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【ジャーナル】こうち女性起業家応援プロジェクト連続セミナー #1-地域と伝統、人を繋ぐ、老舗醤油屋の女将の挑戦-

2019年8月28日にKochi Startup BASE®️で開催された「こうち女性起業家応援プロジェクト」は、起業や育児休業後の職場復帰や再就職、移住後のキャリアチェンジ、そして、キャリアアップを目指す女性を幅広く支援するという想いから、各分野で活躍する起業家をゲストに迎えたセミナーや、生活目線から考える事業アイデアの創造に向けた学びの機会を提供し、高知の女性が自分事として取り組むことのできる新たなチャレンジを後押しすることを目指し、開催しております。

第1回目の講師は、竹中佳生子さん(丸共味噌醤油醸造場 四代目女将)。
『地域と伝統、人を繋ぐ、老舗醤油屋の女将の挑戦』と題して、これまでの経緯や現在、取り組まれている仕事や活動、そして、これからのことについてお話いただきました。

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竹中佳生子さん(丸共味噌醤油醸造場)
1978年生まれ、午年。
前職は地ビール職人。須崎にUターンして、親戚家業の味噌・醬油屋を継ぐ。ビール会社で出会った主人と結婚し、二人娘の母親としても日々奮闘中。「丸共」という屋号に運命を感じ、「須崎と共に」「食材と共に」の生き方や在り方を考えながら走り回る日々です。

幼馴染から教えられたこと

自分の人生を一言で表すと「その時やりたいことをやってきた人生」と話し始めた竹中さん。
親からも、何を考えているのか、どこへ行くのか分からない、とよく言われていました。それを象徴するかのように次々出てくる、これまでの人生のエピソードの数々。

話は、竹中さんが10代の頃に遡ります。
大学受験のときに、幼馴染がカナダに留学をする、と地元を飛び出していったことに衝撃を受けました。「私もやりたいことで出て行っていいんだ。」当時、自分のしたいように生きていたと思っていたが、それは小さい世界の中のことだった、と感じ、ニュージーランドにホームステイすることに。
その経験から外国が好きになりましたが、親に言われて日本の短大へ進学。英語を勉強したい、という想いが芽生え、卒業したらアメリカへ行くことを決めていました。

スペシャリストよりもジェネラリスト

今まで、高知でしか生活してこなかった竹中さんにとって、都会の短大での生活は楽しいことばかり。
そんな気持ちに変化が起こったのが、飲食店でのアルバイトをした頃でした。お客さんの食べ残しを捨てているとき「消費するだけで何も回っていない。お金があって、騒いで終わり。それで良いのかな」と思うようになりました。
このことが心に引っ掛かり、目の前の楽しみだけでなく、歴史も知らないといけない、専門的に学ぶよりも、広い視野で色んなことを知りたい、と南北問題も気になり始めたとき、読んでいた本に出てきた「スペシャリストよりジェネラリスト」という言葉が竹中さんに刺さりました。

ちょうど世の中は、国際学部が大学に新設され始めた時代。その本の著者である先生のゼミに編入したい気持ちが湧き上がります。
「風が吹いたら、そっちへ行って。この出逢いは必然」が口癖だった学生時代。親をビックリさせてしまいましたが、無事編入し、校外学習でアフリカのガーナに連れて行ってもらいました。
実際に足を運ぶと、驚くことばかり。今、振り返ると、アフリカは高知と繋がるところもあった、と話しました。

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ビールと醤油

そのアフリカへの訪問は、人種や言葉、国境が違っていても壁がないことを実感しました。もっと触れたい、また外国に行きたい、そう思うようになり地ビールのお店でアルバイトを始めました。
その頃、大学の授業が終わったら「泡の出る麦茶を飲もう」とゼミの先生が言ってくれるのが合言葉だった竹中さんにとって、ビールは立派なコミュニケーションツール。
地ビールの職人さんと仲良くなって、ビールを作る技術を習得して、女性のブルワーになり、青年海外協力隊に行く、という人生シナリオが出来たとき、一人の男性と出会います。その男性が現在のご主人。

この出会いを機に、竹中さんの中でガーナに行きたいという気持ちはなくなっていました。
知り合って、数年後「ビールを作るなら醤油を作れ」と実家の父親から連絡が入ります。実はこの時期、地ビールに行き詰まりを感じていた竹中さん。
自分のルーツであり原点回帰だと思い、須崎に戻ることを決意。
最後の賭けで、「一緒に帰ってほしい」とご主人に伝えたものの断られてしまい、大失恋状態で地元へ帰りました。

丸共に運命を感じる

丸共味噌醤油醸造場は、元々は親戚がやっていたお店。その親戚が病気になり、子供もいなかったので、やむを得ず廃業することになりました。
親戚に代わって、竹中さんのお父さんが挨拶回りをしたところ「無くなったら困る」「うちの味をどうやって出したらいい」「うちは、この味でやってきている」というたくさんの声が。

お客さんの想いや先代からの思い出も強く、辞めることを好まない竹中さんのお父さんが引き継ぐことを決めました。
実家の商売である網屋と醤油屋の経営は並大抵のことではなく、家もぐちゃぐちゃに。そんな家から逃げたい、と県外の学校へ進学した竹中さん。
帰ってきたとき「運命だ」と思う出来事がありました。蔵にある検品したタンクに自分の誕生日が書かれているのを見たとき「私がおらないかんがや、投げだしたらいかん」そう思った、と話します。

屋号の「まるきょう」はローマ字で「MARUKYOU」。
この最後の「U」は、あなたという意味のYou、そしてUターンのUという意味を持たせています。頑張れなくなったときは、このことをよく思い出しているそうです。

醤油を取り巻く環境の変化

丸共のお醤油は、甘味料やうま味を足しています。竹中さん自身も、無添加の商品が広まったとき、原材料に調味料を足して作っていることに衝撃を受けた過去がありました。
「でも、それが丸共の味。この味が愛されているのだったら、悪いものは入れていないし、基準も守って作っている。作り手が違うっていうのはもっと違う、自分の商品に自信を持たずに売ったらいかん」
ご主人にそう言われました。色んな考えが巡った時期もありましたが、今では他では出せない丸共の味が「大好き」だと、自信を持って言える、と笑います。

帰ってきた当時、「同じ味が本当に作れるのか」と地元の人に言われるほど、地元愛が強い、丸共の商品。世間の食卓の風景が変わっている今、醤油をベースにして何かしたい、と考えています。
「守るためには変わらないといけない、同じものを同じように作って続いている会社はない」というご主人からの言葉に、留まるよりも動くことがヒントになる、と、竹中さんは外に出て、様々な人たちとの繋がりを生み出しています。

自分が好きかどうかが基準

好きな人を増やす人生が原動力になる、人のいる場所が好きだ、という竹中さんには好きな言葉があります。それは「人は人に磨かれる」という言葉。
傷つけたり傷つけられたりすることもありますが、人は人と関わって成長していく、と考えています。

話も終盤に差し掛かる頃、「この言葉を知っていますか」と参加者に問いかけました。「愛の反対は何でしょうか」これはマザーテレサの有名な言葉。愛の反対は無関心です。
竹中さんは何に関しても、人に興味を持つことを大事にしています。そして、選択肢が多く、豊かであることは良いこと、素晴らしいことではあるけれど、イコール幸せではない、だから自分で選び取る力が大切だ、と話を続けます。
その選び取る基準は、良い・悪いよりも、自分が好きかどうか。ですが、好きを見つけるのも難しい時代です。
だから「小さい好きからどんどん見つけていってほしい。好きという気持ちが一番動く力になる」と参加者にエールを送ってくれました。

この他にも、ライフワークとして地域の方と一緒に取り組んでいる、七夕かざりの活動について、育児と仕事の両立についてなど、ご自身の想いを語ってくれました。
人とのつながりと自分の好きという気持ちを大事にしながら、今を精一杯走り続ける竹中さんの姿に、参加者も共感し、元気づけられるキーノートスピーチでした。

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ライフヒストリーや気づきのシェア
次に3人~4人1組になり、竹中さんのキーノートをシェアしました。
その後、竹中さんを囲み、対話しました。

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参加者の中には、竹中さんと同じように事業継承をしている方や、子育てと仕事の両立に悩んでいる方、将来的に事業を子供に引き継ぐ予定の方など、共感する部分に対しての感想や、もっと深く聞いてみたいこと、竹中さんの人柄についてなど、色々な話題が出ました。

チェックアウト
最後は、チェックアウトとして、一人ひとり今日の感想を話しました。
自分自身がこれからどうしたいのか、ということを考えていた方や、今回のようなセミナーに参加するのが初めてだった方からは「どうしても来たかったから、参加して良かった」という嬉しい感想が聞かれました。

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総括
自分の好きを大事にしながら生きてきた、これまでの人生を自分の言葉でしっかりと語ってくれた竹中さん。チェックインのときの表情に比べて、チェックアウトのときは、明るく、スッキリとした表情に大きく変わったように感じる参加者も見られ、満足度の高さが伝わってくる回となりました。
本セミナーで得られた気づきやヒントが一歩を踏み出したい参加者の皆さんの背中を押せるものになるよう、さらに良い場づくりをしていきたいと思いました。

(レポート:上野伊代)


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