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有り難さと 申し訳なさと 恥ずかしさと

先日子どもたちが習い事に行き、帰りのバスに兄弟2人仲良く各々のICカードを車内に置き忘れてくるという事件が起きた。そもそも、リールやコイルチェーン付きのパスケースを持たせていればこんなことにはならなかったのだが、以前コイルチェーン付きのパスケースを壊して中のカードを落とした経験があり、現在は本人たちが選んだ目立つ小物入れをパスケースとして愛用させていた。「乗る時にピッとしたらすぐにバッグにしまおう」というルールにしていたが、いやはや甘かった。子ども任せにしてはいけなかった。起こってみてからふと気付く、これまで失くさなかった奇跡の偉大さよ。

ふ、2人ともだと!?と衝撃を拭えないまま都バスの営業所に問い合わせる。見つかり次第電話連絡をいただけるという流れになったが、つまるところ、電話が来ない=見つかっていないというわけだ。待つしかないとわかっていてもジリジリそわそわ落ち着かないものである。もしかすると電話番号の1桁が間違って伝わっていて、電話が繋がらなくて困っているかもしれない…などと勝手な妄想を膨らませ、居ても立っても居られず1時間後に再び問い合わせる。しかしやはり答えは変わらず「見つかり次第ご連絡差し上げますね」と優しくご対応いただく。しつこくてごめんなさいである。その後もモヤモヤしながら不覚にも寝落ちして目覚めた早朝、スマホの着信履歴には、昨晩のうちに都バスの営業所から4回もの着信が入っているではないか。二度も問い合わせてくる程心配しているなら早く知らせてやろうと何度も電話をかけてくれたに違いない。寝落ちしてごめんなさいである。

着信があったということは見つかった!と心躍るも、見つかったのが1つなのか2つなのか話を聞くまでは見えず、安心するのはまだ早い。朝8時を過ぎて電話をかけるも何度か通話中。その後、電話が繋がり無事に2つとも見つかったことを知らせていただいた時、肩の力がプシューっと抜けていく音を聞いた。その日のうちに2人を連れて営業所に受け取りに行ってきた。電話口も営業所内も、対応してくれた都バスの方々の優しいこと。こちらが迷惑をかけたにも関わらず、営業所では息子2人に都バスグッズが入ったバッグをいただいた。優しさが身に沁みる帰り道になった。めでたしめでたし。
というハッピーエンドで終えたかった。

ところがその翌週、事件は再度起きた。即リターンズである。
またもバスに起き忘れたと言う息子からの電話を受けて、ワナワナと震える。電話の向こう側では「またママが鬼になっちゃうよ!」と兄を心配する弟。私の中では、怒りよりも反省が幅を利かせていた。再発防止策を講じてやらなかった私が悪い。怒れやしないよ…
2週連続のやらかしとなると、流石に都バスの方々に申し訳ないやら恥ずかしいやら。グッズ欲しさでまたやったと思われやしないかなどと要らぬ邪念すらも頭を巡るが、まずは電話をかけろ。
降りたのが終点だったことと、なくした直後に問い合わせたことが功を奏し、今回はすぐに折り返しの電話をいただいた。当日であれば営業所ではなく駅で受け取れるというお話で、夕飯の準備を投げ出しいざ出発。習い事終わりの息子に無事に渡すことができた。夕飯前から有り難さと、申し訳なさと、恥ずかしさでお腹いっぱいである。

今回の一件いや二件において声を大にして言いたいのは、問い合わせた電話口・取りに伺った営業所・駅の都バス窓口、登場人物の都バスの方々のホスピタリティの高さ、温かさである。なくしたことで困っている人間への心遣いが行き届いていて、不安を最小限にしていただいたと感じている。その節は本当にお世話になりありがとうございました。これからは耐久性のある伸びるパスケースに替えて、万全の体制で乗車させることをここに誓います(はじめからやっておけ)。

以来、都バスを見かけるとスッと背筋が伸びる。

【 唐突に豆知識 】
都バスのキャラクターみんくるは、平成11年に都バスが75周年を迎えた際に一般公募で選ばれた。デザインは、都バスのフロントをデフォルメしてそこに東京都の頭文字「T」がデザインされている。ネーミングは「みんなのくるま」「都民のくるま」を縮めたもの。誕生日や性別、家族構成、大きさ重さ、出身地は謎に包まれている。


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