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JRAは一般向けにレース中の事故の統計を出すべき

斤量増を競走馬の事故に結びつける記事が出るとは思ったが…

今年からJRAの負担重量が約1キロ増えたのは競馬をやっている皆さんならご存じでしょう。
この斤量増はJRAによると、「騎手の健康と福祉および将来にわたる騎手の優秀な人材確保の観点」。

簡単に言っちゃえば減量による騎手の体の負担をへらして健康になろうねってことでしょうか。
そして、この斤量増を高速馬場と合わせて競走馬の事故に結びつける方がいらっしゃるだろうとは思いましたが…

中日スポーツ新聞の米内宏一郎記者がそんなような記事を書きました。

今までも高速馬場は危険みたいな記事が時々出ましたが、共通しているのは『しっかりとしたデータやエビデンスを記事で提示しない』

今回の記事も同様で日本の競走馬の予後不良率や高速馬場での骨折数などの数字は全くない。
根拠となるのは米内記者の感情に任せた裏付けのない不安な心。

米内記者曰く、
『世界基準に合わせるという観点では問題ないのだが、日本の競馬場は世界の競馬場と比べて馬場が硬くて時計が速いそんな馬場で負担重量を引き上げれば馬の故障が多発し、さらにレース中の故障であれば落馬を誘発して騎手がけがをしてしまう危険性が増すのではないかと、考えてしまう

この記者は去年時点での日本と外国の競馬場での死亡事故数の違いを少しは調べたのだろうか?
いや、そんな面倒なことはしていないと断言したいくらいに無知をさらけ出している記事だ。

よねうち君(6歳)『ぼくは おうまさんが おもいものをせおって はやくはしると あぶないとおもいます』
せんせい『はい、よねうち君はお馬さんが好きなのねー。よく言えましたー』

こんな記者が競馬に関してスポーツ新聞紙に記事を載せていると思うと頭が痛くなってくる。

お金をもらっているプロの記者なら、
高速馬場前後の日本の芝レースでの致死率。
スピードと斤量と骨折の因果関係。
日本と他の国の致死率の比較。
これらの具体的な数字やエビデンスをあげて記事を書くべきだろう?

良くわからないと言う方はとりあえず下の記事を読んでほしい。

『高速馬場は危ない…かもしれない』と不安になってしまうのはこの記者だけの問題ではない。
JRAがキチンと競走馬の致死率などのデータを誰にも見えるように公表していないのも問題だ。
香港イギリスアメリカオーストラリアは比較的簡単に見つかる。
しかし、JRAの統計データはどこに?

海外の競走馬の事故データ


下の『タイトル未設定』になったリンク先のタイトルは2019年11月の記事で
『Comparing Equine Injury Rates Suggests U.S. Can Improve(馬の負傷率の比較からアメリカはこの問題を改善できる)』

この記事を見て行こう

競走中の馬の死亡率は、アメリカがイギリスや日本よりも高く、香港よりはるかに高い。
香港の死亡率は、これら 4 つの国の中で圧倒的に低い。

芝のレースを見てみると、アメリカの数字は日本に近くなるが、2014~2018年のアメリカの致死率は出走1000回で1.31。
イギリスの0.76や日本の1.12よりも高い

2014~2018年の日本の砂ダートの致死率1.13でアメリカの1.82よりもかなり低い

オールウェザーではアメリカとイギリスの数字はほとんど同じ。

アメリカでも致死率は低下していますがまだまだ改善の余地があると記事では締めくくってる。

イギリスの致死率

https://www.britishhorseracing.com/regulation/making-horseracing-safer/

イギリスもキチンと死亡事故の統計を取って公表しています。
上のBHA(英国競馬当局)のサイトでは死亡事故の統計と安全なレースのためのBHAの取り組みなどが記されています。

この他にも動物愛護団体による競走馬の死亡事故に関するまとめがあるなど、競馬関係者、一般人の全体として意識の高さを感じます。

香港とアメリカの一部の競馬場のデータは下のサイトから見られる。

日本は?

それに対して日本はJRAの「今日の出来事」に「競走中止」が載るくらいで統計はどこにあるのでしょうか?


亡くなった競走馬の法要は行われるようですが、下のPDFでは馬の名前と年齢だけで死亡原因まではわかりません。

上のBlood Horseの記事で日本のデータを使用しているのでどこかにはあるはず。

今回見つけたのはこちら

第 61 回 競走馬に関する調査研究発表会』で検索すればPDFファイルが出てきます。

この中に、
『JRA平地競走における致死性筋骨格系疾患のリスク要因について』
というレポートがありました。

2003~2017 年の平地競走出走馬 715,210 頭の中から、競走中に筋骨格系疾患を発症し、安楽死となった馬は997頭。
全体の発症率は 1.39/1000
5 年ごとの全体の発症率は
2003-2007年: 1.53/1,000,
2008-2012 年: 1.51/1,000,
2013-2017 年: 1.14/1,000
と減少傾向を示しており、芝、ダート共に同様の傾向であった。

芝で有意となった項目は、競走距離(200 m 延長するごとにオッズ比1.1倍)、所属トレーニング・センター(栗東, その他<美浦)、競走条件(1-3勝クラス<新馬・未勝利, オープン)、年齢(5歳以上で多い)、馬体重(20 kg増加するごとにオッズ比1.1倍)、開催年度(近5年が最小)、馬場状態(良が最多)。

つまり、競争距離が長いオープンクラスの良馬場のレースで美浦所属の馬体重が重い5歳以上の馬が最もレース中の事故で死ぬ可能性が高いという事だ。

ダートで有意となった項目は、所属トレーニング・センター(栗東<美浦、その他)、競走条件(1-3 勝クラス、オープン<新馬・未勝利)、馬場状態(不良が最多)、馬体重(20 kg増加するごとにオッズ比1.1倍)、騎手減量の有無(無<有)、開催年度(近5年が最少)、季節(春が最多)

芝でもダートでも栗東より美浦所属の馬の方が致死率が高いのはなぜなのだろうか?
こういう点を記者に切り込んでもらいたいものだ。


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