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ジャパンカップの前に、東京競馬場の馬場について。エクイターフとは?

えーと、至極当然、いまさら何言ってんだこいつ?みたいな基本的な事をドヤりながら書いていまーす(( ̄∇ ̄)v ドヤ)

野芝と洋芝

なぜ日本と欧州で芝の種類が違うのかといえば一番の原因は気候の違い。

芝生の生育には温度が密接に関係します。

日本の夏の気温が高いときは、夏芝(暖地型芝)の根っこの生育が旺盛であるのに対し、冬芝(寒地型芝)は鈍化します

根っこが最も生育するときはは夏芝が地温が摂氏24~29度くらい、冬芝は地温が摂氏10~18度くらい

日本の主要競馬場で使用されている野芝は夏芝で日本の4月~10月にかけて緑色を保ち、それ以外の季節では地上部が茶色くなり、根や茎の形で休眠します。
平均気温12度が新芽成長と休眠の目安平均気温が25度以上になると最も旺盛に成長します。
夏の期間の競馬場が野芝オンリーなのはそのためです。

一方で北海道の競馬場で使われているのはケンタッキーブルーグラス・トールフェスク・ペレニアルライグラスは冬芝で日本の10月~7月の冬の間も緑色を保ちます。
種が発芽するのに平均気温15度以上が必要平均気温が10度以下になると成長がほぼ止まります。
さらに平均気温が25度以上になると枯れ始めるのです。

東京競馬場でも季節によって芝の種類が微妙に違うという事です。


このグラフのようにダービーなどの春のGⅠが行われるのは冬芝も元気で野芝も気温の上昇とともに成長していく芝がとても元気な季節。
葉っぱも地下の茎も元気いっぱいで強く柔軟性に優れた馬場です。

しかも、日本独自のエクイターフは『1m2あたりの茎の密度や地下部分の重量などは従来の芝生から見て2倍』に強化された、えぐれにくく、なおかつ成長が早く、クッション性に優れた芝生です。

このクッション性に優れた馬場を活かして速く走れる馬が春の東京競馬場で活躍します。
5月の東京競馬場の良馬場の馬の走り方を見れば跳ねるように走る馬が多いのが見てわかるでしょう。
冬の有馬記念辺りの中山競馬場での馬の走り方と違うのも映像を見ればお解りいただけると思います。

欧州の平均気温は日本よりも低いので洋芝なのです。
東京の平均気温で10度を超えるのは3月~11月。
イギリスで平均気温が10度を超えるのは5~10月。
7月でさえ15度。
パリも10度を超えるのは4月から10月で7,8月が20度。

東京の5,6月の平均気温は19~23度でパリの夏よりも高いのです。
東京の11月は平均気温12~14度で欧州の競馬シーズンの気温と似ています

つまり、最近は3着以内に入っていませんが、春の東京よりは秋の東京の方が欧州馬にとっては走りやすい馬場なんです。

エクイターフでの走りとは

エクイターフの走りを説明するのにちょうどいい例がありました。

陸上のカーボンシューズです。

カーボンシューズ、又は厚底シューズという名前で知られる靴は日本の駅伝やマラソンに革命をもたらしました。

シューズミッドソール内にカーボンプレートが埋め込まれた厚底シューズは、着地時のカーボンの跳ね返りによって前方への推進力を生み出しています。
この推進力により、1歩あたりのストライドを伸ばしてタイム短縮につなげる構造です。
詳しくはこちらのサイトをご覧ください。

これと似たような事がエクイターフに言えます。
着地時の馬場の跳ね返りによって前方への推進力を生み出しています。
この推進力により、1歩あたりのストライドを伸ばしてタイム短縮につなげる構造です

ストライドを伸ばすには馬自身が出力(地面の蹴り出し)を大きくする必要がありました。
しかし、エクイターフは同じ出力でも、クッションの作用でストライドが伸びる可能性があります

一連のランニング動作で発生する最も大きなエネルギーは、着地時に起きる重力エネルギーです。
エクイターフは、そのエネルギーを高いクッション性で前方への推進力に変換します。
これが、エクイターフが作り出した日本ならではのトランポリン高速馬場です。

厚底シューズによるケガの変化もエクイターフの特徴をとらえています。

こちらの記事によると、

『青学大の原晋監督は、「今までは 下腿部のケガが多かったが、最近は厚底の影響で、でん部回りの故障が増えている」と話す。今回の箱根出場校の中でも、大腿骨や股関節周辺のケガに苦しむ選手が多く見られた』
と、あります。

股関節周辺のケガが増えたのは一歩当たりのストライドが伸びたからです。

一歩が大きくなるので以前よりも股関節の可動域が大きくなります。
以前、高速馬場を体験するのに下り坂を走ればいいと桜花賞辺りで書いたと思うのですが、下り坂を思いっきり走ると一歩一歩がかなり大きくなって股関節が大きく広がりませんか?
あれと同じ事がエクイターフの馬場や厚底シューズで起きているのです。

そして、日本の高速馬場でとても強いのがディープインパクト系ですよね。
ディープインパクト系の特徴は『四肢の可動域が広い』という事です。
仏オークスとナッソーSを勝ったファンシーブルー(父ディープインパクト)を手掛けたドナカ・オブライエン師は
ディープインパクト産駒は脚が高く上がる』と評価していたのも裏付けます。

エクイターフの高速馬場ではその高いクッション性により馬のストライドが大きくなる、そして馬体構造で四肢が伸びる馬は高速馬場で力を発揮できる。

早大スポーツ科学学術院の鳥居 俊教授はこう述べています。
厚底はレース後半になっても脚が止まらず走れる傾向があるが、筋肉が疲労して支えが弱くなると骨がぐらつき、大腿骨と骨盤が衝突を起こす。骨盤のズレも誘発し、仙骨などの骨折も生じているのでは」

これも高速馬場に共通しますよね?
『高速馬場はレース後半になっても脚が止まらず走れる傾向がある』
春の東京でマイル戦ではスプリント適性が重要なのはよく言われること。
ダービーでも本来の距離適性が足りなくても走れてしまうのは馬場のクッション性を使ってスピードを出しているからです。

しかし、すべての馬がエクイターフのクッションをうまく使って走れるとは限らないのです。

中央学院大学 陸上部監督の川崎勇二さんはこうおっしゃっています
「足を地面に叩いとけば前に進みますので、その靴をうまく使える子たちは、本当に最後までもってますよね」 「靴に走らされてます」

競馬で言えば、
『足を地面に叩いとけば前に進みますので、エクイターフをうまく使える馬たちは、本当に最後までもってますよね」 「馬場に走らされてます」』

春の東京では走るのに海外に行くと結果が出ない馬がいますよね?
高速馬場の力を利用してスピードを出しているのでそのクッション性というか反発力がない馬場では力を出せないのです。

欧州では馬自身が出力(地面の蹴り出し)を大きくする事に力を注いでいます。
なので馬によってはエクイターフの地面からの反動をうまく使いこなせない場合もあります。

欧州の馬で注目したいのは、走り方で大きなストライドをしているか、エプソムやグッドウッドの下り坂で速い上がりを出しているか、平坦のヨークやドーヴィル、米、豪、ドバイ、香港での走りはどうか、といったところ。

ディアドラがナッソーSを勝ったのも最後の直線が下り坂のグッドウッドで日本仕込みの大きなストライドが活かされたのだと思います。

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