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【ジャーナル】こうち女性起業家応援家塾『SHE program』 第4回:「プログラム構築と見直し①(プランの見直し)~私らしい事業の作り方」


こうち女性起業家塾『SHE program』は、起業を考えている、新しい事業を始めてみたいなど、自分のプランを形にしていきたいという女性を対象に基本的な事業創造手法を学ぶ連続講座として実施しています。

第4回目のゲスト講師は、町田美紀さん(株式会社and. 取締役/デザイナー、hodoku代表)。
現在、複数の事業に関わっている町田さんに事業の作り方や必要な考え方や視点などについて、お話を聞かせていただきました。

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町田美紀さん(株式会社and. 取締役 デザイナー、hodoku代表)

1975年、高知市生まれ。制作会社数社を経て2001年、フリーランスデザイナーとして活動開始。2007年、一級建築士事務所 株式会社and.として法人化。
デザインを軸に、広告、飲食。様々な業界で企画立案や商品開発などに携わっている。デザインに携わるモットーは“現場に足を運ぶ”こと。2011年、高知にUターン。翌年、ひろめ市場にワインバル『BAR VALERIAN』をオープン。3年間運営したのち、自然派ワインに特化し移転リニューアル。
2013年、人と土地の力を掛け合わすことをコンセプトにした『SoulSoils』を立ち上げる。“つくる人”のアタッシェ・ドゥ・プレスとしてのクリエイティブオフィスを目指し『hodoku』をスタート。来年3月に45歳で『hodoku』を法人化予定。

自己紹介と取り組んでいる事業

18歳まで高知で過ごし、大学の進学とともに上京。
高知には絶対戻ってくる気はなかった、という町田さんでしたが、36歳のときにUターンしました。現在は、大学の同級生だった建築家の旦那さんと一緒に『株式会社and.』という会社を立ち上げ、建築や空間デザイン、プロジェクトデザイン、アートディレクションなどクリエイティブワークを中心に行っています。
また、来年45歳の年に初めて、自分が代表の会社を作る予定です。
仕事やプライベートのどちらとも言えない、交差した状態で数々のプロジェクトに着手し、今年で8年目。どんなことをされているのかを少しずつご紹介いただきました。

ワインバルの営業や、高知に帰るきっかけにもなった有機ショウガの農家さんとのブランド、高知ではなかなか無い少人数制の教室、クラシックバレエに関する事業、生産者の人たちを自分たちで取材し、文章や映像で伝えるメディアなど、その活動は多岐にわたります。


これまでの人生を振り返る

様々なプロジェクトを行ってきて、町田さんが感じていることは、発信力が弱いこと。それがなぜかと言うと、高知はPRの手段が限られているからです。
伝えたいそれぞれの年齢層への適当なメディアがないことを実感しています。このことを受けて、発信に関わることをトータルでサポートしていこう、と考えているそうです。

事業の紹介のあとは、「私、だんだん感覚が小学生の頃に戻ってきている気がして」と、人生グラフを使いながら、これまでのご自身のことを振り返ってくれました。
小学生の頃は、自分のことを優等生だと思っていた町田さんでしたが、中学校入学を期に全く勉強をしなくなりました。中高と部活以外は何も体験せず、そのまま大学へ。

男子校のような雰囲気で、気さくに接する友達と出会い、これまで頑張っていないといけない、という自分への思い込みがなくなり、肩の力が抜けたと話しました。
そこから、そのキャラに馴染んでいき、町田さん曰く「花が開いた感じ」になったと笑います。

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戻りたくない時期の出来事

大学時代はアイスホッケー部のマネージャーをしていた町田さん。
部活は深夜に及ぶほど。それに加えて課題も多く過酷な部分もありましたが、友達の協力もあって無事に卒業することができ、そのまま大学院に進学。この進学で「チームで仕事をする」という、今のスタイルの原点を体験します。

それは、卒業設計をしたとき。
本物の木を使って10人位で大きな模型を作るために、古い家に引っ越し、後輩に住み込みをしてもらいました。色んな班を作り、リストを作って管理する共同生活を通して、チームでやる楽しさを知ることが出来、また人は好きなことをやると活きる、ということを目の当たりにしました。

良い経験をしながらも、大学院は中退することに。
23歳で仕事として、大学院に通いながら北海道に行かされたという出来事が大きなきっかけでした。憧れの好きな建築を求めていたにも関わらず、仕事としての建築と現実のギャップに落ち込みました。
中学生のときから、「建築をやりたい」と出てきたのに帰れるわけがない、そう思った町田さんは、朝の6時から次の日の朝の6時までずっとバイトをする生活を何年か続けました。

しかし、ずっと働いているのに電気、ガス、水道が全て止まったときも。そんなときに食べていくためには、何をするかを考えた結果、すぐにお金になることしようと、その時代は初心者でもお金をいただいて教えてもらえる、インターネットの世界に飛び込んでいきました。


好きと向いているは違う

大学院の中退や、インターネットの世界に飛び込んだことを経験し、「好きと向いているは違う」と気づきました。
好きと思っていることが向いているとは限らないし、人から頼られることや感謝されることの方が向いているかもしれない、と言葉を続けます。
向いている、ということを考えずに足を踏み入れたインターネット業界でしたが、WEBサイトを作る仕事なども請け負うように。
26歳のときに独立、33歳、結婚する前に仕事が楽しすぎて、寝ずに仕事をしていると、倒れてしまったという大変な出来事も。
それでも出産できたことで、夜中にジャンクフードを食べている生活から一変、食に興味を持つようになりました。

帰らないと言っていた高知には、36歳のときにUターンし、うまく行かない現状に落ち込む日々が続きました。
東京の家も事務所も引き払い、帰ってきたもののつては無く、仕事もありません。人を雇ったり、色々なことを試したりしましたが失敗続き。
仕事を紹介してくれる人との出会いもあり、ようやく2年前くらいから昔の良い状態に近づいてきた、と話してくれました。


何事も考え方次第

町田さんが事業を考えるとき「考え方次第」だと思ったことがありました。それは高知に帰ってきたときに子育てで感じたこと。
都会に比べて高知には、保育園の環境や整備された広い公園がなく、今まで楽しんでいた環境が一切なくなったことに不満を抱えていました。

しかし、あれもない、これもない、と文句を言っても仕方がないので、「無いんだったら作れば良い」と切り替えることに。
こうしたことをひとつずつアイデアとして考えていくようになったのが、様々な事業を生み出すベースになったのです。
「これはいける、新しい」と自分が考えたアイデアでも、世の中には同じようなことを考えている人たちがいます。町田さんは他の人が似たようなことをどうやって動かし、どんな風に運営しているかをリサーチしたりもしています。

例えば、意外と周りがやらないのが、お店を出したいと思う場所に何回も通うこと。出したいと目をつけた場所には、朝昼晩、時間を変えて確認しているそうです。
大事な事業をする場所を決めるときも、住む家を探すときと同じように、何度も見に行く方が良い、と教えてくれました。


実現するとどうなるか

町田さんは事業を思いついたとき、「実現するとどうなるか」というのを超プラス思考で妄想しています。
このサービスや商品が世の中に生まれたらどうなるか、を具体的に考え、「こういうサービスがあったら、どう思う?」というのを人によく話しています。
賛同してくれる人ばかりではなく、「いつも言っていることが分からないけど、分からないってことは、新しいことをやろうとしているんだよね」と言ってくれる人もいて、そういう視点を大事にしている、と話します。
自分の視点ではなく、立場が違うサービスを受け取った側の人に置き換えて考えることもしています。

頭で妄想したら、小さく始める。
失敗しても小さくリカバーできることがメリットです。反対意見は傷つくこともありますが、意外とヒントも多い、と感じています。
スムーズにうまく行くことの方が怖いので、3年は続けてみる、というのを実践しているそうです。
その理由は、家庭や子育て、自分のことなど色んなバランスを崩さないようにするには、3年はかかる、と実感しているからです。


町田さんなりのルール

5年、10年、誰のために、何のために、なぜやるのか。
これは町田さんが大事にしている考え方のひとつです。事業の企画書を作るのが好きなこともあり、その度に初心に戻れると言います。
そして、作った事業を広げるのか、細々とやっていくのかを決めていきます。

東京にいるときは、営業もせず口コミだけで十分、分かってくれる人だけ分かってくれれば良い、というスタンスでした。
ですが、高知に帰ってきたときに何とかしないと、と思う中で、一人でやれることには限度がある、と痛感しました。

人の役に立つためには、共感してもらい人を巻き込まないといけない。皆の力で生み出す、ということがしたい、決定権を下せる立場になりたいと思いました。苦労や苦悩は沢山あるだろうけど、自分が立ち上げた事業で食べていけるのは面白い、と町田さんは笑います。
また、自己管理しながら、事業を実現していけるライフスタイルを手に入れられると思ったら頑張れる、と来年、自分の会社を起業する経緯を話してくれました。

その他にも「バランスの取り方が上手になるコツを持っていると良いのでは」という言葉や、「人の時間を取るのは命をいただくようなもの。大事な時間を使ってもらうために、3年ごとや10年ごとに一回相談しに行く人を決めている」という町田さんならではのルールについてもお話ししてくれました。


サービス化したいこと

町田さんの会社は、正社員以外のスタッフが20人ほどいます。レシピ開発やモデル、リサーチ、書類作成などをしたことが無い人にお願いし、仕事にしてもらうことを試しています。

大変なこともありましたが、子育て中で社会と接点を持ちたい人たちと、お互いにやりやすい方法を1つずつ見つけながら、専門的な仕事や素質がありそうな仕事をやってもらっています。
そこには、それぞれの個性を活かしながら、楽しみながら働いてもらいたい、と町田さんの思いがこもっています。

将来的には、自分の会社だけでなく、小さな仕事を掛け合わせて週3日でも1日と同じくらい稼げる仕事を増やすことを構想しています。
こうしたコミュニティをつないでいくと、複数の企業で人材をシェアできるのでは、と考えています。
移住の人の仕事の幅も広がり、子どもがいる方もゆとりを持って仕事ができる、そんな仕組みを来年にはサービス化したい、と最後に今後の構想を語ってくれました。

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対話の時間
今回は、講師の町田さんに加え、メンターとしてお越しいただいた、大美光代さん(特定非営利活動法人 わがこと 代表)のお2人を加え、2グループに分かれてもらいました。その後、受講生のプランを共有し悩みごとや行き詰っていること、聞いてほしいことなどを相談しました。

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町田さんも大美さんも、受講生たちの言葉にしっかりと耳を傾け「どういう人を幸せにしたいと思う?」や「それ、すごく良いからやってみたら良いんじゃない」、「私はこういう風に思ったけど、どう?」という風に、的確なアドバイスをくれたり、迷っている人の背中を押すような言葉をかけてくれたりしていました。
場は大変盛り上がり、時間いっぱいまで話が尽きない様子でした。

チェックアウト
最後は、町田さんのお話を聞いた感想や、対話の時間で気づいたことなどが挙げられました。

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総括
 今回は、ゲスト講師とメンターという2名の先輩起業家がいたこともあり、受講生にとっては、様々な視点の意見をもらえた有意義な時間になったのではないかと思います。また受講生同士もお互いのプランについて、積極的に意見や考えを述べる場面も見られ、回を増すごとに交流が深まっていることが伝わってきました。


(レポート:上野 伊代)


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