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【ジャーナル】こうちマイプロジェクト道場 #2 ~自分の思いを見つめ、マイプロジェクトを描く~


「こうちマイプロジェクト道場」は、一人ひとりが自分のライフヒストリーと紐づいた自分自身が本当にやりたいこと(will)に向き合い、仲間と共にその第一歩を踏み出し、そこでの気づきを対話を通じて深め、さらにアクションを重ねながら、起業や事業創造、プロジェクト実践を進めていく連続講座です。

今回は、自分らしい生き方で全国各地で挑戦を続けているゲストを迎え、彼らのストーリーを共有しながら、参加者一人ひとりの想いを掘り起こしていきました。

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丑田俊輔さん(ハバタク株式会社代表取締役)

千代田区の公共施設をまちづくり拠点として再生する「ちよだプラットフォームスクウェア」、日本IBMの戦略コンサルティングチームを経て、2010年にハバタクを創業。新しい学びのクリエイティブ集団として、国内外を舞台に様々な教育事業を展開。2014年より秋田県五城目町を拠点に、田舎発起業家を育む「ドチャベン」、古民家を舞台に地域をつなぐ「シェアビレッジ」、遊休施設を遊び場化する「ただのあそび場」、地域の次世代が育つ教育環境づくり等を推進。
2018年、人と事業と文化がそだつビル「錦町ブンカイサン」を神田に開設。

変なおっちゃんとの出会い

大学生時代、「たいして夢もなかった」という丑田さんは、全国を回ろうと『青春18きっぷ』で旅に出ました。そのときに初めて高知県に来た、という思い出話からキーノートが始まりました。
18歳から始めたボクシングでしたが、これまでやっていたのはボートなどのチームスポーツ。初めて独りで行うスポーツを経験した丑田さんにとって、そのときに培ったものは、今に活きているそうです。それは「経営者は孤独だが、支えてくれる人もたくさんいる」ということでした。

19歳になった丑田さんはある中小企業のインターンシップに行きました。同級生が大企業志向の中、「社長のカバン持ちをしながら、経営を学びませんか?」という問いかけの会社が目に留まり、楽しそう、という感覚でエントリー。
社長や工場の人たちとの関わりを通じて、初めて働くということを経験しました。夏休みが終わると同時に学業に戻ると思っていたところ、その会社の社長から新しい会社の立ち上げに誘われます。
当時の丑田さんには、やりたい仕事も目標もありませんでしたが、巻き込まれたら面白そうだ、と思い一緒にやることにしました。
自分個人の主体性というよりは、巻き込まれることへの主体性は持っていたからこそ、活動に没頭する中でそのことを好きなったり、次に繋がる原体験になっていったりした、と振り返りました。
なぜかそういうときは「変なおっちゃんが現れるんです」と笑います。


大学時代の原体験

変なおっちゃんが誘ってくれたのは、『ちよだプラットフォームスクエア』の仕事でした。元々は、過去に行政が建てた公共施設。貸会議室として運営していましたが、多くの赤字を抱えていました。
そこで、千代田区は民間が町づくりのコンペを実施。彼が提案した『ちよだプラットフォームスクエア』が採択され、運営をする会社を作ることになりました。そこに関わることになったのです。
今でいう、コワーキングスペースやシェアオフィスのような形で、新しいチャレンジをする人が組織の垣根を越えて切磋琢磨したり、コラボレーションしたりする文化を作っていく取り組みをしていました。
その結果、400社が入るほどに成長し、神田に人が集まる流れができていきました。次第に企業が建物に収まりきらなくなってきたこともあり、周りの空きビルを活用して場所を確保していくことで、町に色々なチャレンジャーが広がっていくことに。

『ちよだプラットフォームスクエア』のある、東京の千代田区の神田という地域は、東京駅の隣の駅でありながら町内会が強く、生粋の江戸っ子がお祭りのときは仕事そっちのけでおみこしを担ぐような文化がある下町です。
地域にポジティブな熱量を与えられることや、神田に来れば誰かに会えるという、おもしろい人との出会いといった町づくりへの寄与。
そのことを事業やビジネスを通じて、持続可能なモデルを作っていく、という大学の3年間の経験が丑田さんの原体験になりました。


教育に興味を持つ

大学卒業後、テクノロジー会社に就職した丑田さんは、4年間、グローバル戦略に携わっていました。
仕事をしていく中で、AIやIoTによる働き方の変化、インターネットが発達し地球上のどこでもコミュニケーションが取れるようになったことによる雇用の最適化など、グローバル化やテクノロジーの進化が、自分たちにダイレクトに影響していくことを実感していました。
将来、どんな働き方をしていくのか、と悶々としていた時期に、秋田の人と結婚し、子どもが生まれることに。このことが近い将来よりも、もっと長いスパンで未来を考えていくきっかけになります。

子どもが生まれて、教育に興味を持ち始めた丑田さん。
旅が好きだったこともあり、色んな国の教育環境を見に行きながら、自分が次に何をしていくか、たどり着いたテーマは「人が学ぶ環境をもっと多様性と創造性に溢れた環境にしていきたい」ということでした。


ハバタク設立

教育というと「とっつきにくい」、「国が主導しているもの」というイメージもあった当時、神戸で探究型の学校を設立したおっちゃんをはじめとした先駆者達との出会いと取り組みに勇気づけられ、2010年に『ハバタク株式会社』を設立。
「新しい学びを生み出していくようなクリエイティブなチームを作ろう。多様性と創造性に富んだ共創的なクリエイティブな学びを世界中に増やしていこう」という、コンセプトとビジョンはありましたが、初年度に明確なビジネスモデルはできていませんでした。
そのときに改めて、自分たちにできることに立ち返り、決めた領域の一つがグローカルな教育でした。海外に関わる仕事をしてきたことや、旅が好きな自分たちの強みを活かし、日本の教育環境を世界につないでいくことからはじめていこうと考えました。
高校生や大学生の海外研修旅行や、ICT(※1)を用いて楽しく英語を学べるプログラムを、全国の学校を中心に提供し、徐々に提携校を増やしていきました。
世界に羽ばたく環境づくりをめざして海外と行き来する中、東日本大震災の経験も経て、日本のローカルな地域に魅せられていきます。

(※1)ICT:Information Communication Technology(情報通信技術)。情報や通信に関連する科学技術の総称。特に、電気、電子、磁気、電磁波などの物理現象や法則を応用した機械や器具を用いて情報を保存、加工、伝送する技術のこと。

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秋田に移住したきっかけ

課題先進国と言われ、世界的に見ても人口の縮小・高齢化などをリードしている日本。
逆に日本の足元から、世界に魅せられるものがもっとあるはずだ、という想いが芽生えてきます。世界に出ていく流れと同時に、日本の足元を掘っていくという両輪でやりたい。と思い始めました。
ちょうどその頃、丑田さんのお子さんは3歳になったくらい。
東日本大震災のときから思っていた、自分の生き方や子育ての環境をもう一度、プライベート視点でも丁寧に見直したいという、気持ちに駆られます。

そのタイミングで、『ちよだプラットフォームスクエア』内に、秋田県の五城目町が東京サテライトオフィスを置いたことを知り合いの方から聞き、紹介してもらうことに。
そこで出会った第一町民が、公務員の柴田さんでした。
またしても変なおっちゃんです。2013年の夏に初めて町へ遊びに行きました。初めて訪れた五城目町は、観光地や絶景、世界遺産はありませんが、普通の日本の田舎暮らしと文化と風景が残っている場所でした。こういう場所を暮らしのベースにすれば、すごく豊かだ、と思ったそうです。
そして、町内の日本酒の名店でお酒を飲んでいたら、いつの間にか五城目町に引っ越すことに。「だいたい決断するとき、エイヤーです」と、当時のことを笑顔で語ってくれました。


秋田でのチャレンジ

最初に拠点となったのは、町内の廃校舎でした。
この場所を、小さくとも新しいチャレンジする人たちが集う場にすべく、町がシェアオフィスとして開放。入居第1号として拠点を置き、取り組みを始めていきます。
移住後、初期に取り組んだ仕事は、オフィスからの散歩道にあった築134年のかやぶきの古民家を『シェアビレッジ』にすることでした。
移住を経験した丑田さんは、都会と田舎が二項対立で捉えられがちなことに気付きます。どっちが良いとかではなく、どちらでも良くて、お互いにもっと学び合えたり、シェアできたりすることもあるはず。
0と1の間のグラデーションが無限に発明されると、もっとライフスタイルが豊かになる、という考えを持っています。

皆でシェアする仮想の村。それが『シェアビレッジ』のコンセプトです。
年会費を『年貢』、納めてくれた方を『村民』と呼ぶシステムを作り、初期の改修費用を賄う際にはクラウドファンディングを活用。
「年貢を納めて村民になろう」というメッセージを掲げ、約800人が村民になり、2015年に無事、開村となりました。


いま興味のある世界観

『シェアビレッジ』は地元の人と外から来る村民の人、中と外をつなぐ拠点として運営していこうと考えました。
全国に散らばっている村民が定期的に遊びに来くることや、田舎体験をすることを「里帰り」と呼んでいます。住民票のある人たちだけで成り立っていた集落の共同体に、遊動的な人たちが関わることで、新しいコミュニティ像が生まれるのではないか、と思っています。
集落の中の人が当番制で行っていた、かやぶき屋根の葺き替えや、人手不足の地域のお祭りで神輿を担ぐこと、これらも「村民」からすると、村に来ることの価値や、観光では味わえない価値。
こういった参画や贈与のような経済を大事にしています。また、東京で定期的に『寄合』という飲み会を開き、新しい田舎と都会がシェアし合うようなコミュニティを作っていこうとしています。

香川にも一つ村ができたことで、秋田だけ留まらず、地域で小さく実践したものが飛び火していき、ローカルとローカルがつながっていって、人も地域に根差しながら遊動していけるような世界観をどう作れるか、というトランスローカルに興味を持っています。
今は、村は2つですが、これから色んな地域にこうした世界観を生み出していきたい、と語りました。

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越える学校

地域内外をつなぐ取り組みとしては他にも、県と共に進めている移住起業家育成プロジェクト『ドチャベン』や、地域の女性たちが中心となり、高齢化が進む朝市で若者が商いや表現に挑戦する日曜市『朝市プラス』なども生まれています。
朝市プラスは約3,000人が訪れる市になり、中心市街地エリアに新たなお店を出すといった動きも見られるようになりました。

次に話してくれたのは『五城目小学校改築プロジェクト』についてです。
これは、統廃合で1校になった小学校の建て替えが事の始まりです。このタイミングで、町のみんなが、未来の学校を作るプロセスに参画することを建築の段階からやろう、と町役場と設計事務所が動き出しました。
そして、ハバタクも住民参加のワークショップを支援していく中で生まれた建築コンセプトが「越える学校」です。
統廃合により地域と学校が離れがちな課題意識を受けて、いかに多様な町民が学校と交わることができるかという話題が出ました。
そこから生まれた「生涯小学校エリア」は、「地域の誰もが何歳になっても小学生の気持ちで学び続けられる場をつくろう」と、図書室や公園を地域にシェアしていくことで誰もが学校空間に足を運べるようにしようという試みです。『越える学校』は、来年秋に完成する予定だそうです。
秋田県は教育留学の先進県でもあり、こういった環境を町外の小学生にもおすそ分けし学び合うことで、さらに「越える」ポテンシャルがある、と語りました。


子どもから大人まで遊び続けられる時代に

「学び」を軸に様々な取り組みをしている丑田さんですが、真面目なことばかりでは思考の飛躍が起きにくかったり、一部のマッチョな人しか来なくなってしまうこともあり、最近は「遊び」というキーワードを探究しているそうです。
なぜなら「遊び」は何かを越境できるから。この「遊び」を日常化させたい、と行動を起こしました。

町民が四天王となりカレーを食べるイベントからはじまり、一昨年には中心市街地の古い建物をリノベーションして、「ただのあそび場」を作ったりもしました。
今年は、あそび場をオープンソース化して、色々な町の商店街や商業施設、オフィスが遊び場化していく流れを推進していく予定です。また、放置されがちな「里山」をもっと遊びや学びの場として開放していくことも計画中です。
テクノロジーの活用や、エンターテイメント、アート的な視点も含めて、もっと里山の知恵を学び、楽しみ尽くせる環境ができないか、と組織横断チームで考え始めています。

最後に、丑田さんは、ワクワク、ドキドキするプレイフルな遊びや、夢中になれることから始まるエコノミーが、これから主導権を握っていくのではないか、と言い切るようにしています、と話してくれました。
学びも「学ぼう」という意識を手放した先にこそ、結果的に学びになり、自分の枠を超えていくような体験ができるのでは、と感じています。過去から現在、そして未来のことまで沢山お話いただいた丑田さん。
「子どもから大人まで遊び学び続けられる時代にしていきたい」と締めくくってくれました。


マイプロのシェア
次に、マイプロシートの人生グラフを使用したワークを行いました。これまでの人生を振り返り、感情の浮き沈みをグラフに表します。共有では、二つのグループになり、グラフに沿って話しながら、お互いにもっと聞きたいところ、疑問点などを話し、自分自身の思いや大切にしていることなどを見つけ出しました。

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チェックアウト
最後に、チェックアウトを兼ねて、相互にフィードバックをおこないました。
「腑におちました。お話が聞けて良かったです。」という方や、「自分はこれをやっていきたい。」とコミットされるかたも。それぞれが「学び」・「気づき」を得たようでした。

総括
丑田さんのキーノートを聞いて、理屈ではなく「なんだか楽しそう」という思いで新しいことにどんどん飛び込んでいった姿にとても勇気づけられました。私自身も「なんだか楽しそう」という気持ちを大事にしてみよう、と思いました。
マイプロのシェアでは自分が知らない自分に気づけた方もおり、充実したワークになったと思います。今回は5回連続講座の2回目でした。あと残り3回で参加者がどのように変化していくのか近くで見守っていきたいと思います。


(レポート:時久あすか)


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