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彗星のごとく現れたラジオスター霜降り明星

霜降り明星という、せいやと粗品のお笑いコンビを初めて見たのはM-1グランプリ2018だった。

僕はラジオが好きだ。

テレビで見ていた芸人がラジオをやっているなあと思ったり、あるいはラジオから芸人を知ったりすることが多かった気がする。
けれど、小学校のときはめちゃイケをよく見ていたし、トリビアの泉もよく見ていた記憶がある、あれは完全なお笑い番組とは言わないが。

その後もエンタの神様くらいはちょくちょく見ていた気がする、あとは笑いの金メダルとかか。レッドカーペット……。記憶を遡ればキリはないと思う。

そんなわけで、バラエティ、お笑い番組はそれなりに好きだった。とはいえ、お笑い芸人の熱心なファンになったことはない。

小学生のとき、めちゃイケで岡村隆史を知って、好きだとは思っていても、中学生くらいになった頃にはその感情もなんとなく薄くなっていた。
テレビにいるならなんとなく見る。と、そんな感覚だった。芸人を見に、劇場に足を運んだこともない。

ライトなお笑いファンという表現が適しているかもしれない。とにかく、そんなに熱心になれなかったのだ。

そんな僕が初めて、霜降り明星というお笑いコンビを少しだけ追うようになった。

この記事では、その経緯を書いていこうと思う。
きっかけは、やっぱりラジオだった。

はじめに、霜降り明星との出会い、その後まもなく始まった霜降り明星のオールナイトニッポン0と、語り継がれる伝説回について。
それから、今の霜降り明星のオールナイトニッポン。最後に僕と霜降り明星、という順に書いていこうと思う。

記憶を辿って書いているものなので、放送内容の正確さは保証できないことはご了承いただきたい。


霜降り明星との邂逅

M-1グランプリ2018を見ていた。
ジャルジャルの国名わけっこは面白かったのだが、それ以外、特に強く印象が残るコンビはいない中、九組目で霜降り明星というコンビが笑御籤から引かれる。

紹介VTRが入って年齢が表示され、随分若いなと思った。同世代だった。

1stステージ。
漫才が始まる、最初から結構ウケていたと思う。テレビの前で笑っていた僕がいた。
豪華客船という設定でせいやがボケ続けて、粗品がそれにフレーズを使ったツッコミを入れている。なんとなく新しいな、と思った記憶はある。

個人的に彼らの漫才で一番面白かったと思うのは以下の件だ。

せいや「ピンポンパンポーン、シアタールームにてタイタニックを上映します」
粗品「縁起悪い!
せいや「ヨーソロー、海岸線を走行しまーす(身体をガタガタさせるジェスチャー)」
粗品「海岸線に沿ってね~、うーん……」
粗品「リアス式海岸!

この畳み掛け、会場も拍手笑いだ。

特に身体を使ったボケに対するツッコミが、深い知識でもない、かといって学んでこなければ殆ど知りようもない「リアス式海岸」という絶妙に客の知識を擽るワードチョイス。
このボケとツッコミで、この年のM-1では一番笑った記憶がある。

その後の流れでも今までの漫才では見たことも聞いたこともないフレーズが飛び出した。

せいや「オーロラ出てきた! 赤と青と緑で、歯磨き粉の匂いする」
粗品「オーロラツーステインクリア!

「オーロラツーステインクリア」というツッコミが成立してウケる漫才はこの当時あったのだろうか。
笑えた。ライトなお笑いファンからすれば、すごく面白いと思った。
ボケが始まり、何を言うのかなと思っていると、その期待を裏切らない、一段上のフレーズが入ってくる。

僕はお笑い評論家でもなんでもないのでネタに関しての感想はここまでにする。

また、上記のボケとツッコミの間や、相槌、二人の表情、動きなどは文章で書き起こすことは困難だ。アマプラなどで過去のM-1が見られるので、それで見ていただければありがたい。

一応、霜降り明星のYouTubeチャンネル、しもふりチューブではこのネタのボケとツッコミの役割を逆にしたものが投稿されているので、埋め込んでおく。

かなりふざけてはいるが、ネタとしてはこの流れになる。


霜降り明星は予選1位で決勝に進出。
そして史上最年少でM-1グランプリ2018優勝。

と、ここまでが霜降り明星との邂逅だった。

その後、二人はとんでもないスピードで売れていくわけなのだが、大会が終わった時点で僕の意識から霜降り明星という存在は一旦離れていく。
M-1で面白い漫才をして、優勝したお笑いコンビ。という認識でしかなかった。

霜降り明星のオールナイトニッポン0

ニッポン放送をキーステーションに全国36局ネットで放送しているオールナイトニッポンは、深夜1時から3時までの二時間番組である。

正月前後のオールナイトニッポンはレギュラーパーソナリティの代わりに、臨時パーソナリティが務める。

これが生放送だったか収録だったのかは覚えていないのだが、年明けに霜降り明星のオールナイトニッポンが放送されていた。あー、M-1取ったからこういう仕事もあるよな、という認識で聞き始める。


以下の記憶は正確ではないが、こんなことがあった。

冒頭、せいやがオールナイトニッポンを務められる、という事実に興奮していた。粗品はそこまで興奮した様子はなかった。

普通の芸人ラジオだ、という印象。せいやが粗品のフリップと呼ばれ、腐されているやり取りなどをなんとなく思い出せる。
まあ、面白いなーくらいに思って聞いたが、ネタコーナーに入ってから様子は急変した。

大喜利だったか、あるあるだったかをメールで募集するコーナーだった。
お題は「学校で起きる嬉しいこと」というような感じだったと思う。

普通にネタメールを読み進める粗品。
「机をくっつけたとき、高さが他の人と一緒だった」と、少しニッチで変わったメールが多いなあ、という印象のメールを何通か紹介してコーナー終了。CMへ。

そのCM明けだったと思う。

不穏なBGM、粗品の声色が神妙に変わる、せいやが狼狽えているような演技をする。

「ここからは不採用メールを紹介していく」

と、おおよそこんなことを言い出して、ネタが被ったメール、あるあるや大喜利で、何々「しがち」と文末に書くのは面白くないなどとリスナーを腐しながらメールを紹介。

いや、もっと乱暴な言葉だったかもしれない。

そして全てのラジオネームを読み上げ、メールに暴言を吐き、最後にメールを破るんだったか、全部投げ出しながらだったか、とにかく粗品は叫んだ。

おもんないんじゃー!

リスナーを、ハガキ職人をこんなに真正面から腐すパーソナリティは珍しいと思う。

メールを読んだその場で面白くない、という言葉を投げかけることはあるものの、わざわざ採用されなかったメールを読むコーナーを作り暴言を吐いて、メールを投げ捨てるようなラジオは近年聞いてこなかった。

例えば、ナインティナインのオールナイトニッポンでは、ハガキ職人に「なぜ読まれないか考えてください」と諭す文化があったそうだが、僕がちゃんと聞き始めた頃にはそのような文化はなくなっていたと思う。

「ちょっとこれは長すぎるから簡潔にして送ってくれ」

と、岡村隆史が一人でパーソナリティを務めていたときに、言っていた記憶くらいだ。声色やネタ自体のフォローから、決して腐しているわけではなかった。

凄いラジオだ、と思った。
そんなわけで、その放送が好評だったのか、霜降り明星は金曜日二部のオールナイトニッポン0を担当するようになる。


僕は基本的に電波をそのまま流しておいて、聞いてみて面白いものを聞くようになる。この時間に誰が務めるのか、という事前情報は積極的には仕入れない。

金曜日の3時から5時まで放送している霜降り明星のオールナイトニッポン0も初回から聞いているわけではない。どこかのタイミングで、たまたま流していたらぶち当たった感じだったと思う。

一年目には毎週ではないものの、それなりに聞いていた。

曖昧な記憶ではあるが「スルーマン事変」なども覚えている。それが放送されたのはたしか一年目だった。実際この件が面白いかどうかは覚えていないし、別に聞かなくてもいいとは思う。

ただ、普通に面白いラジオだったから、聞いていたという具合だ。トークも上手いし面白い、コーナーも面白い。

彼らと同世代ということもあってか、共感できるものが多いし、名だたる先輩芸能人を彼ら目線で語る話は冒険譚みたいで新鮮で、その迫力や面白さを、自分も体感しているような気持ちになるラジオだった。

最初の緊急事態宣言。
各著名人がstay homeを呼びかけ、国民はしっかり自粛していたと思う。ほぼ家に籠る生活をし始めた。

テレビのバラエティが再放送を流す中、ラジオはリモート放送もありつつ、毎週生放送をしてくれた。
霜降り明星のオールナイトニッポン0でもその例外ではなく、彼らはラジオブースから全国に電波を飛ばして、コロナ禍でもエンタメを提供してくれた。

外出もできない、誰かと会うこともほとんどなく、良くてリモートでのやりとりだ。テレビの仕事も少なくなって、エピソードも枯れ果てていたとは思うのだが、それでも面白いラジオだった。

あまりのエピソードの無さで、せいやが切り出した「ダイエットしてましてね」なんて普通の話から、二人のやりとりで面白い話に昇華していた。
途中で、せいやがサラダチキンを二個買ってた話だけで、ここまで膨らませられるのか、と思ったのを覚えている。

社会がほぼ止まっていた状態でも、娯楽を提供してくれたのは本当に凄いことだと思う。

そこから没頭するわけではないが、ラジオ自体が面白かった彼らを、少しずつ追うようになった。
僕も家に籠りっきりで、この頃にはほぼ毎週リアルタイムで聞いていたと思う。

せいやのドラマ出演から鈴木亮平さんがサプライズゲストで登場したり、せいやのあいみょん彼女にする宣言ノリから、本当にあいみょんからボイスメッセージが届いたり。

とにかく面白く、話題にこと欠かないラジオだった。

ポケットいっぱいの秘密のコーナー

一年目のオールナイトニッポン0では、放送終了直前五時前に、ポケットいっぱいの秘密のコーナー、なるものが放送されていた。

アグネスチャンのポケットいっぱいの秘密という曲に乗せて、リスナーの秘密を紹介していくコーナー。
リスナーからは自分の秘密を送ってもらうという、実に曖昧なテーマでメールを募集していた。

参考にSpotifyのポケットいっぱいの秘密を埋めこんでおく。

最初こそ、それなりに雑学や、リスナーの秘密を紹介していたコーナーだったらしいが、僕が聞き始めた頃には、ほとんど意味のわからないメールが届くようになっていた。

本当の雑学はもうフリになっている。

真偽が不明な雑学のメール、芸能人の名前をちょっと弄って変えるだけのメール、明らかな虚偽のメール、意味をなさない無秩序な文字だけのメールなど、もう無法地帯だ。

そんなメールたちをせいやが読み上げ、それに対しても意味のわからない受けをする。
語感だけが同じところから始まる歌を歌ったり、ボケ始めたり、無視したり、意味の分からないメールなのに「知っとるわ!」「○○いじってんのか!」と叫び出す。

とにかくリスナーもボケまくり、せいやがボケ続ける、粗品がたまに突っ込む、ぶっ壊れコーナーである。意味の分からない状態がポケットいっぱいの秘密の曲が終了するまで続くのだ。

しかし、このコーナーは人気コーナーである。事実、僕も好きなコーナーだった。深夜のバグった頭ではこの無秩序さに笑えるのだ。

意味が分からないし、コーナーの趣旨が崩壊しているということで、粗品は何度も終了しようと言っていた。

リスナーにもうメールを送ってくるなと呼びかける、挙句の果てにはポケットいっぱいの秘密のコーナーで採用された場合は、他コーナーで採用されたメール数を競うポイントまで引く、とまで言い出した。

せいやに関しては、もうやらない、やりたくない、などと言っていたが、結局そのコーナーは毎週放送していて、息長く続いた。

そのうち、コーナーが始まってしまうと、粗品がイントロに対して「ぷっぷっぷっぷーんちゃうねん!」と突っ込むようになる。ラジオなのにせいやが全身をロープに縛られながらコーナーをしていたこともあった。

でも、個人的には本当に面白いコーナーなのだ。
コーナー尺に関しても曲の長さ、三分ちょっとでちょうどいい。これ以上の長さはせいやも耐えられないだろうし、あまりの意味不明さに、面白さも薄れていくだろう。

彼らは爆発的に売れていく。

そんな経緯もあったのか、ポケットいっぱいの秘密のコーナーはそのうち本当に終了した。

せいやも粗品も体力を使うコーナーだ。ただでさえ3時~5時で深い時間にラジオを担当しているのに多忙を極める二人には負担が大きかったのだろうと思う。

ホームページには「このコーナーは終了しました」と書いてあるが、二年目以降でも、このコーナーは突然、何の予告もなくたまにやるコーナーとなった。
このコーナーをやるためにはメールが必要なはずだが、毎回コーナーが行われるときはメールを紹介しているわけだから、人気コーナーであることは自明だと思う。

霜降り明星のオールナイトニッポンを追いかけているなら、通らずにはいられない伝説の放送回がある。
あいみょんからボイスメッセージが届いた翌週の放送だった。

僕はその日、なんとなくラジオを流していた。
夜が深くなりつつあり、そろそろ霜降りのラジオだ、と思っていた。布団に横たわり、眠るついでに聞こうと思っていた。

3時になる。
時報が終わり、いつものように「時刻は午前3時になりました」という粗品の言葉から始まると思っていたのだが、耳に飛び込んできたのはポケットいっぱいの秘密のイントロだ。

粗品「ぷっぷっぷっぷーんちゃうねん!
せいや「ポケットいっぱいの秘密のコーナー!

意味がわからなかった。挨拶もなし。なぜ冒頭からこのコーナーをやるのだろう?

布団からスマホを取り出し、ツイッターで #霜降り明星ANN0 を調べてみると、何故かリスナーは一定の理解を示している。

よくわからなかったので、その後も色々調べていくと、どうやら文春から記事が出ているようだった。

文春オンラインにアクセス。せいやがzoomで下半身を露出した写真が貼られていた、もちろんモザイクはかかっていたが。

どうやらせいやが女性とzoom飲みをしていて、その途中でせいやが恐らく、下半身を、こう、コスコスしてしまったのだ。

記事は一貫して女性の方を擁護し、セクハラ被害にあったことを強調しているような文章だったが、それでも大半の読者がハニートラップにかかったと判断すると思う。
せいやの間抜けがすぎる内容だった。

せいやを糾弾するような文章だったし、僕の知らないところで炎上もしていたのだろう。どうやらこの記事を受けてのポケットいっぱいの秘密のコーナーのようだった。

いつ終わるのかわからない。

しばらく聞いていても、コーナーが終わらない。CMに入って、元に戻ってきても終わらない。僕はラジオ越しに意味のわからない音声をずっと聞いている。

やっと曲紹介に入ったと思ったら、流す曲もポケットいっぱいの秘密。
もうずっと「ぷっぷっぷっぷーん!」が耳に流れてくる。曲が終わるとまた「ぷっぷっぷっぷーん!」頭がおかしい。

このコーナーでどこまでいくのだろう。

当時の金曜日のオールナイトニッポン0は四時になると、香川県と愛媛県での放送が終わる。

いつもだったらせいやが「また聞いてくれよなっ!」と締めて、少しリアクションメールを読んだり、トークをしたりして、最後に曲を流して四時を回る、という進行だったと思う。

いつもとは違い、せいやは四時前になってこう言い出した。

「香川と愛媛のあなたとは、この曲を聞いてお別れです。ポケットいっぱいの秘密、アグネスチャン」

ぷっぷっぷっぷーん。

もうこのイントロはお腹一杯だ。

四時だ、ここで一区切りつくから、もう終わるかもしれない。
僕はもはや終わるのを期待していた。もうこれ以上ポケットいっぱいの秘密のイントロを聞きたくないところまで来ていた。

四時を回る時報。
霜降り明星のオールナイトニッポン0のジングルが流れ、終わる。

粗品「ぷっぷっぷっぷーんちゃうねん! 四時!

終わらなかった。
地獄だ。

脳裏に過る、本当にこれで二時間いくのかもしれない。

せいやによるいいともグランドフィナーレ完全再現、CM。
CM明け、終わらない。

霜降り明星の処女作の漫才。暗黒時代の漫才。CM。
CM明け、終わらない。

曲にいったと思ったら、ポケットいっぱいの秘密フランス語バージョンという変化球。

カラオケでポケットいっぱいの秘密をせいやが物真似を交えて歌い始める。
今度は粗品が歌い始めたと思ったら、せいやが野次を入れまくって、粗品のマンキンのツッコミ「野党!」

どこかのCM明けで、やはりポケットいっぱいの秘密のイントロが流れ出し、粗品は叫んだ。

おかしくなっちゃうよー!!!!

粗品は完全にリスナーの代弁者となってくれた。本当にどうかしてるし、この放送を聞き続けているリスナーも本当におかしくなっちゃいそうだった。


実はこのあと、僕は寝落ちしてしまう。

単純な寝落ちだとは思うが、これ以上は危険だと脳が判断してくれたのかもしれない。
夢の中でもあのイントロが流れていた気がする、間違いなく気のせいだとは思うのだが。

どこかのタイミングでタイムフリーを使って聞き直した。本当に霜降り明星はポケットいっぱいの秘密のコーナーで二時間走りきってしまった。二時間は面白さがもたない、とは思っていたが、僕の予想に反して面白かった。

二時間。あのボケ数、ツッコミ。マラソンだ。

せいやは終盤もう頭が働かなくなって、喉はパンパン、エンディング近くにはえずいていた。

凄かった。

誰もこんな放送を予想していた人はいなかったのではないだろうか。彼らはリスナーの予想を遥かに上回ってきたのだ。

Podcastでその放送を聞くことができるが、肝心のBGM、ポケットいっぱいの秘密は流れないし、CMもない。

あれはおかしくなっちゃうイントロのBGMありき、そしてCM明けで終わるのか疑心暗鬼になりながら聞くのが一番面白い聞き方だったように思う。本当はリアルタイムですべて聞きたかった。

個人的に録音はできていなかった。録音をしておけば良かった、と後にも先にもこんなに強く思った回はない。


霜降り明星のオールナイトニッポン


様々な理由はあったと思うのだが、今年度から霜降り明星は一部に昇格、三四郎が二部に移動という形になった。
三四郎は四年くらいかけて一部に上がった苦労人だったが、二年で一部に上がる霜降り明星の人気と勢いは凄まじかった。

どちらも面白いラジオだと思う。
しかし、王道的な面白さの霜降り明星に対して、三四郎は変化球的面白さがある。なんというか、三四郎には悪いのだが、二部が似合っていると思ってしまう。

そのうち、三四郎のオールナイトニッポンの話も書くかもしれない。

一部に上がっている現在、重要な予定がなければ、霜降り明星のオールナイトニッポンはリアルタイムでほぼ毎週聞くようになった。

いつの間にか、霜降り明星のオールナイトニッポンは、僕の中で一番面白いラジオになっていた。

同業者や業界人からの評価も高い。

先述したポケットいっぱいの秘密のコーナー二時間の回はリアルタイムで聞いていたらしいディレクター、放送作家がツイッターで反応していた。芸人、著名人が絶賛する声。

挙句の果てには、例の回を聞いたらしい、ワンピースの作者、尾田栄一郎が選ぶ天才だと思うランキング一位にせいやが選ばれていた。
二位、三位が芸人ではないのに、いきなりせいやである。

あのスキャンダル直後のラジオで、業界人、芸人の評価も爆発的に上げてしまい、尾田栄一郎という天才に、せいやは天才と呼ばれてしまった。
スキャンダルに対するカウンターもいいところである。

また、詳細は思い出せないがリスナーが選ぶ面白いラジオという旨の雑誌コーナーで2位になっていた。僕以外のラジオリスナーも面白いと思っている証拠だと思う。
ちなみに1位はオードリーのオールナイトニッポンだ。長寿番組だし、実際面白いので納得の結果だ。

彼らと同世代で、話す内容やネタメールに共感しやすいという点も間違いなくある。

ポケモン、遊戯王、世代特有の思い出やあるある、見ていた一発屋の芸人など。懐かしいな、と思うと同時に面白い。
忍たま乱太郎、ミニモニの四人目、とか、人造人間サイコショッカーがネタとして選ばれるのは、霜降り明星の世代でしかできないことだと思う。

他にも、二人の元々のトークスキル、ノリ、コーナー、細かいところを挙げればキリがない。

面白いラジオには、面白いリスナーが集まる。
自然とリアクションメールもネタメールも面白くなり、結果、総合的に面白いラジオは霜降り明星のオールナイトニッポンだと思っている。

霜降りは二人ともちょっと変なので、せいやはzoomで間抜けな事件を起こすし、ちょくちょく芸能人を狙うだの言ってニュースになるし。

この前はツイッターにネタを上げているのに、かわいい。や髪切ったのか。などのリプライを飛ばしてくることに危険を感じて、そういうファンを一掃したことがあった。
あとで「なんでもいいから応援してくれよなっ」というせいやのアフターフォローツイートがあったのだが、これを許せるというか、ダサいと思わないというか、その辺が粗品の言う、愛される天才所以なのだと思う。

粗品は粗品で尖っていて、名指しではないものの先輩に面白くないと言い出す、リスナーに説教を始めるし、700万ギャンブルで負けたりと、普通のファンなら引いてしまうようなエピソードばかりが出てくる。

オールナイトニッポン内で軽率な発言をして炎上、お笑いにストイックすぎてスタッフに厳しく当たり炎上、態度が天狗すぎると炎上。しょっちゅう炎上している。
粗品の個人チャンネルで、予告もなく突発的に始まる配信を見ることがあるのだが、コメントの治安の悪さと、粗品自身の口の悪さ、トンデモ発言は面白いとは思う。
しかしながら、個人的に粗品の発言には人間性を疑うところもある。

前回の炎上から学び、力加減だけは気を付けて欲しいと願うばかりだ。


ラジオ自体、多忙なせいか二人とも疲れていて、ハズレ回ももちろんある。
何かと問題を起こすのだが、霜降り明星のオールナイトニッポンはそんな二人を応援したくなるラジオだ。

霜降り明星

彼らも出演している新しいカギというコント番組は、フジテレビの土曜八時という枠に移動した。かつてのめちゃイケの枠、伝統ある超ゴールデンタイムだ。

だが、現在新しいカギの評判は、凄く良いとは言えない。
笑う犬の冒険やワンナイなど、葉っぱ隊、ゴリエで社会現象を起こすような面白さは、個人的にもまだないと思う。

BPOの視線が厳しくなり、あのとんでもないことをしていた面白さはもう味わえないのかもしれない。

それでも、最新の新しいカギを見ると、コントは面白くなっている気がする。
少しずつでもいい、いつか社会現象を起こしてしまうような番組になってくれたら嬉しい。僕はキャラ重視のフジテレビコント番組が好きなのだ。

かつての番組、笑う犬のようにセットにもかなりお金もかかっているコント番組のように見える。
フジテレビの社運が彼らに託されているのかもしれない、そんな期待に応えて欲しいと僕も思う。

そんな、レギュラー番組がゴールデンタイムに移動した、という良いニュースだけではない。
霜降り明星は売れるスピードも速かったが、急速に消えていく可能性も否めないと思う。

前評判も上々だったらしいのだが、霜降り明星は今年のキングオブコント決勝には立てないことになった。
彼らは一年間コントに向き合い、毎月単独ライブでもコントをやっていたそうだ。
ただ、一年間の準備期間で準決勝までいけたのは凄いと、お笑い好きが言っていた。
お笑いに関しては凄まじい才能なのだと思う、ラジオでもそれは犇々と感じる。

もし決勝に進んでいたら、マヂカルラブリーとの三冠対決。
視聴率は取れるかもしれないが、キングオブコントは準決勝では滑っていたらしい、霜降り明星を落とした。

これはキングオブコントの真摯さ、賞レースの真剣さだと思う。

粗品もラジオでこのまま進んでいたら嫌だった、という旨の話をしていた。たしかに、滑ったのに決勝に上がるというのは忖度が過ぎる。

まあ、既にM-1とR-1の二冠だ、これが勢いを失う原因になるとは考えにくいが。

テレビに関して言えば、ゴールデン帯でやっていた、爆笑問題と霜降り明星の冠番組シンパイ賞は終わってしまったし、霜降り明星の冠番組、霜降りバラエティは0時代から3時代に移動してしまった。

霜降り明星を面白くない、つまらないなど、批判するようなネット記事はわんさか出てくる。
しかし、ダウンタウン、ナインティナインもテレビに露出し始めたときは、面白くない、と叩かれていたそうだ。

今やあの活躍、時代を彩った人たちだ。

ただ、ダウンタウン、ナインティナインの時代は、本人たちにその声が届く数は少なかったと思う。

SNSが発達した現在、批判がここまで見える化されることはなかったはずだ。今や匿名で悪口、批判は書きたい放題、発信し放題だ。

しもふりチューブでもせいやが「こんなに悪口を言われるなんて思わなかった」と漏らしていた。

また、M-1グランプリの豪華客船のネタでも、笑えなかったという声が飛んでいるのを見て吃驚した。
やはり世代の感覚的な違いはあるのだと思う。

素人がこんなことを言うのは間違いなく余計なお世話だが、言わざるをえない。

彼らには、批判がこんなに見える化されてしまっている逆風に立ち向かって、打ち勝って欲しいと思う。
もちろん世代を問わないファンもいるだろうが、少子化が進む中でも、同世代のファン絶賛する声も間違いなくある。

例えば僕のように。


僕と霜降り明星

自己紹介でも書いたのだが、僕はラジオを通して霜降り明星のファンになり、芸人に興味を持ち始めた。

お笑い番組を見る機会は前より多くなった。
劇場にネタを見にいこそしないものの、霜降りが出ているテレビも、少しだけ積極的になって見るようになった。しかし、すべてのテレビをチェックしているわけでもない。

僕は芸人というよりは、ラジオパーソナリティとしての二人が好きだ。
二人にとってはたまったものじゃないだろうが、テレビで目も当てられないくらい滑っていても、ラジオでの反省会は面白くなるから、僕としては大歓迎なのである。
上手くいったという話を聞くのも面白いので、僕にとっては、どっちでもいいというのが一番正解なのかもしれない。

とにかくラジオが面白ければよいのだ。


僕が十代のときに、メイプル超合金のラジオにメールを送って滑ったときがあった。
カズレーザーがフォローしてくれたおかげで少しは笑える空気にはしてくれたものの、それからロクなことにならないと、積極的にメールを送ることはなくなった。

しかし、霜降り明星のオールナイトニッポン二部最終回でハガキ職人が集結した回に触発されて、一部に上がってからメールをそれなりに送るようになった。

それでも季節ごとに行われる、リスナー同士の一夜限りの対決、霜降り甲子園という企画で週20通送ったのが一番多いくらいだ。
基本的には送ったとしても5通もいかない。なんなら送らない週が大半を占めている。

そんなペースで送っていたが、ある日ネタメールが採用された。
その週は2通しか送っていなかった。放送作家や霜降りの二人は、打った数ではなく、ネタの面白さで選んでくれる。

色んな番組でメールを採用されたことはあったものの、午前一時から三時まで放送しているオールナイトニッポンでは初採用だった。
全国36局ネットで放送、伝統あるオールナイトニッポンで読まれたのは流石に嬉しかったのを覚えている。

霜降り明星のオールナイトニッポンではネタメールが採用されると、ステッカーが届く。
また採用されて、二人が反応してくれたら、ステッカーをもらえたら嬉しいくらいの熱量で、気が向いたときに送っていこうと思っている。

これはすべてのラジオの醍醐味だと思うのだが、テレビはラジオより、パーソナリティとリスナーの距離が近い。
ネタメール、リアクションメールに対してパーソナリティが反応してくれるのは凄く嬉しい。

ネタを見にライブに行ったことはない、漫才やコントもテレビ番組やYouTubeなどでしか見たことがない、霜降り明星が出演しているすべてのテレビをチェックしているわけではない。

霜降り明星初のオールナイトニッポン番組イベントのチケットも取ろうとした。残念ながら抽選に漏れ、行くことは叶わなかった。

劇場には行かないが、ラジオのイベントに行こうとする理由は、やっぱりラジオが一番好きだからだ。
二人はテレビの人間のはずだが、僕は霜降り明星をほとんどラジオパーソナリティだと捉えているのだろう。

霜降り明星の二人が僕のメールに反応してくれると、飛び上がる程嬉しくなる。
彼らを熱心にテレビなどでは追わないが、ラジオは熱心に聞いている。

霜降り明星と僕との間には、そんな不思議な距離感があると、僕は勝手に思っている。


ニッポン放送は「いいときだけのニッポン放送」と揶揄されていて、その時に旬な人を起用することが多いらしい。

たしかに、オールナイトニッポンブランドの並びを見るとテレビを付ければ顔を見るような人たちが多い。

僕より上の世代が多くの番組を席巻している中、彗星のごとく現れた同世代のスター。

彼らは僕たちの世代、ひいては更に若い十代、子どもの希望の星だと思う。

僕が小学生のとき、めちゃイケを熱心に見ていたように、霜降り明星が時代を彩る芸人になることを、霜降り明星がスターへの階段を上り続けることを僕は信じている。

霜降り明星のオールナイトニッポンは一年で駆け抜けて終わるようなラジオではなく、長く聞いていたいラジオだ。

ただ、もしも、テレビもYouTubeも上手くいかなくなって、人気が地の底まで落ちて、ファンがどんどん離れていっても、どうかラジオだけは続けて欲しい。


少なくとも、僕はついて行く。

写真 2021-09-28 15 01 00


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