人類学と民俗学

この二つも違いが分かりづらい学問かと思う。どちらも民衆の生活とかを観察や調査を用いて研究するし、研究するテーマも伝承なので共通点が多いので。極論で言ってしまうと人類学は全人類を、民俗学は自国や自民族を主とした単一の集団を研究対象としている。ただ、それだけの説明だと面白くないのでそれぞれについてもう少し説明したいと思う。

先ず人類学についてであるが、人類学は文化人類学の略と思っている方もおられるかもしれないが実はそうではない。人類学とは人間を生物として捉える形質人類学と、人間の行動規則や行動結果による成果から人間の本質を捉えようとする文化人類学との総称である。

人間とは何か?人間らしいとはどういうことか?といった問いは近世以降、西洋哲学の主要な問いであった。そんな中、ドイツの哲学者カントが人間研究の領域を人間学と人類学とに分けたのが人類学のもととされる。ここでの人間学は哲学などを基盤に人間の特徴である理性を研究することによって人間の本質に迫る学問であり、ここでの人類学は生物としての人間の規則性を見つけようとする学問だっとか。

※カントは歴史学と地理学の分化も行っている・・・分けるの好きだねカンちゃん。

と、そういう流れがあるので人類学は生態学とか心理学とか文理融合領域の学問の知識も必要となってきたりします。理学とか自然科学の一部とみなす考え方もあるくらい。

ですが、日本の大学だと社会学部とか社会学科、国際関係学科なんかに置かれていることが多いので一応文系扱いです。

続いて、民俗学。民俗学はその国ごとで発祥の段階でかなり違いがあるのですが、大体は近代化によって失われる自民族や自国民性の本質を理解し守っていこうという考えから生まれました。日本の場合は農商務省で官僚をしていた柳田國男による農村研究が民俗学の始まりとされています。

自民族や自国民性の本質なんてどうやって調べるの?と思うかもしれませんが、民俗学では基層文化という概念をもとに考えて行きます。なお哲学思潮とか芸術の風潮みたいに時代によって変わるものは上層文化といって民俗学では直接の研究対象にはなりません。

どういうことか?・・・文化って時代とともに残るものもあれば消えるものもありますよね。その残り続けた文化が基層文化であり、農村のような地方ほど色濃く残っていると考えた訳ですね。

民俗学というと妖怪とかお祭りとか研究しているイメージありますが、それはその地域の人々がその妖怪やお祭りがあるゆえに生活様式が限定されるから。

ただ地方の場合は文字資料が少なかったりするので民俗学では聞き取り調査をすることが多いのです。「なぜそうなのですか?」「あれは100年前のことじゃ・・・」みたいに。

ということで昔からあるものを研究する学問なので、史学科の日本史系とかに多いイメージがありますね。場合によっては人類学の一分野とする考えも。あとは、日本学とか日本研究とかの学科にあることが多いイメージ。さらに、柳田國男が農商務省の官僚だった関係で、経済学とか政策学でたまに研究している先生もいると聞いたことがあります。ただ、人類学と似ているため人類学の先生はいるけど民俗学の先生はいないという大学も結構あります。

と長々と話してきましたが、人類学者にしろ民俗学者にしろどっちの学問についても基礎だけは勉強してると思うのですよ。民俗学者でも海外の文化調査しに行ったりしますのでね。非常に近いけど少し違う学問程度に考えるのもありかもしれません。




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