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【レポート】全ては仕事ではなく、生き方 ―世界を旅する台所研究家の流儀 ~こうち女性起業家応援プロジェクト連続セミナー #6


「こうち女性起業家応援プロジェクト」は、起業や育児休業後の職場復帰や再就職、移住後のキャリアチェンジ、そして、キャリアアップを目指す女性を幅広く支援したいという想いから、各分野で活躍する女性起業家をゲストに迎えたセミナーや、生活目線から考える事業アイデアの創造に向けた学びの機会を提供し、高知の女性が自分事として取り組むことのできる新たなチャレンジを後押しすることを目指し、開催しています。

第6回目中村優さん(台所研究家)。
『全ては仕事ではなく、生き方-世界を旅する台所研究家の流儀』と題して、新しい働き方、生き方を自ら実践する中村さんがなぜ料理に出会い、なぜ世界を旅することになったのか、そして、今、どんな問題意識を感じているのか、語っていただきました。

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中村 優 氏(台所研究家)

TEDxTokyo yz 2014スピーカー、2015年から世界各国の次世代リーダーのコミュニティGlobal Shapersに選出され、現在Bangkok HUB在籍。2017年にはWorld economic forumに出席。 これまで37カ国の台所に立ち、英語とスペイン語と少しのタイ語を話す。編集事務所とレストランで編集と料理を学んだ後、2012年フリーランスに。紙・web媒体での執筆活動に加え、レシピ開発やケータリング、食品関連企業の広報・企画コンサルティングに従事。2013年より「とびきり美味しい」をおすそ分けするサービス『YOU BOX』、世界中のばあちゃんのレシピ収集開始。2015年、『40creations』を立ち上げる。2017年『ばあちゃんの幸せレシピ』(木楽舎)出版。同時に作成した映像はyoutubeで150万回再生。2018年タイ人の仲間たちと自然派ワインやクラフト酒を輸入する『TASTE HUNTERS』を起業。タイの農家と共同でorganic coconut sugarの輸出事業『COCONUTS NAKAMURA』もスタート。

編集と料理
優さんが大学を出てまずしたことは、女性として楽しく生きる編集者と恵比寿の料理人の2人の元に弟子入りするという、いわばダブル弟子入りをします。
2人の元で弟子として編集と料理を行っていた優さんは、ある日、同棲していた彼氏と別れ、ホームレスになってしまいます。キャリーバッグ一つで知り合いの家を泊まり歩くこと2年、海外にもよく行っていた優さんは、せっかくだし美味しいもの、面白いものを集めようと思い立ちます。
そこで作ったのが、「YOU BOX」という、世界各地で優さんが出会った美味しいものと、生産者のストーリーをまとめた冊子を詰め合わせにして、送るサービス。
自分たちは菌が心地よい環境を作っただけだと話す醸造家が丹精込めてつくりあげられた、南仏のビネガー、植生も守るため山を買って育てられたスペインのチーズ、といったように、
「作り手自身も事業として始めたわけではなく、生き方として考え始めて始めたこと」
に、優さんはとても共感しました。働くことではなく、生きることとして続けられている営みに魅了されていきました。


日常のステキなシーンの共有
次に話してくださったのは、現在住むタイでの生活について。
移住のきっかけは特になく、付き合って1ヶ月で結婚し、半年たったころタイに移住したといいます。
タイでまず始めたのは、「TASTE HUNTERS」という事業。
優さんがタイに来て感じた、飲みたいお酒がない!という思いから、オーストリアなどの女性ワイナリーのワインなどのお酒を輸入し、タイの飲食店や酒屋にプレゼンをしながら販売を行っています。「もともとキャリーバッグ一つで生きてきたのに、管理も大変で大きなコンテナいっぱいのお酒を持つことになるなんて」と優さんは笑いながら話します。

また、賃金の差が激しいタイで、村人全員を雇ってココナッツシュガーを作ろうと意気込む30代の女性の農家に出会います。働く人全員が70代以上、作業は地味でカッコよくない、売れば売るほど赤字になる価格設定、そんな中私たちに何ができるか。そう考え始まったプロジェクトが「ココナッツナカムラ」
ココナッツをオーガニックに育てるため、ゴマ粒くらいの小さな虫を育てることから、取り組み、品質を安定させ、海外に販売していくプロジェクトを行っています。

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「しわ」を追い求めて
世界を飛び回り、泊まる場所すらその日に決めていた優さんには、顔を見てしまう癖があるといいます。日本人でも、外国人でも、いい笑顔をしてきた人は顔に現れるそうで、顔は信用できると優さんは話します。
なかでも優さんが好きなのは「しわ」。
世界各地の都市を見ていく中で、旅の途中のある日、突然世界が一緒に見えた優さん。なんてつまらない世界になってしまったんだ!
そう思った時、出会ったのは、99歳のおばあちゃん。人間ではないような神々しいたたずまいや、しっかりと刻まれたしわに魅せられた優さんは、「ババハント」と題して、世界中のおばあちゃんとおばあちゃんの作る独創的な料理に会いに行くことにしました。
スリランカでは、毎朝飲まれているという「緑のおかゆ」を探し歩きます。
そこで出会ったメッタさんというおばあちゃんは、作ってあげる!とマーケットにある緑屋さん(新鮮な薬草や野草、野菜など「緑」を売っている露店)に出かけます。一つ一つ効能がある草を、その日の体調に合わせてブレンドし、ココナッツミルクと合わせて作るおかゆ。体を冷やすので朝しか食べないそうで、そのオリジナリティに優さんは感銘を受けました。


見えないものを信じること
岐阜県では、お正月に向けてみがきニシンを使ったニシン寿司に出会います。雪深い地域では、おばあちゃんと神との距離が近いと語る優さん。
カッパをまるで人間界に居るかのように語る様子を見て、その見えないものを受け入れることで、雪深い過酷な状況下での生活を生き抜いているのだと感じ、世界がつまらなく感じるのは見えるものだけの世界で生きていたからだと気づいたといいます。
また、ポルトガルでカボチャのジャム作りを教わったおばあちゃんは、作り方のコツは右回しで回すことだと、話します。科学的根拠はまるでないのに、なぜか説得力があるのも、おばあちゃんがずっと作り続けてきたからこそ。


「平凡」の美しさ
長野で出会った99歳のおばあちゃんは、優さんにとってもとても印象的なおばあちゃんの一人でした。集中すると舌が出てしまったり、イケメン連れていくとテンションが上がってしまったりと、とてもおちゃめなおばあちゃんですが、「人生の中で一番楽しかったことは?」と聞くと、「いーっこもないわい」と一言。
また、悩みを相談した時には「人生の中で咲かない花もあるんじゃない?」と話してくれます。
その言葉から、おばあちゃんたちはとてもクリエイティブだけど、苦労も制約も多かった時代を生きてきて、見えないもの以外のこともあることを知っている。
だからこそ、人生という短い単位で何かやろうと思うのではなく、長い単位でみて、次の世代に続けていくことが大切だと優さんは語ってくれました。

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ライフヒストリーや気づきのシェア
次に参加者同士でグループをつくり、自身のライフヒストリーや、優さんのお話を通して得られた気づきを共有する対話ワークを行いました。

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参加者それぞれが今までの人生をグラフに書き起こし、自分がどんな人生を歩んできて、そこで得た気づきや教訓を紹介し合いました。
普段は3人1組で行うことの多いワークですが、今回は2人1組でじっくりとお互いの話を深めていきました。

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チェックアウト
最後は、チェックアウトとして、一人ひとり今日の感想を話しました。

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参加者の皆さんからは、優さんの行動力におどろいた、自分の感じていたモヤモヤが少し晴れたような気がする、といった感想が挙がりました。
最後には優さんの著した本とココナッツシュガーの販売もあり、見事に全部売り切れました。


総括
ババハントを通して、おばあちゃんたちの持つ強さや不思議な力に魅せられてきた優さん。
自分自身が動いているからこそ、ひとつの場所で何かをしている人に惹かれるし、あこがれもする。ひとつのところにいることは決して世界を狭めることではない、と力強く話します。

そんな優さんを講師にお呼びした今回のイベントは、自分らしく、自由に生きることの面白さや、新しい価値観が共有される機会になったのではないかと思います。

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(レポート:檜山諒 )


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