見出し画像

【ジャーナル】[Part3]こうち100人カイギ vol.19 滝野 結公さん(高知工科大学大学院生) / 山中 由貴さん(TSUTAYA中万々店/なかましんぶん編集長)


2019年1月よりKochi Startup BASEにて始まった「こうち100人カイギ」。
高知の様々な分野で活動するゲストを、毎回5人お呼びして、生き方やその思いについて語っていただいております。全部で100人になったら、終了なこの企画。

今回は、2021年5月25日(火)にKochi Startup BASEでの現地開催とzoomを使ったオンライン開催にて行った100人カイギvol.19で登壇いただいた6名、1人1人の話にフォーカスを当てています。


参加したくても参加できなかった方、この方のお話が聞きたかった、など様々な方に読んでいただければ幸いです。


<こうち100人カイギ vol.19の登壇者>
5名それぞれの話をもっと深く知りたい方は、こちらの記事もチェック!※お名前をクリックすると、その記事に飛べます。

アスタ さん(Part 1掲載)
石川 拓也さん(Part 1掲載)

岸本 憲明さん(Part2掲載)
仙頭 杏美さん (Part 2掲載)


滝野 結公さん (Part 3掲載)
山中 由貴さん (Part3掲載)


5人目の登壇者は、高知工科大学大学院生の滝野 結公さん。

画像1

東京都出身。1998年生まれ。
国公立大学のパンフレットを大量に集めて大学を吟味し、自分の学びを全力でフォローしてくれそう!と思った高知工科大学を選んだ。高知県在住5年目。天才的な友人・恵まれた環境を必死で借りながら、自分らしく輝く術を日々研究している。自他ともに認めるメモ魔であり、その腕は年々と上がっていっているはずだ。"なんでも作ってみる"が現在のモットー。どこにでもいる大学(院)生が、なんでもメモする・なんでも作る、を語る。

思い浮かんだことはすぐにメモで記録

年間500冊の本を読むほどの活字マニアだという滝野さん。他にもアウトドア、DIYなど多趣味で、成人式の袴もご自身で手作りしたと会場を驚かせました。
たくさんの趣味の中の一つが、メモ。まだ学生で、これといった活動をしているわけではないからと『メモ魔であること』を今回の登壇テーマに選びました。
1人の人間が一日に脳みそで考える際に使う単語は、“おいしい”、“楽しい”など単純なものを含めると約1万6,000語。そのとき考えたこと、感じたことをすぐに何らかの形で残しておかないと、記憶に残しておくことはできません。
「そうだ、今日はこれしておかないと!」「いいアイデアが浮かんだ気がする!」など、自分の中で何かが思い浮かんだ時、滝野さんは何でもすぐにメモを取るようにしています。この日、他の登壇者の方のお話を聞いている間にも、スマートフォンの画面でスクロール3回分ほどのメモを取ったと言いました。

図1


メモ魔の極意

続いて、実際の授業ノートを投影しながら、『メモ魔の極意』について話してくれました。実際に授業中にとったメモの内容は、「日本人から聞くSDGsではなく、海外の人から聞くSDGsは?」といった言葉や、「新聞記事から考えるSDGsはないのか、こんな本が合ったら読んでみよう」と思う滝野さんの考えた架空の本の内容など。他にも、イメージ図に勝手に記号を書き込んだり、SDGsをウエディングケーキで表したりなど、滝野さんならではの工夫が詰まったノートでした。授業ノートはもはや板書ではなく、自分のそのときの気持ちなどを自由に書き込むように。友達からは「そんな内容の授業だったっけ?」「“♯自己主張激しめ”というハッシュタグが似合うね」と言われることも多いそうです。


自分の役割

最近、『私は誰か?』について悩むことが多いという滝野さん。大学院生である“研究者”、授業を受けている“学生”、就職活動をしている“就活生”、恋人がいる“カップルの片割れ”のほか、家計管理、家事、DIY、教育者、ネットショップの立ち上げ、オンライン講座など、現在、生活の中で様々な役割を担っています。滝野さんはその日一日の管理として、“くつろぎゆき”、“じゅぎょうゆき”、“しゅうかつゆき”など、自身の役割の項目で分類し、それぞれの役割を担い過ごしていた時間の割合を携帯電話のアプリに記入。それまでは自分がくつろいでいた時間の多さにネガティブな感情を抱いていましたが、その日自分が“何をしていたか”ではなく、“どの役割にいたか”を記録することで、“自分にはこのくらいくつろぐ時間がなければ一日が回らないんだ”と、第三者的視点で自分について捉えられるようになりました。

図1

メモ魔の効率性

そんな“メモ魔”な毎日を送る中で、滝野さんは周囲の人たちから「メモ魔は非効率じゃない?」と聞かれることが多くあると言います。実際に非効率だなと思う点は、『ペンの減りが早いこと』『とんでもないときにアイデアが思い浮かぶこと』『妥協点がなければ時間がかかること』の三つ。しかし、思い出すという労力が減ることや、やりたいこと同士のコラボができることなど、滝野さんにとって頻繁にメモを取ることは総合的にいいことの方が多く、非効率ではないと考えます。
その中でも大切にしている“メモ魔”であることの利点の一つが、『自分を主体に暗記できること』。ただ書いて暗記するより、自分がそのとき思ったことや学んだことを掛け合わせることで、より記憶に残りやすくなり、行動に移しやすくなるためだと言葉が続きました。


まずは殴り書きから

ここまで紹介してくれたメモの仕方や工夫は、全て自己流。メモ魔と自他ともに認める滝野さんは最後に、周囲の人たちから質問される三つの言葉と、その言葉についての考えを話してくれました。
まず一つ目は、「その人に合ったメモの仕方があるのでは?」ということ。そのことに関しては、とりあえず毎日殴り書きをしてみることで、今まで自分が考えていたことがすっと整理されることもあるのではないかと考えています。
二つ目に、「メモするのはスマホ?』ということ。滝野さん自身はアナログ派で、ポケットには常に紙とペンが入っています。メモする媒体には拘らず、何より自分が使いやすいものを使用してほしいと思っています。
三つ目は、「メモしたものを後から見ないのだけど…」ということ。滝野さん自身もそのことについては悩み続けた結果、現在はスケジュール帳や教科書に直接書き込んだりと、あとで見返さなければいけないような場所にメモをするようにしています。
メモを取り続ける自分に対して「なんのためにメモをするのかわからない。だがそれでいい。」と、素敵なスライドと言葉で締めくくってくれました。


6人目の登壇者は、TSUTAYA中万々店/なかましんぶん編集長の山中 由貴さん。

図1

1980年生まれ。書店員歴15年。
TSUTAYA中万々店で、フリーペーパー「なかましんぶん」を毎月発行。なかましんぶん編集長としてTwitterでも活動中。本が好き、工作が好きで、お店の売場を独断で自由にディスプレイして楽しんでいる。中万々店を、本好きなら遠方からでも必ず訪れたくなる遊園地のような本屋にすることが将来の目標。

書店員としての日々

TSUTAYA中万々店で書店員として勤務し、現在15年目の山中さん。学生時代から本が大好きで、小説やエッセイなど、どこに行くにも鞄の中には本が入っていました。書店員としての日々の業務は、主に品出しとその他接客業務です。毎日箱に入って店に届く本の数は、雑誌や書籍等合わせると、なんと一日に100冊以上。それらを一つ一つ箱から出して、売り場の棚に並べたり、レジに立って接客をしたり、合間に本を読んだりと、多忙な毎日を送っています。そんな日々の業務に加え、山中さんならではの力を入れている取り組みがあります。それは、『なかましんぶん』と名をつけた、月に一回店頭で配布するフリーペーパーの作成です。山中さんは編集長として、作成から発行までを行っており、その実物を広げて会場のお客さんに見せてくれました。A3用紙2枚分、全て手書きで作成しており、山中さんをはじめスタッフ自身が実際に読んで面白かった、お勧めしたいと感じた本の紹介、売り場の紹介など、TSUTAYA中万々店ならではの内容になっています。

図1

おすすめの本を届けたい

『なかましんぶん』の発行に加え、力を入れているのが『山中賞』という中万々店独自の賞。直木賞、芥川賞など毎年大きな賞の受賞作品が店頭に並びますが、大きな賞の受賞作品聞くと「私が読んでも本当に面白いのかな」や「難しくないかな」といった後ろ向きなイメージを持つお客さんが多く、実際に購入するのは本当に本が好きな人、直木賞や芥川賞の発表を毎年楽しみにしている人など、普段から本を読んでいる人に限られていました。本に詳しい人や作家が選んだような大きな賞の受賞作品より、目の前の人におすすめされた本の方が読んでみたくなるのではないかと考えたのがきっかけで、山中さん自身が実際に読んだ本の中で「これが今年一番面白い本です」と紹介を始めました。本当にお勧めしたいと感じた本を、TSUTAYA中万々店のスタッフ5~6人で集まり話し合い、年に二回、自分の名字からとった『山中賞』に選定。山中さんは選考委員長として、それらの本の紹介のため、全て手作りで店頭に売り場を作ったり、Twitterで発表したりしています。他にも“山中賞”と書いた帯を巻き、本の中になぜその本をお勧めしたいのか書いた手紙を全ての本に挟み、販売しています。


努力の成果

山中賞の選定、紹介をはじめる時は「誰からも反応がなかったら」「力を入れて宣伝したにも関わらず、売り上げにつながらなかったら」といった不安な気持ちもありましたが、広報や売り場の工夫の結果、現在TSUTAYA中万々店では、直木賞や芥川賞受賞本より、『山中賞』受賞本の方がよく売れるようになっただけでなく、山中賞として紹介した本は、それぞれ100冊~200冊近く売り上げを伸ばしています。
山中さん一人で始めた取り組みだったにもかかわらず、徐々にスタッフが協力してくれるようになりました。今では山中賞の発表用動画として寸劇を撮影しTwitterに掲載したりと、年々その取り組みは大掛かりになり、スタッフ皆が楽しく取り組んでいると言います。
他にも、もともと絵を描くことや工作、重機の組み立てが大好きで、最近は海外文芸にハマっており、海外文芸のみを紹介するためのフリーペーパーや売り場、色画用紙を使ったポップ作成にも力を入れています。

図1

書店員としての思い

会場のお客さんに「小説は読まれますか?」と質問を投げかけた山中さん。自身にとって小説は、現実から逃避行するのにすごく力を与えてくれるもの。どんな嫌なことがあっても、小説の中では楽しくいられると言います。自分がそうであるように、「みなさんに1ページでも2ページでも毎日本を読んでもらえたらいいな」と言葉が続きました。現在TSUTAYA中万々店はまだ“町の本屋さん”というイメージで、雰囲気の“イケてる感”に欠けると考えており、店内をおしゃれな売り場にできるよう努力しているそうです。「みなさんもしよかったら、TSUTAYA中万々店に足を運んでいただけたらなと思います」と、最後は書店員さんらしい言葉で締めくくってくれました。


【総括】

日々何気なく取る“メモ”の便利さについて、ご自身の考えを熱く語ってくれた滝野さん。特にその日自分が“何をしていたか”ではなく、“どの役割にいたか”を記録するという発想には目からうろこで、今までとはまた違う視点で一日を振り返ることができそうだなと感じました。
また、ご自身の大好きな本をいろんな人に届けるために日々努力されている山中さん。書店員さんとしての業務の範囲を超えた行動力に、山中さんの本への愛と楽しさが伝わってきて、私も久しぶりに本を読みたいな、と思いました。

お二人が今後またどのような活動をされていくのか、とても楽しみです。


(レポート:結城 菫)


100人カイギとは 
一般社団法人INTO THE FABRIC 高嶋 大介氏が「同じ会社に勤めていても、1度も話したことがない人がいる」と気づいたことをきっかけに、会社、組織、地域の"身近な人”同士のゆるいつながりを作るコミュニティ活動を始めました。 2016年六本木で「港区100人カイギ」スタートさせたのを皮切りに、渋谷区、新宿区、相模原市、つくば市、雲南市など全国各地へ広がっています。
100人カイギの一番の特徴ともいえるのが、「ゲストの合計が100人になったら会を解散する」ということ。100人の話を起点に、肩書や職種ではなく、「想い」でつながる、ゆるやかなコミュニティを作ります。


問い合わせ
Kochi Startup BASE®️
住所:〒780-0822 高知県高知市はりまや町3-3-3 GAIAビル2階
運営:エイチタス株式会社 高知支社
Mail: ksb@htus.jp
Webサイト:http://startup-base.jp/

皆様からいただいたサポートは、今後の活動・運営に使用させていただきます。