞記者!」と興奮した様子で詰め寄ってきた。こちらが後ずさりしても突進をやめず、「聞いてんだ、おい!」と声を荒らげるや、体当たりで私を突き倒した。

 自分から近づき「お前に構ってる暇はないんだ!」と吐き捨てるなど、その言動と行動は全く支離滅裂だが、私にはレイシズムが発動した結果の暴力に映っている。私は反差別の立場で渡辺氏を批判し、歴史否定や朝鮮学校への差別政策がヘイトスピーチの元凶になっていると安倍政治についても厳しく非難してきた。渡辺氏はだから、敵である記者にマイノリティーの姿を投影させながら、やり返したつもりでもあるのだろう。

 信じられないという身勝手な動揺、やり返してやるという差別に基づく強い衝動がもたらす巨大な暴力を私たちは実行済みだ。1923年の関東大震災直後の朝鮮人虐殺。井戸に毒を入れているというデマを信じ込んだ民衆までが自警団を組織し、朝鮮人をなぶり殺しにした。

 背景には当時日本人が支配していた朝鮮人への差別と敵意、蔑視があった。人を人と思もわぬレイシズムは暴力をたやすく振るわせる。差別をあおるヘイトスピーチがヘイトクライム、民族虐殺、侵略戦争へエスカレートしていくことを歴史は教える。

 だから悪質なヘイトスピーチは法規制によって強制的に止められなければならない。だが、立法を担う国会議員を選ぶ場が差別扇動の場として悪用されるというすさまじい倒錯は、歯止めを欠いたまま深まるばかりだ。日本第一党などヘイト目的のレイシスト集団とは違い、元国会議員や元地方議員を中心に立ち上げた参政党が議席を得るようなことがあれば、ヘイトで支持を集め、差別に基づき社会を築いていくという暴挙が公然化、一般化することを意味する。

 それは断じて間違いだという意思を示すために1票がある。

 たまたま目の前にいた反ヘイトの記者が標的にされたが、刃が突き付けられているのはあくまで弱い立場に置かれているマイノリティーなのだ。在日コリアンが集住する京都府宇治市のウトロ地区では昨年8月、放火事件が起きた。不法占拠してるというやはりデマに突き動かされたヘイトクライムだった。こんな不正義、不公正な社会をいつまで続けるのか。

 さらなる暴力の犠牲者を防ぐには暴力を生み出す差別と闘う政治家が必要だ。そして包括的な人種差別撤廃法の制定に取り組んでもらわねばならない。

 思えば、川崎市議会でヘイトスピーチ罰則条例に賛成し、国政でヘイトスピーチ解消法を成立させたのを除き、差別やその暴力に歯止めをかけることに後ろ向きだったのが自民党政権ではなかったか。憲政史上最も長く、その座にあったのが安倍元首相だったことも私は忘れない。

ヘイト暴力許すまい 差別に抗う1票を

 川崎市や相模原市などで外国人排斥のヘイトスピーチを繰り返す差別主義者、澤村阿万(あまん)氏が包丁を手に「武装した」とツイッターで宣言し、武器使用も示唆している問題を巡り、市民の批判と警戒が強まっている。差別の標的とされている地域住民を恐怖に陥れている上、ヘイトクライム(差別を動機・目的にした犯罪)の危険もあるとして、20日に川崎で開催が予告されているヘイト街宣の中止を呼び掛けている。

 澤村氏がツイートしたのは8日深夜。柳刃包丁3本を握り締めた写真に「武装なう(武装した)」とのコメントを添えた投稿は11日現在、削除されていない。

 「加害を実行する、しないにかかわらずツイート一つで十分脅迫の効果が生じている。とりわけヘイト街宣が繰り返されてきた川崎・桜本の在日コリアンの市民には恐怖以外の何ものでもない」。JR川崎駅前でヘイト団体の活動に備えて監視を続ける「川崎駅前読書会」の代表、木村夏樹さんはそう憤る。

 「日本は外国人に乗っ取られる」といった外国人を敵視するヘイトスピーチで知られる澤村氏はその後も「闇の組織と戦います!」「暴れるか、暴れないかしかねえからな」と好戦的なツイートを続ける。20日には澤村氏もメンバーとして参加してきた差別者集団「日の丸街宣倶楽部」のヘイト街宣が同駅東口で行われようとしている。横浜市の男性はツイッターで「直接の人的被害やヘイトクライムを想起させ市民を不安に陥れる行為で看過できない」と中止を呼び掛ける。

 そもそも同団体の渡辺賢一代表自身、差別に反対する市民に暴力をふるう事件を起こしてきた。その被害に遭い、レイシストの暴力性を身をもって知る男性は「差別心があるから人を傷つけても気付かない。ツイートを批判されても平気でいられる差別主義者は笑いながら人を刺すことができる」と警戒する。

 渡辺代表は澤村氏を除名にしたりせず、ヘイト団体「外国人犯罪追放運動」理事長でネオナチの有門大輔氏に至っては、役員である澤村氏をかばう記事までブログで発信している。

 横浜市戸塚区の高畠修さんは「澤村氏が党員だった日本第一党を含め、本人を叱責(しっせき)して暴発を食い止めなければならないのに、暴力を否定する声明一つ出さない。差別団体の反社会性をよく表している」と断じ、「澤村氏は無責任に切り捨てられ、ますます歯止めが利かなくなる恐れもある。警察の力でヘイトクライムを防ぐしかない」と話している。(石橋 学)

「武装」宣言に強まる批判と警戒 ヘイト街宣中止呼び掛け

 石橋学さんの杜撰な「差別主義者」や「ヘイトスピーチ」認定によって執筆された記事は、公職の候補者であった佐久間吾一さんや瀬戸弘幸さんにとどまらず、一般市民でしかない渡辺賢一さんや澤村阿万さんなどにも向けられています。これらの記事に対して民事訴訟が提起された場合、裁判所の判断は今回の民事訴訟とは明らかに違った法的評価をなすことになり、結果として今回の民事訴訟とは異なった判決を言い渡すことになるかもしれません。