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新婚旅行先のバリでの初体験

みなさんにとって「忘れられない旅」はありますか?
上記の記事でそう聞かれたから、答えてみる。あるよ。

「そうだ!バリに行こう」

かれこれ10年以上も前の話だ。私たち夫婦の新婚旅行先はバリであった。
なぜ、「バリ」だったのか?
そんなの、お金がなかったからだ。休みがとれなかったから。だから、なるべく近場で満足できそうな場所を探していた。とはいっても、あの当時はスマホもなかったし情報を得るには、本か友達のおすすめか、テレビが主流だった。私は結婚が決まってからすでに結婚している友だちに聞きまくった。結婚していなくても海外旅行の経験がある子にも、「どこがいい?」って聞きまくった。
その結果、ハワイ・モルディブ・メキシコ・エジプト・スペイン・パリ・イタリア・日本国内(熱海・北海道・沖縄)などいろいろと候補が浮かびあがってきたのだ。

でも、迷っていた。
予算・日程・私たちの体力と興味。
なにせ私たち夫婦は二人とも海外に行った事なんてなかった。でも、だかそこそ、海外に行ってみたかったのだ。新婚旅行だし!もうこれが最後のチャンスかもしれない。日々、時差勤務で忙しすぎて休む暇のない保育士の私にとって堂々と休めるのは結婚休暇5日間取得の権利ぐらいしかないのかもしれない……。本気でそう思っていた。(そんな事はないのだが)

いろいろと制限があったので、ヨーロッパは遠いし高いから無理ってなった。そもそも新婚旅行なのだ。観光旅行ではない。二人でまったりできたらそれでいいのだ。(デート先の遊園地で私だけジェットコースターに乗せられてげんなりした経験から、うちら夫婦には刺激的で観光中心の慌ただしい旅行は無理だとすでに私は悟っていたのだ。)

そんな時、ゆったり丁寧に暮らしている新婚ほやほやの友だちが「バリ、よかったよ~。のんびりしていて。」と言うではないか。彼女たち夫婦は、どちらかというとアクティブ派だ。いや、自然派といったらいいのだろうか。二人の思い出は山の上で1つの毛布にくるまり星空を見上げたこと、なんて言うのだから。(ちなみに私たち夫婦は、そんな経験は皆無だった)
そんな彼女が言うのなら、間違いなさそうだ。バリなんて候補に全然入っていなかったけど、調べてみるとあの当時は物価が安くてリゾートホテルもあって、プールの写真とかいい感じで、なにしろアジア圏で近そうだ。英語じゃないけど、どうせ英語なんてしゃべれないから気にならない。ちょっと惹かれた。夫は、私が行きたい所ならどこでもいいらしい。

「そうだ!バリに行こう。」

バリについた途端

ハードスケジュール極まりなかった。結婚式をあげ、2次会を終え、その足で夫の実家でドレスを脱いで(返却お願いします!と頼み)、空港へ向かった。そして、バリへ飛んだ。

結婚式は、笑顔を顔に貼り付けすぎていたので頬の筋肉が痛かった。もう、笑いたくない……。そんな気分だった。でも楽しかった。いっぱい笑った。
花嫁なのに花嫁じゃない、いつもの和ちゃんだって言われた。担任をしていた子どもたちも来てくれた。幸せすぎた。幹事をしてくれた人たちが、式当日の写真をSDカードに入れて、手に持たせてくれた。(今なら、LINE共有とかだろうが、当時はデジカメ主流の時代だった)私たちは、ありがたく受け取り、このメモリーカードとともにバリについたのだ。

いきなりだった。

私の荷物はかっさわれた。いや、親切に運んでくれたのだ。なんて、優しい国なんだ!バリって。……。……。違う。
これは、ポーターってやつだ!これを受け入れてしまうと、お金を要求されるやつだ。ガイドブックに書いてあった!いかん……!とっさに叫んだ。
「NOぉぉぉぉぉ!」
笑顔だったお兄さんは、真顔になり、ちょっとがっかりして荷物を返してくれた。お金は取られなかった。ふぅ。アブねぇ。
……隣を見ると夫が震えている。「バリこわい……バリこわい。」とつぶやいていた。いや、あなたの荷物は大丈夫じゃん?
(ちなみに、この話は10年以上前のことなので、今は空港も整備されてポーターもおらず安全だそうだ。安心してバリに行ってほしい。)

とにもかくにも、海外初心者の二人旅が始まったのだ。というか、この経験からその後のバリでの観光はほとんどすることはなくなったのだ。

THE 新婚旅行

海外旅行初心者にも優しいプランは、パックしかない。それこそ、JTBさんが出しているハネムーンツアーにそのまんま乗っかる事に決めたのだ。ただし、新婚旅行なのだ。ちょっとは奮発もしてみたい。ヨーロッパを諦めた分、物価が安いアジアな分、ホテルのランクをグレードアップすることにしたのだ。
私たちが泊まったのは「マヤ ウブド」と「ザ・レギャン」という所だった。どっちも知らなかったけれど、JTBさんのおすすめだった。マヤウブドではヴィラタイプの部屋だった。森の中にある感じでTHE自然って感じだった。ホテルの敷地内だけでお散歩が楽しめる。右も左も分からずに歩いていた。広い。広大すぎる。ちょっと疲れて、ホテルのカフェに入り日本で見たことのあるスプライトというジュースを見つけ、ほっとしたのをおぼえている。うん、あの味だねと二人で笑った。
ザ・レギャンでは、なんとスイートルームだ。あれはヤバかった。なぜゆえに天蓋付きベッド付の部屋が2部屋もあるのだろうか?新婚旅行なのに、部屋を分かれてゆっくり寝ろということらしい。部屋の真ん中には、堂々とバスタブが置かれていた。あのさ、ほら猫足の白いあんなやつだよ!(語彙力がなさ過ぎて伝わらない)。バスタブのなかには、お湯の上に花びらが浮いている!?隣はリビングだ。あの当時流行していたi podがスピーカー付きで棚にさらっと置いてある。これをもってプールに出かけてもOKだ。ハネムーンの私たちに向けて、ウェルカムシャンパンとちょっとしたお菓子とメッセージが机の上にきれいに置いてあった。ちょっと奥に行くと、小さなキッチンもありおなじみのプリングルスの緑色のやつとか水とかティーセットとかコーヒーメーカー、冷蔵庫などが置かれている。
な、な、何なんだこの部屋は!私たち二人はこんな所、初めてだ。びっくりした上にひゃっほいとルームツアーを楽しんでいた。むしろ観光とかいかなくても、ホテルで1日いればよくない?そう感じたのだった。そして本当にホテルから動かなかったのだ。いや、正確に言うのならば最初の怖い体験から、夫が動きたがらなかった。

とはいえ一応ね、ツアーのプランでゾウに乗るってやつがあったからそれだけ申し込んでおいてある。ただ、残念なことに私たちは雨季にバリの旅行にきてしまっていた。雨季にはスコールがあるのだ。突然の雨。実は、申し込んでいたゾウツアーの日の朝にも雨が降っていた。これじゃあせっかくのゾウに乗れないではないか!?そしてキャンセルの仕方すらわからない。こういう時の頼みの綱はJTBさんのサポートデスクだった。ホテルの部屋から電話を掛けた。そしてすぐに言ったのだ。
「ジャパニーズ、プリーズ!」と(笑)事情を説明する。ゾウに乗りたいけど、雨が降っているのだ。どうすればよいのか?切々と語ったが電話の主の返事はこうだった。
「すぐやむからだいじょうぶね!」
本当に、大丈夫だった。ホテルにお迎えの車がきた。もちろん日本語の話せるスタッフ付きで。いたれりつくせりだ。これはきちんとチップを渡さねば。車の窓からは、自然豊かなバリの土地が流れていく。なぜか、にわとりがいた。野放しで。きっと、バリには野良のにわとりがいるのが普通なんだなぁ、なんて思いながら眺めていた。
そして、私たち夫婦は無事、ゾウに乗れたのだ。ココナッツジュースまでくれた。ちょっと覚えたインドネシア語の感謝の言葉「トゥリマカシー」を連発し、美味しいナシゴレンを食べたのだった。ここでの味が忘れられない。だから、今でもたまに家でもつくる。(ナンプラーと桜エビさえあればなんとかなる)

結局、バリでゾウに乗ったぐらいだ。思い出というのならば。
あとは、ホテルでまったり過ごした。友達が手に持たせてくれたメモリーカードをデジカメで再生しながら、結婚式を振り返った。楽しかったね。ファーストバイトのケーキの1口、あれよく食べたねぇ。子どもたちきてくれてよかったね。何で誓いのキスは口にしなかったの?お義母さんの作ってくれたビーズの天使かわいかったね。ケーキが本の形になってたね!あの再現力すごいね。幸せだね。そんな風に話しながら。

浦島太郎になった

まさに夢のようだった。
日本に帰ってきてすぐに仕事再開だ。現実感がなくてふわふわしていた。でも、日常に戻っていく。保育園を1週間休むとそれこそ浦島太郎になっている。隣のクラスの子がいつの間にか転園していて、クラスで病気が流行っていて、○○くんの保護者の仕事が変わりお迎え時間が変更になっている。毎日のちょっとした連絡事項が一週間分漏れただけで、私の頭はフル稼働だ。

あぁ、でも楽しかったな。いろいろあったけど、行って良かったな。ハラハラドキドキして、まったりして、あんな体験二度とできないだろうなって思う。行ってよかったな。お金出してよかったな。

1カ月後ぐらいだろうか、ザ・レギャンからポストカードが届いた。もちろん私は書いていない。びっくりした。ホテルのプールの写真とThank youの言葉だった。この写真を見るとすぐに記憶がよみがった。私たちはもう帰ってきたのに、バリにはいないのに。すでにチェックアウトしたお客なのだ。それなのに、こんなサービスがあるのか!世の中には!素敵だな。ありがたいな。すごいな。やられたな。
そんな感動を覚えた旅だった。まさに、忘れられない旅。
忘れさせてくれない旅になった。今でも。


#忘れられない旅


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