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【レポート】対話から始まる“私”のストーリー~場づくりのお仕事論~ ~こうち女性起業家応援プロジェクト連続セミナー #7


「こうち女性起業家応援プロジェクト」は、起業や育児休業後の職場復帰や再就職、移住後のキャリアチェンジ、そして、キャリアアップを目指す女性を幅広く支援したいという想いから、各分野で活躍する起業家をゲストに迎えたセミナーや、生活目線から考える事業アイデアの創造に向けた学びの機会を提供し、高知の女性が自分事として取り組むことのできる新たなチャレンジを後押しすることを目指し、開催しております。

第7回目は篠原幸子さん(NPO法人場とつながりラボhome’s viファシリテーター)。

今回のセミナーでは、「組織でも地域でも家庭でも、一人ひとりが自らの想いやありたい姿を発見し、それぞれの持ち場でリーダーシップを発揮することが大切」、と語る篠原さんに、
「対話から始まる"私"のストーリー~場づくりのお仕事論~」と題して、篠原さんの今までの人生を振り返っていただきながら、自分の想いを大切にして生きる方法や自分なりのリーダーシップについてなど、篠原さん自身の想いを参加者とともに共有していきました。

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篠原 幸子 氏(NPO法人場とつながりラボhome’s viファシリテーター)

佐賀県生まれ、福岡県そだち。市臨時職員、フラワーショップ店員、会計ソフトメーカー事務・営業、雑貨店店長などさまざまな職業に従事。育児にどっぷりの時期に市民しんぶんで見つけた「京都未来まちづくり100人委員会(以下100人委員会)」に応募、3年間子連れで委員を務める。100人委員会の運営・企画を担っていた場とつながりラボhome’s vi(以下、home’s vi)の会計で関わりつつ、「誰もが持っている願いや希望から行動すること」を大切にするhomes’ vi流ファシリテーションの魅力にひかれ、現場で場づくりをする側になる。釜石〇〇(まるまる)会議、大阪LGBT100人会議、山科子ども・若者未来トーク、京都ちーびずマルシェなど、まちづくり会議やコミュニケーション・会議力UP講座、リーダーシップ研修などをワークショップ形式で実施している。NPO法人 京都子どもセンター副理事長


「議論」ではなく「対話」
篠原さんはイベントを始める前に必ず確認をするという、OARR(オール)について丁寧に話してくださいました。OARR(オール)とは、Outcome(目標・ゴール)、Agenda(検討項目・進行スケジュール)、Role(役割分担)、Rule(規則・大切にしたいこと)の頭文字をとった言葉で、会議を進行するために必要な要素と言われています。場づくりのファシリテーションにおいて、特に最後のRである、Rule(規則・大切にしたいこと)は「自分も他の人も尊重すること」だと教えてくださりました。
日本人は他の人のことを大切に考える一方、自分自身を出さないことが多いそうです。自分自身を出さない一例として、「訊く」ということが挙がりました。例えば話の中で自分の知らない地名が出てきたとき、日本人はわかったふりをして、訊かずに会話が進行することがほとんどです。けれども、わからないときには、訊いてみることで、会話に参加できなくなってしまうのを防ぐことができます。
次に行ったのはチェックイン。そこに登場したのは、木でできた手のひらサイズの卵。我こそはという人から、この卵を手に取り、隣の席の人にタイムキーパーをしてもらい、1分で軽い自己紹介と今の気分などを話します。卵を持ってもらうのは、話す人と聞く人を分かりやすくするため。他にもアクションを行う際には、例を挙げて説明すること、威圧感の軽減や来たかったけど来れなかった人のために、エンプティチェアを作ることなど、ファシリテーションをするうえで気を付けていることや気遣いなども話してくださいました。

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ファシリテーターになるまで
次に篠原さんは、自身がどういう経緯でファシリテーターになったのかについて話してくださいました。
篠原さんは若くして母親を亡くし、就職も決まっていましたが、当時小学生の妹がいたため、家に残って家事に専念していました。そのころを振り返り、「いい子ちゃん時代」と呼ぶ篠原さん、人に頼まれていくつか仕事をしていたといいます。花屋さん、市の臨時職員、事務から雑貨屋さんの店長まで実に様々な仕事をしていました。その時得た知識や人との出会いは今にとても役に立っているそうで、「とりあえずやった仕事は全部楽しかった」と話してくださいました。
そして、きずなサミットに参加し、home’s biに出会い、子どもが1歳を迎えるころ、京都市の100人委員会に参加することを決意します。その時篠原さんが、参加を決意したのには3つの理由がありました。
1つ目は話を遮るクセがあったから。子どもが自分のようになってほしくないという思いから、自身のクセを治すきっかけになるのでは、と考えました。
2つ目は、「みんな違って大変だけれど、双方の落としどころを探していく」というファシリテーションのやり方にとても共感し、「この考えが当たり前になったら戦争はなくなるかもしれない」と思えるほど、強い衝撃を受けていました。その手法をもって知りたいと考えました。
そして3つ目は、今まで、父親によってやりたいことが制限されてきたけど、自分の想いに素直に動きたいと思ったから。
そういった気持ちに背中を押され、ファシリテーターへの道を歩きはじめます。


ファシリテーターとは
ファシリテーターとは、中間支援をする人。例えば、住民の声からビジョンを作るお手伝いはファシリテーターの役割ですが、具体的な絵を描いたり、デザインをすることはデザイナーの役割。何でもかんでもファシリテーターができるわけではありません。
「自分はコミュニケーションに難があるからこそファシリテーションをする」
そう話す篠原さんは、「『みんな違って大変!』だからこそ、小さな意見や願い、声なき声も大切にしながら、合意形成を図りつつ未来を作っていく人や場を当たり前に」を実現したいこととして掲げています。
その思いは実際のファシリテーションにも表れていて、篠原さんは安心・安全な場を作ることを大切にしています。誰もが落ち着く場になるように、運営含めて全員がチェックインを行うことや、円の真ん中に卵を置くことで、視線が落ち着くようにするなど、篠原さんの工夫は小さなところまで及んでいます。


エンパシーサークルの実践
次に実践として行ったのが、エンパシーサークルと呼ばれるNVC(非暴力コミュニケーション)の基本ワーク。観察、感情、ニーズ、リクエストというNVC4つのステップのうち、最初の3つのステップを行います。やり方は、まずグループの中で一人、話し手を決めます。話し手は最近あった、イラっとしたり、ショックだったりしたエピソードを聞き手に話します。それを受けて聞き手の2人が、人間の生まれながらにして持っているニーズが書かれたカードの中から、エピソードの中での、話し手の感情に近いと感じたもの、大切にしているのではないかと思うものなど、10枚ほど選び、手渡します。次に話し手はもらったカードをじっくりと味わい、その中で気になるものを1~3枚選びます。最後に話せるようであれば、カードを選んでみての感想や気づいたことを伝え、話し手と聞き手を交換していきます。
今回は、はじめに篠原さんにやり方を説明して頂き、4つのグループに分かれて行いました。
NVCでは「共感」することが大切にされています。「共感」とは同意ではなく、理解です。人は無意識のうちに、自分の都合のいいようにものを見て、聞いています。だから、私や私たちの当たり前は誰かの当たり前ではない、ということを頭においておくのが大切だと教えてくださりました。エンパシーサークルは慣れると一人でもできるようになり、エンパシーサークルを用いた自己共感が出来てくると、自分で自分を満足した気持ちにすることができるそうです。


自分をモニタリングする
NVC自分をモニタリングすることが重要です。モニタリングとは、以下のような手順で行います。

‐自分の行動を、解釈や判断を入れず、事実をもとに認識する。
‐そこで自分がどう考えたかではなく、どのような感情を持ったかを確認する。
‐自分が持った感情を大切にして、その根源を探しだす
‐自分の持った感情に対して、そのまま「共感」する。

これらのステップを踏むことで、ネガティブな感情や自分のクセにも向き合うことができ、場づくりでの合意形成がより円滑になります。
さらに、ニーズを満たすための行動である、リクエストと呼ばれるステップがNVCにはあります。リクエストは強要するものではないということが大切で、今回は深くは扱いませんでした。

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チェックアウト
最後は、チェックアウトとして、一人ひとり今日の感想を話しました。
参加者の皆さんからは、「エンパシーサークルを友達ともやってみたい」、「言うのと聞くので感じ方が違う」といった感想が挙がり、「自分の表面的な部分ではない、深層的な部分が知れた」という方もいらっしゃいました。


総括
今回は、女性だけでなく男性の方も多く参加してくださいました。また、参加者の中には、将来場づくりをしたいと考える学生も多く、今回の篠原さんのお話やワークはとても貴重なものになったのではないでしょうか。
私も、篠原さんのワークを通して、自分自身に「共感」するということの大切さを知りました。納得のいく合意形成のために、相手だけでなく自分のことも尊重していけたらなと思います。
今回のイベントが、皆さんにとって、自分自身に少しでも「共感」できるきっかけになれていたらと思います。


(レポート:檜山諒 )


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