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【レポート】保育士が作り出すソーシャルデザイン ~こうち女性起業家応援プロジェクト連続セミナー #10


「こうち女性起業家応援プロジェクト」は、起業や育児休業後の職場復帰や再就職、移住後のキャリアチェンジ、そして、キャリアアップを目指す女性を幅広く支援するという想いから、各分野で活躍する起業家をゲストに迎えたセミナーや、生活目線から考える事業アイデアの創造に向けた学びの機会を提供し、高知の女性が自分事として取り組むことのできる新たなチャレンジを後押しすることを目指し、開催しております。

第十回目は小笠原 舞さん(保育士起業家)。
会社員を経験してから保育士になった小笠原さんにとって、保育士という仕事は、単なる「保育園で働く人」ではなく、多くの可能性を秘めた仕事でした。起業をし、「新しい保育士の働き方を追求したい」という想いを実現するために、常に新しいチャレンジを続けています。そんな小笠原さんが、いまの働き方を選んだ理由や保育士という仕事への想いを参加者の皆さんとともに共有し、「新しい働き方」を考えていきました。

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小笠原舞氏(保育士起業家)

合同会社こどもみらい探求社共同代表/ asobi基地代表
法政大学現代福祉学部現代福祉学科卒業。子育ての現場と社会を結びながら、子どもに関わる課題の解決や子どもにとって本当にいい社会づくりを目指して、2012年には子育てコミュニティ「asobi基地」、2013年には「こどもみらい探求社」を設立。著書「いい親よりも大切なこと〜こどものために”しなくていいこと”こんなにあった〜」、写真集「70センチの目線」

保育士になった!けど…
小笠原さんは、小学4年生の時、生まれつきハンデのある子に出会います。冷たい目線を感じたり、聞こえてくる言葉を聞き、言語化できない違和感を覚えます。また、幼少期から家族で海外に行っていた経験などもあり、いつしか世の中にあふれる「違い」に敏感になった小笠原さんは、様々な違いを持つ人がよりよく生きる社会をつくりたいと思い、福祉の世界に興味を持ちます。
しかし大学卒業後はすぐに保育士にはならず、ベンチャー企業で2年の社会人経験を積みます。その後、ひょんなことから新規園のオープニングスタッフとしてのお話をいただき、保育士として働き始めまたのでした(保育士資格は20歳の時に独学で取得)。
しかし、2年目になるとこどもを取り巻く社会課題が保育園だけでは解決できないということに気づき、胸を痛めます。
また他にも、
「人間はもともと差別なんかしないのに、どこでそうなってしまうんだろう?」
「ものにあふれた社会で、生きる力ってどうやってつけるんだろう?」ということも考えました。
「子どもたちにとって、“本当に良い環境”って、何だろう?」
という問いを投げ続け、社会を作っている人たちと一緒に考えることができたのならば、子どもを取り巻く環境は変わるのではないか…?
そう考えた小笠原さんは、保育園を飛び出し、保育士としてこれまでたくさんの子どもと出会ってきた経験を活かした活動を始めます。


“あったら良いな”を形にできるプラットフォーム
2012年、まず小笠原さんは「asobi基地」という学区を超えた子育てコミュニティを作ります。
共感者が増え、今では東京・神奈川・埼玉・石巻・愛知・新潟・大阪・海士町など全国に支部があります。基地では、「4つのルール」という共通ルールがあるのみで、統一してやることが決まっているのではなく、「やりたい人がやりたいことをやる」という、“あったら良いな”を形にできる仕組みがとられています。つまり、地域ごとに自走するプラットフォームになっています。
4つのルールには、大人も子どもも平等であることや、否定の言葉は言い換える、こどもの目線になってみるなど、子どもたちにとって良い環境を目指すためのものであり、小笠原さんの考える、子どもたちにとっての良い環境作りに対する強い気持ちが表れています。

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“こども×○○”というコラボレーションで、よりよい社会を作る
そして、2013年にはもう1名の保育士である小竹めぐみとともに、合同会社こどもみらい探求究社を立ち上げます。こうして、企業や行政とのコラボレーションを通して、こどもたちにとってよい社会づくりを具体的にはじめました。
0歳〜2歳の親子が通う10回シリーズの習いごと「おやこ保育園」や、オンラインで育児について語り合える「ほうかご保育園」など時代のニーズを汲み取りながら、自主事業も生み出していきました。会社の他にも、街中で何か気付いた保育士がアクションをしやすいようにと考案した「保育マーク」の普及活動などを行っています。このように様々な角度から保育士起業家として、「子どもの環境づくり」を行っています。

自分たちの伝えたいことがたとえ1%だとしても、伝える機会がもらえるのならやる、と話す小笠原さん。例えば、学生のキャリア学習として、就職面だけではなく親の話を聞いたり子どもと関わる経験をしてもらう。小売店の店舗を使い、子どもの販売体験の機会を作るなど、相手のニーズにあわせながらも、自分たちの思いを入れ込みながら柔軟に想いを広げています。

「なにかとかけ合わせれば、保育ってなんでもできる」

この言葉からも分かるように、自分のできる「子ども」のことを誰かのプロジェクトと掛け算をすることで、やれることはどんどん増えていき、自分の想いも広がっていくことを実感したといいます。

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神戸での暮らし
半年ほど前に出産したばかりの小笠原さん。「子育てするならここだ!」と直感で感じ、2016年4月から神戸に住んでいます。
子どもも大人も暮らしやすい街になるための実証実験を、自分の住む地域で行っています。
神戸で感じた心地の良い余白や感銘を受けたことなど、自分が暮らしている中で見つけた課題や感動を保育士の目線で解決し、発信していきたいと話す、小笠原さん。
そのために、自分がやることを決め切らず、地域の人と関わる中ですくい取った気持ちやニーズを見るように心がけているといいます。


やりたいことを続けるには
最後に小笠原さんは、これから自身の「やりたい」を実現しようとしている、参加者の皆さんに対して、続けるためのヒントを話してくださいました。
小笠原さん自身も、やめたくなったことがあったそうですが、これまで続けてこられたのは、初めから100%を目指してやろうとしないことと仲間と一緒にやってきたことが、大きかったそうです。
そして、小笠原さんは、「変化を楽しむことも重要」だといいます。自分の軸を一つ持っておき、やりながら変化させられるようにしておくと、等身大で持続する活動になると教えてくれました。

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ライフヒストリーや気づきのシェア
次に参加者2人1組のグループをつくり、自身のライフヒストリーや、小笠原さんのお話を通して得られた気づきを共有する対話ワークを行いました。

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参加者それぞれが今までの人生をグラフに書き起こし、自分がどんな人生を歩んできて、そこで得た気づきや教訓を紹介し合い、また、小笠原さんの話を聞いて、共感できた部分、気づきが得られた点についても参加者同士で共有を行いました。

チェックアウト
最後は、チェックアウトとして、一人ひとり今日の感想を話しました。

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参加者からは「焦っていたけど急がなくてもいいんだという安心感をもらえた」「もう一度自分のやりたいことを見直すきっかけになった」「もっと幅広い考え方で、子どもたちを育てていきたい」など、自分自身や、子育てについての考え方が変わった方が多くいました。

総括
小笠原さんは、「子どもたちにとっての本当に良い環境」を追い求めて、子どもだけでなく、親やその周りにも目を向けて活動をしてきました。そんな小笠原さんの熱意を感じ取った参加者の皆さんから、新しいことを始めるうえでの不安など、チェックアウトの際には多くの質問が集まり、それに対して小笠原さんは丁寧に答えてくださいました。また、今日のイベントの参加に戸惑いがあった方も、帰りには来て良かったと目を輝かせて話されていた様子は、とても印象的で、今回のイベントは、参加者の皆さんにとって、変化を楽しむ良い機会になったのではないかと思います。

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(レポート:檜山諒)


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事務局:エイチタス株式会社 高知支社
住所:〒781-0084 高知県高知市南御座90-1高知 蔦屋書店3F
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Webサイト:http://startup-base.jp/

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