TVアニメ学校の怪談ふり返り②

学校の怪談ふり返り第2回目でう。今回は第2怪「トイレから手首が赤紙青紙」のふり返り。

ではいきましょう。おそらくですけど、放送当時に見ていた人は「いきなりトイレかよ」と思った人と「学校の怪談といえばトイレだよな」と思った人との両方いたと予想しています。ジャンルとしての学校の怪談て他の怪談や伝説と比してトイレ舞台の話しが多いのですよ。だから、学校の怪談を考える上でトイレは避けては通れない(けど話題としては乗り気になれない)。

面倒臭いので結論から言ってしまうと、これを第2怪に持ってきたのは第1怪であった「水洗といれじゃなかったら・・・」の話題のフラグ回収が最大の理由だと個人的には考えております。なので、民俗学的な話しをします。具体的に言うと①子ども達にとってのトイレ及び子ども達にとっての学校②日本人の伝統的色彩感覚の二つです。

①について。トイレが学校の怪談の定番ということは、子ども達はトイレに恐怖を抱いているということ。その理由は、昔のトイレに対するイメージが原因ではないかと民俗学では考えます。トイレが水洗トイレじゃなかったころ、というか60年代くらいまでの話。都市部では長屋に住んでいる人も多く、トイレは共用というのが多かったようです。また、農村部などで戸建てに住んでいる場合はトイレが母屋と別棟だったりしました。なので、夜とか留守番をしている時なんかにトイレにいくのが怖い訳ですね。加えて水洗式ではないので汚れが目立つ。誰かが生理の処理とかした後だったりすると血の後が残ってたりする。ここから、赤い紙とか赤マントの怪談がイメージされたとの説もあります。

ところで、赤紙青紙の霊眠方法は鳥居を描いたビンに呼び水?を入れて「ご不浄をお借りします」と呪文を唱えることでしたね。

ご不浄って昔の言葉でトイレのことです。あと鳥居は人の領域と神様の領域とを分けるものなので、トイレにいる悪いお化けを神様ということにして鎮めるような感じなのではと思っています。平安時代の怨霊調伏みたいな感じなのかなと。

ところで、家のトイレと学校のトイレは違うもので学校のトイレまで恐怖対象になるのはどういうことか?

その理由は子ども達にとっての学校がどういうものかということを考えると分かります。アニメ学校の怪談の原作者の常光徹先生が書いた『学校の怪談 口承文芸の研究Ⅰ』という本があるのですが、その本に子ども達が学校の怪談を生み出す理由の一つに「彼らは「死」についてつよい関心がある。というか見えない世界に対してさまざまな想像力働かせる」とあります。

子ども達にとって学校は生活の場でありますが、実は見えない世界も多いのですね。具体的に言うと下校時間以降です。この時間の学校というのは保護者会が開かれていたり、ママさんバレーが使っていたりと完全に大人たちの世界となります。

この中には宿題の教材を忘れたりして下校時間を過ぎて学校に行って先生から怒られたことが有る人もいるかもしれません。昔は今より厳しかったので、下校時間を過ぎて学校に戻ることは色々な意味で怖いことなのです。恐る恐る学校に行ったら、知らない大人がいる。しかもそれが逃げ場のないトイレだったら・・・そういう恐怖がトイレの怪談のもとではないかと思うのです。

余談ですが口裂け女もトイレに現れるのが元の話しであり、たまたまマスクをつけた女性を見た子どもが口裂け女を想像したのではと推測する説が15年くらい前から出てきています。

家でも学校でもトイレは怖い場所だったのです。

②について。赤い紙と青い紙の質問をされてハジメが黄色と答えるとあの世につれて行かれそうになるシーンがありますが、実は地方によっては黄色と答えると助かるパターンの話しもあるんですね。何で赤青黄なのか。それにはトイレの怪談が出来た時代が関係しています。

学校の怪談てブームが来るのは70年代後半から80年代なのですが、トイレの怪談というのはそれより古く50年代から60年代(赤マントなどは戦前からあったとする説もあります)にできたとされています。この時期の小中学生の親って当然に戦前生まれな訳です。となると、当時の小中学生は昔の色彩感覚に晒されていたと考えるのが妥当です。

どういうことか?例えば、今でも「男の子が生れたら青い服を買わなくちゃ」とか「女の子だから赤やピンクで可愛くしよう」ということを聞いたりしないでしょうか。誰が何色を着ても問題ないだろうというのが現代の感覚ではありますが、あれが昔からの日本人の色彩感覚なのです。

何を根拠に決めているかというと、陰陽五行です。女性が陰で男性が陽なのはご存知の人も多いと思いますが、色にも適用されてまして赤が陰なので女性、青が陽なので男性ですね。

さらに言うと、古代の日本人にとって中心となる色彩は赤青白黒の四色です。あれ黄色は?思うでしょうが、黄色という概念は中国から伝わってきたとされています。じゃあ黄色は陰陽どっちなの?となると思うのですが、実は陰と陽との両方の気を持っているのが黄色になります。なので黄色は男女どちらが着ても良い色とされています。

さて話しを赤紙青紙に戻しますが、黄色と答えて助かるかどうかの違いというのは「黄色=赤青どっちつかずで中途半端」と解釈するか「黄色=赤青を超越した色」と解釈するかの違いなのです。さつき達の前に現れた赤紙青紙は前者だったようです。

第1怪が天邪鬼だったので、実質最初の学校の怪談パートといえる第2怪。ここでトイレの怪談を持って来たスタッフさんのセンスはただものではないのです。




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