ショートショート1


嫌われる人
例えば、とてつもなく大きい岩を眺めながら「あの岩って何kgくらいあるんですかねぇ」と言った時に、「何kgじゃなくて、何百kgな笑」と桁数を否定してくる人とは一生分かり合えないと思っている。
論点に対するピントのズレはコミュニケーションにおいて非常に大切で、分かり合えないまま別れていく人達も、つまりそういう事なのだろう。


外国人同士
多分私は他人に比べるとよく道を尋ねられる方だという自負がある。特に外国人に尋ねられる事が多く、なかでも特にアジア系が多い。
お互い母国語ではないつたない英語で会話を交わして、地図を見ながら道案内をする瞬間は不思議な感覚があるし、案外嫌いではない。


花火
先日、10年以上の付き合いがある友人とライブで共演した。お互いギターボーカルで同い年ではあるが、書く歌詞の内容や言葉選びはほぼ逆で、彼は朝を見つめ、私は夜を見つめているような雰囲気がある。
数ヶ月ぶりに演奏する姿を見て、今まさに打ち上がった花火のような、もしくは消えかける線香花火のような、どちらにせよ刹那的な印象を受けたが、彼のバンドキャリアは長い。

足元に広がる波打ち際に落ちる線香花火の欠片も、遥か水平線の向こうに落ちる太陽の姿も、どちらも同じ、海に飲まれる炎で、その対比は美しく目を引くものがある。
私達が消えて無くなる日までに、自分にも少しは身を切るような歌詞がかけるのかな、とふと思った。

その後は酒を飲み過ぎて、翌日の仕事は地獄だった。何が太陽や、と思いながら働く。

あなた次第です
最近睡眠が下手になってきた。夜は、2:00までに布団に入り、なんだかんだで3:00前にようやく入眠する。仕事の関係で6:00過ぎには目が覚め、12:00から13:00の昼休みは昼食も取らずにとにかく眠る。
午後も働き抜いて、「絶対今日は早く寝よう」と思いながら帰宅しても、気づけば夜中の1:00をまわる、という毎日が続く。

入眠直前は金縛り、耳鳴り、幻聴に襲われる事が多い。起きている間の頭痛も増えてきて、いよいよ睡眠が健康被害につながりかけている実感がある。
幽霊はあまり信じていないので、厄祓いに行くよりマッサージとか貸切温泉に行きたい。


恐怖症
眉間に指を近づけられた時に、眉間を中心に半径15cmほどの範囲に違和感を覚える機能が人体にはある。例えばその感覚を「ゾワ」と名づけるとする。
結構な高所に立って地上を覗くと、腰あたりを中心に半径30cmほど「ゾワ」が強めに来る。

しかし、人によっては「ゾワ」が身体中を支配して腰が抜けてしまうような方が一定数存在しており、人はそれを「高所恐怖症」と呼ぶ。

私の中では同じ「ゾワ」の大小だと思っているので、日常に湧いて出る「ゾワ」を押さえ込むことでギリギリ「〇〇恐怖症です」と自己紹介せずに済んでいる。恐怖症予備軍をたくさん抱えながら、集合体も尖端も大体みんな怖いよ、と思う。

ミックス
先日レコーディングが終了した。残すはミックス作業だけとなり、音源の製品化は目前となった。

しかし、音を混ぜるという行為と真剣に向き合うというのは、冷静に考えると変な行為だなと思う。
ここ数時間ずっとミックスについて考えている為か、生まれて初めてホットケーキミックスを買って帰ろうか考えていたが、今日は雨が降るのでまた今度。

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