意識高くはないが低くもない勤務医の進路

医学部6年間を修め、国家試験をパスし、2年間の初期研修を修める。その後医局に入るか市中病院に就職するか。

私は内科系の医局に入った。関連病院はどこも認定病院なので専門医を取りやすい環境にあり、良くも悪くもも、2年毎に色んな病院を経験することができる。

前の病院ではこうやっていたが、こっちの方がよいなとか、やっぱりあっちがよかったなとか、得られることは多いのだ。

私は中高大学と10年間以上も都内の通学を経験しており、満員電車がとにかくいやで田舎を希望していたが、合わなかったときのリスクもあるし、完全に飛び出していく勇気はなかった。なので「2年ルール」には感謝している。

若いうちに医局人事に身を置くというのは、謂わばモラトリアムだと思う。もともと自身は「なんとなく成績優秀だから医学部に入ったものの基礎研究に興味がわかなかったので医者になってみた」程度の、進学校卒にありがちな人間だったので、色んな環境を経験しつつ臨床医の共通目標である専門医をとっていくスタイルは、性に合っていた。

そんな私も現在医師として8年目の31歳。大きな岐路に立たされている。

大学院に行くべきかということだ。

結論を先に言えば、私は来年から進学することになった。(進学することにしたと言い切れないのが弱いところでありつくづく嫌になる) ここでは、そこに至った思考についてまとめてみることにする。

なんやかんや、忙しい病院は楽しい。将来像として、急性期病院の診療科の部長職になれればなぁとぼんやり考えているのが私だ。

今後、病院の機能的な再編成の流れもあって、中途半端な急性期病院はどんどん看板を変えていくことになるだろう。残るのは医局関連になるような大きい病院だ。

しかし医者の数は今後増えてくる。これは確定事項だ。即ち急性期病院の部長というポストは相対的に減少していくことになる。

そこで医師としての付加価値を考えたとき、それなりに箔のある病院で部長となるには、専門医以外にも、やはり PhD は必要な条件となってくることが多い。

無給医問題で話題となった大学院生だが、バイトでつないでいけることもまた事実である。今後「医者余り」となっていく中で、バイトの相場は下がること必至だろう。

となれば、大学院進学を考えているのであれば、早いうちに進学した方がよい。

・・・とまあ、そういった急性期で働き続けたいという小さな矜持が根底にあって、ある程度の経済的背景も考えて、進学することを考えていたのである。

だが同時に、その経済的背景というのはネガティブにもなってくる。

医者の数が増えて、病院は減り、働き方改革で医者1人当たりの稼ぎも減る。将来的に勤務医の給与が下がっていくのは自明である。

ある程度は稼げる今のうちに稼ぎ、資本に当てていくのが経済的に合理的というものだ。

だが院進することにより、そんな貴重な三十路の4年間を、都内の高い家賃、学費、なんかも払いつつ(私の医局では、院生の海外学会の旅費すら自費である!)、低賃金の稼ぎで「潰して」いくことになる。なんともそら寒いものである。

大学院進学に果たしてそこまでの価値があるのか。実際にどれぐらいのお金の収支になってくるのか。雑感交えつつ、記録していこうと思う。

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