読書録ーロボットの脅威 人の仕事がなくなる日

ロボットの脅威を読了しました。内容と感想をメモします。

内容

ロボットの脅威とありますが、ロボットだけでなくテクノロジー全体の発展が、雇用と雇用に基づいて生活する人々への影響を考察した書物です。

僕は経済学部に通う大学生ですが、経済学の頭のいい人たちは、技術発展が雇用を奪うという考え方に対して否定的です。

ラッダイト運動から始まり、今までテクノロジーの発展が人々から収入源を奪うことへの危機感は何度も立ち上がってきました。そして何度も杞憂に終わってきたのです。

このことは、技術発展したからと言って仕事がなくなるわけではないことのわかりやすい根拠として使われてきました。ほかにも、多くの経済学者や知的リーダーが、テクノロジーの発展が雇用を奪うことを杞憂だと断じてきました。

僕もこの考えに流されていて、いつの間にか、技術発展を雇用への脅威と捉える主張をなめるようになっていました。ですが、この本の筆者は”今回のテクノロジーの発展は違う”という立場をとっています。

その根拠に、雇用なき回復と呼べる、経済の恐ろしい7つのトレンドを挙げます。

それは
・停滞する賃金
・労働分配率は低下し、企業収益は増大
・労働力率の低下
・雇用創出の減少、雇用なき景気回復の長期化、長期失業者の増大
・格差の拡大
・近年の大卒者の所得低下及び失業
・分極化とパートタイム職
の7つです。

僕は特に「労働分配率は低下し、企業収益は増大」に着目しました。これは、GDPに占める労働者全員の所得を合わせたものが、低下していることです。このGDPに占める労働者全員の所得総額は、経済学では一定の割合を保つと思われていました。

しかし、低下しているのです。

しかも上記の労働者には、超高給取りのCEO達やスター選手たちが含まれているのです。つまり、一般労働者が経済発展からあまり利益を受けていないのです。

では労働者以外のだれが、経済発展から利益を得ているのか。それは大企業です。今や大企業の収益は異常なレベルで高く、債務は異常に低いです。

これは企業が、少ない労働者で、あるいは安い労働者で大きな利益を得ているということです。つまり少ない給料を払うだけで莫大な利潤を手にしているのです。

僕がこれに着目したのは、利潤追求は企業の思考の目標だから、留まることはないうえ、他の恐ろしいトレンドを生み出す原因のような気がするのです。

企業が利潤を増やすには売上を上げるか、コストを減らすかです。
そして現在、経済発展の主流は、情報テクノロジーのような”無駄”なコストをカットするような技術への投資になっています。

このせいで、情報テクノロジーに勤める人たちと、大企業に残ることのできた人たち、後は株主たちに利益が集中してしまっていることが現在の問題だと思います。

これは、この本の内容と一致します。

現在の主な技術発展は、労働者と交替できるロボットや強力に発展しながら全産業に影響を与える情報テクノロジーによるものです。

これが強力に雇用を消し飛ばして、多くの人は雇用にありつけないという問題を生んでいるようです。これは、低賃金労働だけではなく、比較的高給取りだと思われていたホワイトカラーの雇用も消し飛ばされるようです。

大半のホワイトカラーの仕事は情報テクノロジーが得意なルーティンワークですし、今まではルーティンワークと言えなかった弁護士業のような高度な知的労働も、複数の組み合わせのルーティンワークとして、情報テクノロジーの射程範囲のようです。

つまり、ほとんどの仕事は代替可能になってしまうのです。

この対策として教育への投資を増やして、新時代でも生きていくことのできる高度人材を増やそうという意見があります。しかし、この意見も微妙です。

なぜなら教育へのリターンは減少する可能性が大きいからです。

たとえ大学を卒業しようと、雇用が希少すぎて、その教育を生かせる人はごくわずかであるためです。

教育を生かせなかったひとは莫大な学生ローンに苦しみながら、低賃金労働でその日ぐらしをしていくしかないようです。

こうして多くの仕事が自動化された世界は、今の社会の仕組みでは悪夢です。多くの人が職にありつけないで、窮乏し、一部の人に富が集中する。経済活動の中心は富を持った人を満足させることに向けられて、貧困状態の大衆は無視されてしまうかもしれません。

しかし貧乏人の方が多く支出するので、格差が拡大すると経済成長に悪影響かもしれないようです。しかも、多くの途上国が発展するには国民に雇用を供給する必要があるので、自動化された未来では、貧しい国は永遠に貧しいままとなります。

もう一つ悪夢があります。それは医療市場です。医療市場は特殊な市場で、経済競争の原理が働いていないので、たとえ技術が発展して、自動化が進んでも、医療費の削減につがならない可能性があります。

多くの病院がコストが減った分を懐に入れることが可能なのです。このため、国の支出の多くが医療費に向かって、貧困状態にある人は放置されてしまうかもしれません。

筆者は、この技術発展の脅威に環境問題の脅威が加わることで、人類はその脅威に耐えきれないのではないかと心配しています。

だからこそ今の雇用に頼った社会の仕組みを根本的に変えるべきだと考えています。

その一つとしてベーシックインカムの提案をしていました。もちろん、ベーシックインカムには怠け者のような批判があると理解していて、そのメリットデメリットを論じていました。

感想

ぼくは、この本を読んでテクノロジーが僕たちの生活を怖し得るのだということを認識しました。

しかしテクノロジーの発達自体は、働かなくてもいい社会を作ってくれているように思います。別に僕たちが働かこうと働かなかろうと、全員に必要な必需品や、余暇を楽しむものは生産されているからです。

だからこそ問題は、みんなで働いてもっとたくさん生産することではなくて、あまっている生産をどのように分配するかということに移っているように思いました。

そして筆者が主張するようにベーシックインカムはいい方法のように思えます。正直なところ僕自身は、雇用はテクノロジーの発展に勝てる気はしません。

そんな時代には、働こうと働かなかろうと同じように思えるのです。
働く働かないの違いは、寝る寝ないの違いのように自分の好きにすればいい問題だと思うのです。

もし作るのにほとんどだれも苦労していないなら、ただで必要なものをもらってもいいのかなと思います。

また、筆者の主張で印象的だったのは、怠け者の取り扱いです。

ベーシックインカムの導入は、確かに1日中ゲームをするような怠けものを増やすかもしれません。しかし筆者は、これは果たして問題なのかと指摘していました。

そういう怠け者たちは大体にして、生産性の低い人たちです。それならば、残った仕事は生産性の高い人たちに任せて、生産性の低い人たちには職を離れてもっらた方がいいです。

既に何十年も所得は停滞していて、これを改善するために、非生産的な人には労働市場から退出してもらって、頑張りたい人には多くの給料が支払われる用にすることも可能です。

そして非生産的な人もベーシックインカムを得ていることで、消費を行い、勤勉な人たちの売り上げに貢献することができます。

この論は、ベーシックインカムの良さを認識させてくれます。ベーシックインカムは社会を根本から変える力があります。ベーシックインカムは今までの労働を貴ぶ価値観とは相容れないと思います。しかし、労働はもはや僕たちを助けてくれません。

いつまでも労働を基にした社会体制ではやっていけないです。だからこそ次の社会体制として、ベーシックインカムを基にするのはありだと思います。

今や生産は過剰すぎて、需要不足が経済の問題になってしまっています。これはつまり生産は十分にあるということだから、一人一人の生活を支えるのはわけのないことだと思います。

これからは成長ではなく、公平な分配を達成することを求めればいいと思いました。

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