お盆休みに読書

今村翔吾さん「童の神」読了。

簡単に説明すれば酒呑童子の一生が描かれている。

日本人が知っている大江山の鬼退治とは違います。物語は京(朝廷)から差別視(時として征伐対象)される周辺の人々の「普通に生きている同じ人なのに何故奪われ虐げられるのか」といった想いが多くの争いを生んでいき、クライマックスの大江山合戦に集約されます。もちろん酒呑童子も鬼ではなく偏見の目で見られて生きてきた独りの人間です。

安倍晴明に始まり、源満仲・頼光親子に四天王の渡辺綱、坂田金時(息子にあの金太郎)、碓井貞光、卜部季武。藤原氏(道長など)が当然出てきますが、作中では晴明以外は全部敵方。満仲・頼光親子も汚い手を使いまくります。四天王の綱と金時だけは理解を示すが、この時代の侍は朝廷からの命令を遂行するのが絶対の務めで悩みます。京の中の貴族にも差別される側を助けたい人が出てきますが権力に排除されてしまう。同じ人として扱ってくれれば、その思いは何度も裏切られる。当然読んでいれば反抗する人たちに感情移入、源頼光なんてコノヤローって思っちゃいます。

日本の地域差別みたいなものの起源は分からないが、大陸文化が入ってきた中での中華思想(中央に住んでいるお偉いさんが貴くて四方に住んでいる奴らは野蛮な奴らだ)も大きいのだろうか?「南蛮」という言葉は南方に住んでる人たちへの蔑称。「夷」「蝦夷」「熊襲」なんかがそうだろうし、関東武士を坂東夷(荒夷)とか呼んでる。歴史に出てくる「土蜘蛛」「鬼」なども一部の地域に住んで反抗的な人々の総称で権力側から見た侮蔑の言葉ではないでしょうか

「童」(わらわ、わらべ)の言葉には奴、従わせる身分の人といった意味にもとられると知ってびっくり、滅多には、いや今ではまず使わない。

ちょっと話が重くなってきたが、本作面白かった。おススメです。

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