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【第14回】地域ビジネス実践ガイドブック

 Kochi Startup BASE®︎では、地域課題解決や地域資源を活用した事業化に向けた基本的な知識獲得と実践に向けたグループワークを行う「地域ビジネス実践講座(全5回)」を開催してきました。

 今回、講座内で使用するオリジナルテキスト『地域ビジネス実践ガイドブック』の内容を全20回にわたって配信します。第14回は、「5.地域ビジネスに求められるデザイン思考―02デザイン思考の5つのステップ」についてご紹介します。

5.地域ビジネスに求められるデザイン思考―02デザイン思考の5つのステップ

 デザイン思考は、図表15の通り、5つのステップで理解されています。

【 図表15 デザイン思考のプロセス 】

P61_図15_図表15   デザイン思考のプロセス

step1 共感

 最初は共感(Empathize)です。ここでは、実在のユーザー(当事者)を見つけ、観察を行うためにフィールドワークに出かけ、インタビューや観察を行います。観察を通して、ユーザーが抱える本当の課題や問題、求めているものは何かを見つけ出していきます。ここでは、いきなり具体的な仮説の設定を行うのではなく、ユーザーの日常生活や行動様式、思考様式、置かれている状況を、五感を生かしてありのままに理解し、気づき(=インサイト)を獲得することを目指していきます。

 共感段階では、目に見える行動や言動だけではなく、その背景にある心情や価値観に近づくことが重要です。実際には、4~5名のチームを作り、問題を抱えている実在のユーザーや現場へのフィールドワークを実施します。そして、観察を通じて得られたデータ(フィールドノート、写真、映像、音声など)をチーム内で整理、分類、解釈を繰り返し、ユーザーの体験や経験、主観を可視化し、新たな気づき(インサイト)を発見します。

P62__望遠鏡

step2 問題定義

 次に問題定義(Define)です。ここでは、観察を通じて明らかになったユーザーの実態から、ユーザー自身もまだ気付いていない本当の課題や目的を絞り込み、目指すべき方向性やコンセプトを定義する段階になります。その際、ペルソナやカスタマージャーニーマップなどのツールを活用しながら、できる限りユーザーのストーリーや背景にある価値観への深い洞察を行うことが求められます。

 問題定義はアイデア創出の起点になるため、「われわれの解くべき問題は何か」を特定し、明確に規定することが重要になってきます。

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step3 アイデア創出

 続いてはアイデア創出(Ideate)です。前のSTEPにおいて定義された目的や方向性を実現するためのアイデアを量産する段階になります。デザイン思考の特徴は、いきなりアイデアを描かないということと、一つのアイデアに絞り切らないという点にあります。そのためこの段階では、ブレインストーミングやアイデア創出技法を活用し、質よりも量を重視し、考えられ得るさまざまなアイデアを可視化します。

P63_物書き

step4 プロトタイピング

 そして、プロトタイピング(Prototyping)です。アイデア創出のステップで出されたアイデアを使って、できるだけ簡易なプロトタイプ(試作)を作成する段階となります。プロトタイプを作る目的は、描いたアイデアについて新たな学びを得ることになるため、紙や段ボールなど、できるだけ時間とお金をかけずにアイデアの核となる要素を表現します。

 アイデアが可視化されることによって、新たな気づきやアイデアが生まれたり、共感・問題定義の見直しの必要性が生まれたりします。

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step5 検証

 最後に、検証(Test)です。ここでは製作したプロトタイプを実際のユーザーに試しに使ってもらい、当初の目的(アイデアによって解決を図りたいこと)が達成できているのか、想定している機能が有効に働いているのかなどを確認し、ユーザーからの生の声を基にアイデアの改善につなげていきます。

 ここでは、もし「当初の想定が機能していない」と判断されたときには、躊躇せずに元のアイデアやプロトタイプを作り直すことになります。

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(第15回へつづく)

ガイドブック ダウンロード方法

こちらのオリジナルテキスト、「地域ビジネス実践ガイドブック」は以下URLより無料でダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。
https://select-type.com/e/?id=q9L-D4oFmnQ
<筆者プロフィール>
須藤 順
高知大学地域協働学部 准教授 / 博士(経営経済学)/ 社会福祉士

専門は、社会的企業論/社会起業家論、コミュニティデザイン論。医療ソーシャルワーカー従事後、医療関連施設の立ち上げ、福祉施設の経営コンサルティングに参画。その後、中間支援機関においてコミュニティビジネス/ソーシャルビジネスのコンサルティング、コミュニティデザイン支援、農商工連携/6次産業化等の支援を担当。(独)中小企業基盤整備機構リサーチャー等を経て、現職。ビジネス・ブレークスルー大学非常勤講師、(独)中小企業基盤整備機構TIP*S人材支援アドバイザー等。アイデアソンファシリテーターのほか、ローカルイノベーション創出、起業家育成、地域づくり、コ・クリエーション創出に向けた実践とサポート、研究を全国各地で展開。
http://www.communitydesign-kochi.jp/

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