#0217 緊急手術


「大動脈解離」という病名だそうです。あとで知ったことですが。

なんだかコワモテな雰囲気がありますよね。うっかりすると死んでしまうこともあるらしいので、おそろしい病気なのは間違いありません。

簡単にいうと、大動脈が裂けて、本来なら血が流れたりしないところに血が溜まったりして、放っておくと大動脈が破裂して死に至る。このため、裂けた大動脈を人工血管に置き換える緊急手術をしなきゃいけないーーということで、生まれてから60年、はじめての手術を受けることになったわけです。

とはいえもちろん、倒れた当初はただただ猛烈に痛くて、この痛みさえなくなるんなら何でもいい、何でもやってくれっていう気分でした。

救急隊員の方に「服をハサミで切っていいですかー」みたいなことを耳元で叫ばれたんですが(たぶん胸に心電図用の電極とかを取り付けるため)正直、いちいち聞かなくていいからやっちゃって!という気分でした。もちろん実際には「はいどうぞ」って言いましたけどね。たぶん。ちゃんと。

服を切り刻まれている感覚までは覚えているんですが、そのあとの記憶は曖昧です。自分が救急車で運ばれているあたりから後のことは、あいにくほとんど覚えていません。

「〇〇病院の受け入れが決まったので、そちらに向かいます!」という感じの声を聞いたような気がしますが、なんだかTVドラマとかにありがちな場面なので捏造かもしれません。

相変わらず「痛い」「寒い」「右手が痺れる」的な実況報告?をしていたんですけど、だんだん喋りにくくなってきて、それをそのまま伝えたら「無理に喋らないで!」と言われ、それでもなお身体の調子をいちいち報告していたら「なにか変化があったらすぐに教えてください!」と言われ、いやいやどっちやねん、と。このときばかりは心のなかでツッコミを入れた記憶があります。

病院に到着して、ストレッチャーからベッドに移るとき(あるいは逆かもしれない)、身体の下に巨大な下敷みたいなものを差し込まれて、大勢のスタッフさんに「せーの」で持ち上げられたことも覚えています。

その後、手術についての説明を受けて同意書にサインをしたような気もします。

手術については、もちろん何も覚えていません。

おそらく、本当の「地獄」は、麻酔が切れた後から始まったんじゃないかと思います。
とはいえ、それもぼく自身はあまり覚えてないんですけど。

(続く)


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