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【ジャーナル】事業創造アイデアソン ―レゴ®シリアスプレイ®を活用してSDGsの次のアクションを考えよう―

事業創造アイデアソン・キーノート『中小企業がSDGsに取り組む意義と役割』をテーマに、大川さんにお話していただきました。

2019年11月1日、「事業創造アイデアソン」がKochi Startup BASE®(以下、KSB)にて開催されました。このイベントは、LEGO®SERIOUS PLAY®メソッドを活用して、一人ひとりが自分事として取り組むことのできるSDGsのテーマや課題を見つけ、その解決に向けたアイデアを描くアイデアワークショップとして実施しました。

<ゲスト講師>大川哲郎さん(株式会社大川印刷 代表取締役社長)
東海大学 法学部法律学科卒。1993年、株式会社大川印刷入社。2005年11月、代表取締役社長に就任。2001年、社会起業家との出会いから、「印刷を通じて社会を変える」視点に気付き、2004年、「本業を通じて社会的課題解決に取り組む『ソーシャルプリンティングカンパニー』」と言うパーパス(存在意義)を掲げる。
現在、複数の社会的課題解決プロジェクトを各種NPOと協働し推進。NPO、NGOとの協働の経験から市民参加のワークショップなどでファシリテーターを数多く務める。

チェックイン

今回は、社会人や学生を含め15名の参加があり、4人グループに分かれて名前や所属、今の気持ちをシェアしました。参加者の中には、車で片道3時間半かけて参加していた方もいて歓声が上がる場面も。
性別や年代も様々でしたが、どのテーブルもすぐに打ち解けていました。

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イントロダクション

チェックアウトが終わり、参加者の席には、大川印刷の資料とともに、大川さんの名刺が配られました。名刺は、一見すると凝ったデザインという印象。最初に「なぜ、名刺がこのようなデザインか理由があります」と切り出し、大川さんのお話が始まりました。
続けて、「会社が130年続こうが、世の中に必要とされなくなった段階で、会社というものは無くなってしまう。これは人の部分につながっています」と前置きしました。
名刺を見てみると、大川さんの写真と、会社の理念に合致している黒人音楽のアーティストの名言が入っています。名刺は、全部で13種類あるそうです。

音楽が関係している理由は、大川さん自身が音楽好きで、ギターを続けているからです。2か月に1回、横浜のライブハウスでプロの方のバックで演奏しています。ギターはすごく好きですが、譜面は読めません。
このエピソードは、これからSDGsを学ぶ人たちに伝えたいことと似ている、と話しました。SDGsには、17個のゴールに加え、169のターゲットが設定されています。それらを理解するのは難しいことです。
しかし、譜面が読めなくてもプロの方とセッションができる、という自身を例に挙げ、SDGsのすべてを知らなくてもセッションができる、ということを参加者に伝えた後、大川さんのキーノートが始まりました。

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原体験から抱いた課題感

大川さんが代表取締役を務める『株式会社 大川印刷』は、138年前に大川さんの曾祖父が24歳のときに設立。
かの有名な勝海舟が題字を書いた「開國少史」や、夏目漱石の「吾輩は猫である」にも登場する、薬のラベルも印刷したと言われる歴史ある会社で、横浜市では有名な「シウマイ弁当」の包装紙も印刷しています。

会社の歴史を紹介したのち、話は大川さんの過去の話に移ります。
18歳のとき、医療事故で自身の父親を亡くしました。訴訟も考えましたが、親戚の医師に止められてしまいます。そのとき、大川さんは「医師には勝てない、やっても無駄だ」と思いました。今になって振り返ると、この出来事が自身の原体験の中で抱いた、課題感でした。

理不尽な思いをした当時、「自分の父親は医師に殺されたんだ」と、どんどん卑屈になり、人間不信になっていきました。父の死後、一度も経営をしたことがない専業主婦だった母親が社長として、5代目を引き継ぐことになり、大川さんは大学を卒業しました。

ブルーズがもたらしたもの

父親が亡くなり3年以上経っていましたが、まだ卑屈な気持ちを引きずっていた頃、音楽が好きだったこともあり、アメリカ南部に行きました。そこで目にしたのは、現代も色濃く残る人種差別の名残でした。
日本人である大川さんも人種差別にあいましたが、そのときにフレンドリーに接してくれたのは、現地の黒人たちでした。このことがきっかけになり、黒人の歴史や音楽に、どんどんのめりこんでいきました。
そのときに、ある人の話を聞き「こんなに卑屈になっていてはいけない」と、我にかえります。ブルーズによって、生かされていること、生きる力というものに気づかされたのです。

大川さんが会社のブランディングに、なぜ黒人音楽を取りいれているのか、その理由は、黒人音楽のおかげで自身が変わることができたからでした。
課題感を持ち、自分のやりたいことに突き進んでいくと、あらゆる課題や壁にぶつかります。そんなときに折れず、屈しないパワーを自分自身も持っていたい、という想いも込められています。

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SDGsに取り組むきっかけ

大学卒業後、一般企業に就職。3年間働き、大川印刷に戻ってからはちょうどバブルも崩壊し、会社の売り上げはどんどん下がっていきました。
このままでは会社も潰れてしまうと、地域や社会に必要とされる人と企業を目指すこと、そして、続けていくためにも自分の好きなことと仕事を一致させていこう、と決めました。

大川さんの出身地である横浜は、都会の要素も持ちながら、一方では、自然が豊かなところもあり、大きい田舎で郷土愛も強い、と言います。こうした土地柄の影響もあり、子どものころから、環境に関心を持っていたので、環境問題を自分の仕事と繋いでいくことにしました。
チャリティーやボランティアでなく、本業を通じた社会課題解決をしていく「ソーシャルプリンティングカンパニー(社会的印刷会社)」というパーパス(自社の存在意識)を2004年に打ち立て、その流れでSDGsに出会います。

SDGsには17のテーマがあります。その特徴は、先進国を含むすべての国に適応される普遍性。そうであるにも関わらず、世界からすると当たり前のことに危機感を抱かない日本のエピソードも少し教えてくれました。

取り組みのポイント

SDGsの精神である「誰一人取り残さない」という言葉。経営者の視点から「誰一人取り残さない」ということを実際に行うのは難しい、と感じる側面もあり、ピンとこない、と感じる人がいることも事実です。だからと言って、やらなくても良い、ということではありません。

大川さんなりの解釈は「自分さえ良ければいい、をなくす」。
これは重要なことです。個人だけでなく、企業に置き換えても同じで、環境や地球全体を見たときに持続不可能になるようなビジネスは、そもそも成り立ちません。
それなのに、自分たちの会社さえ良ければいい、と言うのは、成り立たないことと一緒です。

もうひとつは「私には関係ない、をなくす」。例えば貧困の問題が国外の問題だとは思ってはダメで、日本においても相対的貧困の問題もある。
何のために、誰のために働くのか、と問われたときに、自分のためだけ、と言う人には、資金調達も出来ません。
あるいは、こうした考えの人ばかりいる会社には、投資をしてもらえません。
当たり前のことなのに、分からない、危機感が持てない、というのが今の日本の状況だと、大川さんは感じています。

他人事を自分事に置き換える

日本の現状を考えることは、大事なことだ、と話を続けます。
こういうときだからこそ「他人事を自分事に置き換える」という視点を持つことで、新しい提案が出来たり、従業員さんと新しい関係性ができたりします。そうして、このことがパートナーシップに繋がっていきます。

では、どこから取り組めば良いのか。
このことはあまり知られておらず、分からないことが多いのです。
大川さんは、こう考えています。まずはじめにやることとして、企業であれば自社の事業がどのようにSDGsの課題と繋がっているか、紐づけをすることが挙げられます。

しかし会社全体で取り組んでいくためにも、自分の経験から抱いた課題感が重要だと話しました。大川さんの場合であれば、父親の医療ミス、人権、そして人種差別など。
こうした課題感の中で、自分がどんなことを使命として取り組んでいくのか?どんな仕事に就きたいかなど迷った時、行きたい会社と、その会社のやっている事業とSDGsの紐づけを理解しておくことは、良いことであり必要なことだ、と言います。

今、問題になっているのは、ほとんどの会社が紐づけだけで終わりにしていること。
ゴールの2030年までに、自分たちの会社が何をゴールにして、そのために今、何をするのかが明らかになっているか、という『バックキャスティング』が大事だと言われています。
日本人は『フォアキャスティング』という、これまでの積み重ねから考える思考がやりやすいそうですが、重要なのは目標を掲げたうえで、どうしたら良いか、ということをパートナーも取引先も一緒になって考える『バックキャスティング』の方です。

企業の存在意義

SDGsの取り組みを進めている中で、「儲かるのか?得するのか?」ということをよく聞かれるそうです。
大川さんからすると損得レベルの話ではなく、自分たちの使命。
企業にとっては、存在意義をかけて取り組むことの一つです。それは、個人も同じ。大川さんは「自分の存在意義や価値をかけて、生きていくというのも、生き方として素晴らしいことではないか」と、思っています。

受け売りですが、と、この話題にまつわるお話を聞かせてくれました。
お世話になったコンサルタントの方に、「企業にとっての使命とは存在価値のことで、『明日、あなたの会社が無くなったときに、あなたのお客さんは本当に困りますか?』ということだ」と言われました。

会社が無くなったら、他のところに頼めばいい、とケースもあり得ます。自分たちが生き残る、という話ではなく、今の時代は、もしかしたら自分たちが必要とされる人と企業であるために、色んなパートナーシップを組み、競合他社とも連携しなければいけないのでは、と大川さんは、思っています。
続けて、SDGsはその中で、存在意義を高めていくための重要な核ではないか、と語りかけました。

SDGsに取り組む際のポイント

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高知 蔦屋書店内に開設された高知県初の共創型スタートアップ支援施設です。新規事業創造セミナーや起業家育成プログラムのほか、ワークショップの開催、貸しスペースの提供等を行っています。また自分らしい生き方や働き方を実現できるきっかけづくりを目指した様々なプロジェクトを展開しています。
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