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天国の妻が支えたトマトづくりの実際

 トマトづくりはわたしの健康法にして、長寿の秘訣である。畑で土にふれることは、大地からエネルギーをいただいているという謙虚な気持ちになれるし、また新鮮な空気の中で作業をしているとすがすがしくもなる。もちろん体を動かすわけだから、体力づくりにもあるだろう。だが、そもそもの最初からトマトづくりを健康法だと思ってスタートさせたわけではなかった。

 妻は逝ってしまったが、生前、便秘に悩まされていた。トマトが便通に良いと聞き、家庭菜園でトマト栽培を思い立ったのが契機となっている。はじめてからもうかれこれ六年は経過するだろうか。失敗もしたし、いろいろ試行錯誤も繰り返した。これに点数を与えるとしたら120点は与えても良いと自負している。それだけ努力をしてきたし、運にも恵まれたと思っている。

 しかし、この120点は一昨年までの話だ。今年はまだ一月に入ったばかりで準備をすすめている段階だが、去年は二度の豪雨や猛暑に襲われ、全部枯らしてしまった。昔、青森の母の実家で海軍から帰ってきて、いっとき農業に手を染めたことがあるが、これはど手ひどい壊滅的な被害は初めてのことだった。各地でも農家が打撃を受けた。今年に入ってからも影響は長引いており、スーパーの野菜の値段が高いと聞く。ともあれ、悲しく淋しい思いだった。

 わたしは6月8日が誕生日だ。ことし、90歳になる。体が動くかぎりは百歳になっても挑戦したいが、もしかしたら今年で最後のトマトづくりになるかもしれない。なんとか有終の美を飾りたいと思っている。

 ともかく基本は「土=つち」づくりである。以下、土づくりの点において反省点を記すとすると。

1. 畝(うね)の深さは20センチ以上であること。
2. 畝の幅は70センチくらいで、植えた本数で濃密にならないよう留意する。
3. 上記の①と②はトマトの成長上、果実を得るための基本条件である。
4. 肥料は、化学肥料を与えるのは厳禁とする。有機質肥料(鶏フン、牛フン等)を元肥(もとひ)として畝づくりの時点で土にすき入れる。
5. 上記の完了のあとは畝に黒いビニールシートをかぶせ、風に飛ばされぬよう端を止め、草の生えるのを防止する。
6. 鶏フン、牛フンの肥料はすぐには効果がないので、液肥を一週間感覚で与えてやると花もちが良い。
7. トマトは必要以上に水分を求めないから雨ざらしは禁物である。ビニールの屋根をかけてやることによって雨にかかるのをなるべく防ぎ、果実の酸味をできるだけ抑えるようにする。
8. 春先は低気圧の風が吹き荒れ、強いので、風よけのビニールの網を張り、少しでも風圧を防ぎ、折れないようにする。
9. 苗の植え付けはゴールデンウィークの晴天の日が良い。
10. 苗が畝に活着するのは4日ないし5日ほどかかるので、この時期の風圧は要注意である。
11. トマトの活着したあとは脇芽をとって成長を促進させることが重要である。
12. 花に降雨があたると果実が割れたり、カルシウム不足により尻腐れが生じるので雨にできる限りあてない工夫が大切になってくる。
13. 週一回の液肥を着実にやってゆけば、酸味の少ない甘いトマトがどんどん採れる。
14. 最後に冬場の土づくりにもふれておこう。冬場の作業の一つに「荒起こし」とよばれるものがある。これは畑の土を約25センチから30センチの深さで掘り起し、深層の土を表にだし、空気にふれさせ、土中の病害虫を死滅させるのが目的である。冬の冷気で土は乾燥し、また酸素を吸収することになる。トマト栽培には欠かせない、この「荒起こし」という作業を忘れてはならない。

 わたしなりのトマトづくりの方法を列挙したが、トマトが毎日採れるようになると、不思議な感慨にひたるようになってきた。

 捥いだばかりのトマトの果実の手触りをたのしみ、香りを嗅いでいると、これまでの日々や今現在の自分をすっかり忘れ、自然力というのか、それとも生き甲斐とでも呼んだらいいのだろうか、「しあわせ感」がふつふつとこみあげてくる。まことに「感謝、感謝」である。妻がきっかけとなってはじめたが、実に有難いトマトづくりなのである。

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