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東京プリンセスカップ準々決勝 - 上福ゆきvs渡辺未詩

(画像は https://twitter.com/tjpw2013/status/1685231236909080576 より。)

東京女子プロレスの東京プリンセスカップ準々決勝をWRESTLE UNIVERSEで見る。4試合どれも良かったが、圧倒的に上福ゆき選手と渡辺未詩選手の対決がよかった。

最近の上福ゆき選手は、印象に残る試合が多くあるもベルト戦線に絡むことはなく、東京女子の中でも主役級の人物ではなかった。しかし1回戦の角田奈穂戦で見せたバチバチの戦いを経て、とうとう本人のビジョンと関係なく、東京女子のトップに食い込んでいくような勢いを感じた。

そんななかで次戦の相手は渡辺未詩という、近年の東京女子プロレスでもっとも期待されている選手の一人であり、昨年の東京プリンセスカップ準優勝者、キャラクターやスタイルのまったく違うプロレスラーが相手になった。

渡辺未詩選手がおそらく勝つだろうと感じる人が多い中で、どんな戦いになるかがとても楽しみだった。

前哨戦

「(未詩は)道場で住んでんのかな? なら私は練習しない」「私もあなたの頃は鍛えてたよ...クエルボでね!」「練習はポメラニアンスクワット」と、試合前から上福ゆき選手の揺さぶりは素晴らしかった。

そして、それに対する渡辺未詩選手の返答もとても良い。わざと対抗しているのではなく、本当に感情が乗っているセリフだったと思う。

試合

そんなわけでこの試合は、東京女子プロレスとしてはかなり珍しいイデオロギー闘争のような様相を呈していて、試合の流れも主導する側によって色が大きく変わった。

ダーティーファイト寄りの上福に対し、表情は完全に怒りを表しつつもその一つ一つをパワーでなぎ倒していく未詩。それをクールにやりすごしながら、上福は徹底的にリング外で未詩を痛めつける。しかしリング上での力比べはやはり未詩が上だ。未詩のバッティングハンマーが何発か決まる頃、モメンタムは未詩に流れ始めていたように見えた。

しかしここから上福の執念が強くなっていく。ビッグブーツで未詩をコーナーに叩きつけると、そのまま頭部を蹴り続けてリング外に落とす。お互いにトップコーナーまで登ると、上福はエルボーのフェイントからのサミングを見舞い、そして雪崩式のブレーンバスターで流れを戻した。

試合はどちらがフェイバリットを決めるかに懸かってきた。先に動いたのは上福だ。フェイマサーを繰り出そうと自身の腿を未詩の後頭部に勢いよく乗せた瞬間、未詩はそれを持ち上げて切り替えそうとする。しかし上福はさらに回転エビ固めでフォール......がこれはカウントツー

起き上がった未詩はレーザービームでダメージを与えるとティアドロップの体勢に入るが、今度は上福が切り返しショートレンジのフェイマサー。そのままロープの反動をつけた正調式のフェイマサーでとうとうスリーカウントを奪った。

感想

渡辺未詩選手が「観るたびに驚きを与えてくれる選手」だとすれば、上福ゆき選手は「観るたびに魅力が増える選手」だ。

はじめて観たときは「美人レスラー」とか「クールビューティー」みたいな簡単なタグでしかくくれなかったが、どの試合も大小問わずテーマがあり、その中で本人のユーモアやオリジナリティが必ず見られることに気づくと、どの試合も面白くなってきた。

そんな感じで「面白かった試合」はこれまでもたくさん観れていたのだが、あらためて、近年はタイトルマッチや公式戦での活躍はなかった。そんな中でこの東京プリンセスカップで、とうとう上福ゆき選手の逆襲というか、持っていたポテンシャルと独自の練習量(練習しない量)が爆発するのではないかと感じ、それ以上にファンが期待してしまっている。

個人的には、雪崩式ブレーンバスターのすぐあとに出したチョップがとても驚いた。未詩選手の受けも素晴らしいが(受けたあとの表情が本当に良い)、上福選手がこんな真っ向勝負の戦い方もするなんて知らなかった。

準決勝の辰巳リカ戦も、確実に「辰巳リカが勝って(さらにもう一方は山下美優が勝って)〜」という予想が大きいだろう。しかしこの試合を見た人は、そんな簡単な予想はもうできない。8.13の決勝のリング上で最後に立っている光景すら想像したくなる、そんな試合でした。


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