ぼくとしんたろう。⑥
暑苦しく、ベトベトとした不快さで目を覚ました。
まとわりつく汗。
着ていた灰色のTシャツは、プールにでも落っこちたのかと言わんばかりに濡れている。
かなり寝汗をかいていたようだ。
起き上がり、すぐにTシャツを脱ぐ。
暑さと汗の気持ち悪さで気付かなかったけれど、そうか、ここは“ぼく”の部屋か。
“ぼく”らしく、本棚は綺麗に整頓されている。
若い巻数が左から順に並び、本の大きさまでもが左から右へ大きくなっていく。
俺の部屋じゃないみたいだ。
“ぼく”の母は、とても綺麗好きで。
教育のたまものか、小学生で自主的にここまで部屋を綺麗にできる人は少ないのではなかろうか。
俺の部屋は、巻数どころか上下もバラバラにしまっていたっけな。
コンコン
扉を叩く音が聞こえる。
“ぼく”の母だろう。
今、この部屋に、“ぼく”はいない。
先程の会話の最中、気を失ってしまったぼく。
部屋まで運んでくれたのは、おそらく父だ。
.......大丈夫?
母は扉の向こうから、そう声をかけた。
ぼくの名前を呼ばずに、大丈夫、と。
もうぼくじゃない、ごめんね。
それだけ伝えて、俺は、
窓から飛び降りた。
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