#0217 発端

最初はちょっとした違和感でした。

何となく胸が苦しいかもしれない。気のせいかな。気のせいだよな。
いや待て、これは気のせいじゃないんじゃないか。
あ、でも、立ち上がったらちょっと楽だな。
うそ、そんなことはない。
だんだん立ち上がるのも難しくなって来た。
胸の苦しさも高まって来た。
早めに着替えて、外に出たほうがいいんじゃないか。

というわけで、それまで着ていたパジャマを何とか脱ぎ捨てジャージとパンツに着替えて、なかなか辿りつかない玄関をこじ開けると、お隣りさんがちょうど出て来たところでした。
いつものようにキチンとした挨拶をしようとする隣人さんを制して、ぼくは「すんません…救急車…呼んでもらえますか」とだけいってマンションの廊下に倒れ込みました。

それから隣人さんは、テキパキと救急車を呼び「もうすぐ来るからね!」とぼくを励まし続けてくれました。でも、なかなか来ないし、廊下に横になってるからマジで冷えてくる。救急隊員の到着後は、とりあえず年齢やら住所やら家族構成やら、聞かれることはどんどん答えていくーーのだけれど、実家の電話番号とか息子の住んでるところとか、よくわかんないこともいろいろあって、このへんはちゃんと調べて一覧にしておくとかのほうがいいのかなあ、というか早くクルマに乗せてほしいんだけどまだですか? みたいなことを考えつつ(寒い)(右手が痺れてきた)(背中が痛い)自分の状態をずうっっとナマ中継みたいに報告し続けていたのでした。

(続く)

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