寺井さんジャーナル

【ジャーナル】こうち女性起業家応援プロジェクト連続セミナー #10 クリエイティブは特別な仕事?わたしが映像で社会変容を目指す理由

「こうち女性起業家応援プロジェクト」は、起業や育児休業後の職場復帰や再就職、移住後のキャリアチェンジ、そして、キャリアアップを目指す女性を幅広く支援するという想いから、各分野で活躍する起業家をゲストに迎えたセミナーや、生活目線から考える事業アイデアの創造に向けた学びの機会を提供し、高知の女性が自分事として取り組むことのできる新たなチャレンジを後押しすることを目指し、開催しております。

第10回目の講師は、寺井 彩 さん(EXIT FILM inc. プロデューサー / PR)。
『クリエイティブは特別な仕事?わたしが映像で社会変容を目指す理由』と題して、デザインやクリエイティブのバックグラウンドに持たずに、現在の仕事に就いて学んできたこと、女性としてクリエイティブな仕事をする上で大切にしたいこと、社会性とエンターテインメントが両立した映像コンテンツの可能性について、お話ししていただきます。

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寺井 彩 さん(EXIT FILM inc. プロデューサー / PR)
英大学院修士卒。
映像・写真を媒介とした社会的弱者のエンパワメントやアドボカシー手法を学ぶ。
現在は映像プロダクション EXIT FILM inc.で、エンターテインメントと社会性の両軸を持つ、広告や企業ムービーの営業/プロデュースを担当。

「HOW YOU ARE RARE?」

寺井さんのキートークは、簡単な自己紹介から始まりました。1993年生まれ。両親が大学在学中に産まれ、自由な環境で育てられたそうです。
もっと広い世界が見たいと、15歳のときに一年間渡米。大学と大学院では、文化人類学や国際開発学を専攻。大学院のときに、コミュニケーションや映像の面白さと出会い、特に映像や写真を媒介とした対話の手法を学びました。
2017年に日本に帰ってきた後、東京の映像プロダクション『EXIT FILM』に就職し、プロデューサーやプロダクションマネージャー、広報、営業などを2年間経験してきました。好きな詩は、茨木のり子さんの『自分の感性くらい 自分で守れ ばかものよ』。

ここで唐突に「皆さんに考えて欲しい問いがあります」と投げかけました。それは、寺井さんが過去に参加した、あるプログラムで最初に聞かれた「HOW YOU ARE RARE?(あなたはどうレアな存在ですか?)」という問い。この問いの裏には、組織の多様性や個々のスキルを活かしたコラボレーションの大事さが言われていますが、それを実現するためには、まず自分自身が、何がユニークなのかを掘り下げて認識することが必要だ、というメッセージが隠されています。

フォトジャーナリズムに出会う

仕事だけではなく、例えば女性であれば、出産や子育てによって考えが変わる、といった色んな経験が、自分のユニークさやレアさに繋がっている、とも言えます。
今の自分を形作っている経験は何なのか?その中で養われた価値観や自分が大事にしたい価値観は何か?自分のレアさを活かせるフィールドは何か?というところを考えてもらえたら、と言葉が続きました。
その後、寺井さんを創ってきたもの、影響を受けてきた女性リーダーやクリエイターの紹介がありました。

寺井さんが表現すること、伝えることに興味を持ったのは高校生時代。フォトジャーナリズムに出会い、見えない存在を伝えることの重要性やおもしろさに関心を持つようになりました。
そのきっかけとなったのが、写真集。キルギスでは、誘拐や略奪によって女性が結婚させられる風習『アラ・カチュー』が一部残っており、その人権侵害的な側面や文化の複雑さを問題提起した写真集を撮影したのが、寺井さんの敬愛している女性の一人、林典子さんでした。

それは、中学3年生のとき、写真という一枚の絵の力を考えさせられた出来事。本屋で林さんの写真集を見つけ、「私の見えていない世界、存在がこの世の中にある」と気づかされました。
同時に、そのことをもっと伝える側になりたい、と思いました。想像力をもって、他者や知らない存在を自分の日常に存在させられることが大きな力であり、無関係に思えてもストーリーで見ていくと、その根本に自分と共通することがあり、一気に自分ごとになる、そんな力がある写真の凄さを感じた、と当時の心境を語りました。

女性社会起業家に影響を受ける

「私の知らない世界ももっと知りたい」。そう思い、東京にある大学のアフリカ専攻に進学。世界史の教科書に3ページしか書かれていないアフリカのこと。何百ページもある内の3ページしかないなら学ぶ意味がある、と選びました。ジャーナリストになると意気込んで入ったものの、色んな場面で、社会課題を伝えるだけでは誰も関心を持たず、社会も変わらない、と痛感しました。

2012年の大学1年生のとき。東日本大震災から1年、世の中では社会起業家やソーシャルビジネスに注目が集まっていました。そのときに、伝え方や社会課題への取り組み方、見せ方が色々あることを学びました。その中でも、女性だからこそできる表現やアプローチの手法に魅せられ、こういうことをしたい、と影響を受けた社会起業家が何人かいました。

一人目は、途上国から世界に通用するブランドを作っている、『株式会社マザーハウス』の山口絵里子さん。エシカル、フェアトレードのパイオニアです。
二人目は、メイクアップを使って女性が自信と尊厳を取り戻すきっかけ作りを行う『Coffret Project(コフレ・プロジェクト)』の向田麻衣さん。
三人目は、エシカルジュエリーブランド『HASUNA』の白木夏子さん。
この3名に共通しているのは、正しさを訴えたり、同情を誘う伝え方や見せ方をしないところ。社会的弱者を救っているということは、一切言っていません。また世界観の美しさや、製品の品質の良さにこだわっていて、こうしたアプローチこそ本質的な課題解決につながっていく、と思わされました。

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やりたいことは伝えたいこと

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