PCIから考察する2023天皇賞(春)

はじめに

Twitterにて競馬関連のツイートをしている、koba(@koba_kendo)と申します。
僕は有料予想家ではありませんが、競馬を楽しむ人間として、自分自身で競馬の予想をすることがあります。
その際に、後述の「TARGET」というツールの分析指数「PCI」というものをよく活用します。
今回の記事公開の意図は「僕自身の天皇賞(春)の予想を見て欲しい」わけではなく、「天皇賞(春)というレースを題材とした、PCIを活用した分析方法を知って頂きたい」というものです。

分析ツールとして「JRA-VAN」は利用しているが「TARGET」は利用していない、という方は割と多いです。
私見ですが「JRA-VAN」は分析ツールと呼ぶには機能が弱すぎます。言わば、単なる参考データ集みたいなものです。

一方で、「TARGET」には様々な分析機能がありますが、僕が一番重宝しているのが「PCI」という指数を活用した「瞬発戦/持久戦の適正分析」です。
この指数を使うことで、各レースを「瞬発戦」「持久戦」のどちらかということを数値化して分類し、その上で、各馬が「瞬発戦」「持久戦」のどちらが得意/苦手かということを判定することができます。

本記事が、皆さんの予想/レースや各馬分析上での参考になれば幸いです。

PCIとは

PCI(Pace Change Index)= ペースチェンジ指数
JRAの公式分析ツールに「TARGET」というものがあります。そちらで定義されている指数です。
【TARGETについて】
https://bit.ly/3v9JJxk

上がり3Fのペースが、上がり3F地点までのペースと比較して、速いか遅いかを判断する指数です。
この指数は、各馬ごとにそれぞれ算出されます。

・値が高い→上がり3Fのペースが相対的に速い=脚をためて、ラストに瞬発力使えてる
・値が低い→上がり3Fのペースが相対的に遅い=脚が余ってなくて、ラストは持久力で走ってる
数字の分布はだいたい45~65くらいです。

PCIの派生型として「PCI3」「RPCI」という指数がありますので、以下に説明して行きます。

まず、「PCI3」について。
これは、各レース単位で1~3着に先着した3頭のPCIの平均値です。
どのくらいのペースで走った馬が好走しているかの参考値になります。
つまり、この数字が高いほど瞬発決着、低いほど持久決着、と一般的には判断できます。

・値が高い→瞬発戦:上がり3Fのペースが相対的に速い馬が1~3着に好走
・値が低い→持久戦:上がり3Fのペースが相対的に遅い馬が1~3着に好走

数字の分布はだいたい45~65くらいと言いましたよね。
僕のイメージはこの数字が55未満だと持久戦、55以上だと瞬発戦です。

次に、「RPCI」について。
RPCIとはレースペースチェンジ指数のことで、レースラップの上がり3F地点までのタイムと上がり3Fタイムの比を表したものです。
レースラップは、レース中1番手で走っている馬がバトンして行くラップです。つまりこれはほとんどの場合、逃げ馬のPCIと近い値になります。
RPCIの値が低いほど、逃げ馬が「序盤からペースを飛ばして最後脚が余っていないレース」と考えられます。
またRPCIが低いほど、逃げ馬の飛ばしたペースに引っ張られてレース全体として各馬のPCIもセットで低めのレースになる傾向にあります。

まとめます。

「PCI」とは?
・上がり3Fのタイム:上がり3F地点までのタイム比から算出される指数
・各馬ごとに算出され、値が高い→上がり3Fのペースが速い(最後脚が使えている)、値が低い→上がり3Fのペースが遅い(最後脚が使えていない)
・数字の分布は、おおよそ45~65

「PCI3」とは?
・各レースで1~3着に先着した3頭のPCIの平均値
・数字の分布は、おおよそ45~65(※PCIと同様)
・55を閾値として、55未満だと持久戦、55以上だと瞬発戦と判定可能

「RPCI」とは?
・レースラップの、上がり3Fのタイム:上がり3F地点までのタイムの比から算出される指数
・値が低いほど、逃げ馬がペースを飛ばしたレースと考えられる

「PCI / PCI3 / RPCI」を活用してできることは?
上記のように指数「PCI / PCI3 / RPCI」の見方を理解することで、
・各レースが「瞬発戦/持久戦」のどちらに分類されるか
・各馬が「瞬発戦/持久戦」のどちらが得意/苦手なのか
を判定することができる。

【PCI / PCI3 / RPCIの詳細説明に興味ある方はこちら】
https://team-d.club/other-horse-racing-services/about-target-pci-pci3-rpci/

PCIで見る天皇賞(春)傾向

舞台は京都芝3,200m戦。(※例外的に2021年と2022年では阪神芝3,200戦になっているので注意。)
重賞レースの中で一番の長距離戦。スタミナが問われるレースです。
しかし、ペース/展開次第で割と(長距離戦の割には)瞬発戦になる傾向を見落としてはなりません。

下記の画像は、2010年~2022年の天皇賞(春)のレース結果をTARGETで一覧化したものです。

TARGETで一覧化した2010年-2022年の天皇賞(春)レース結果

1着馬のPCIやレースのPCI3をご覧ください。
前述の通り、一般的にこの指数が55を超えると、
・各馬の状況として→脚が余っている(※最後の3Fで充分なペースアップができている)
・レース傾向として→瞬発戦(※最後の3Fで各馬脚が余っている決め脚比べレース)
と言えます。(※この「55」という閾値は僕の見立てであり、公式な定義ではありません。)
全体的に天皇賞(春)においては、距離が長いレースの割にPCIとPCI3の数値が高い瞬発戦になっています。特に京都開催時において。

この数値を決めるポイントは、逃げ馬のペースメイクと馬場状況です。
逃げ馬が速いペースをつくる場合、馬場が渋っている場合ほど、持久戦になる(「該当レースのPCI3」と「各出走馬のPCI」が低くなる)傾向にあります。

どうやら、良馬場かつ道中のペースが緩やかな場合を中心に、天皇賞(春)は瞬発戦になる傾向にありそうです。
ただし、PCI3が60に近づくような超絶瞬発戦ではなく、各馬そこそこ脚が余っての最終コーナーあたりからの追い比べが多いように見えます。勝ち馬の最終コーナー通過順位がそこそこ上位であることからそれが想像できます。

ここからは、過去のレース結果を見て行きましょう。その上で、2023年のレース傾向を想定して行こうと思います。

過去の天皇賞(春)レース結果

2022年

  • 舞台:阪神 3,200m

  • 天候:晴

  • 馬場:稍重

  • 勝ち馬(鞍上):タイトルホルダー(横山和生)

    • コーナー通過順位:1-1-1-1

    • 2着馬との差:7馬身差(タイム差1.1)

    • 上がり3F:36.4(17頭中1位)※2位と0.6差

    • PCI:51.3

  • レース傾向

    • PCI3:49.87(※持久戦)

    • RPCI:51.3(※逃げ馬=タイトルホルダー)

  • タイム

    • 1,000m通過:1:00.5

    • 2,000m通過:2:03.6

    • 勝ちタイム:3:16.2

    • 判定:ミドルペース

  • レースコメント

    • タイトルホルダーがハナを切って先行、逃げながら序盤5~6馬身をキープする縦長展開。第3コーナー付近では一旦馬群詰まりつつも、最終コーナーにかけてタイトルホルダーが突き放しそのままゴールイン。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

2021年

  • 舞台:阪神 3,200m

  • 天候:晴

  • 馬場:良

  • 勝ち馬(鞍上):ワールドプレミア(福永祐一)

    • コーナー通過順位:7-7-7-4

    • 2着馬との差:3/4馬身差(タイム差0.1)

    • 上がり3F:36.7(17頭中1位)※2位と0.4差

    • PCI:49.4

  • レース傾向

    • PCI3:47.97(※持久戦)

    • RPCI:47.1(※逃げ馬=ディアスティマ)

  • タイム

    • 1,000m通過:59.8

    • 2,000m通過:2:01.3

    • 勝ちタイム:3:14.7

    • 判定:ハイペース

  • レースコメント

    • ディアスティマがハナを切って先行、逃げながら2馬身前後をキープする縦長展開。最終コーナーで2番手のカレンブーケドールがかわし、先行勢によるバテ差し決着を外から追い出したワールドプレミアがじわっと伸びて制す。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

2020年

  • 舞台:京都 3,200m

  • 天候:曇

  • 馬場:良

  • 勝ち馬(鞍上):フィエールマン(ルメール)(※2連覇)

    • コーナー通過順位:8-8-7-7

    • 2着馬との差:ハナ差(タイム差なし)

    • 上がり3F:34.6(14頭中1位)※2位と0.5差

    • PCI:58.0

  • レース傾向

    • PCI3:56.57(※瞬発戦)

    • RPCI:52.9(※逃げ馬=キセキ)

  • タイム

    • 1,000m通過:1:03.0

    • 2,000m通過:2:03.4

    • 勝ちタイム:3:16.5

    • 判定:スローペース

  • レースコメント

    • ダンビュライトがハナを切って先行、1,200m手前付近でキセキがこれをかわして逃げる縦長展開。そのまま最終コーナーを迎えるも、垂れるキセキ。これを先行気味に追走したスティッフェリオと追い込んだフィエールマンの2頭が捕えてほとんど並んでゴールイン。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

2019年

  • 舞台:京都 3,200m

  • 天候:晴

  • 馬場:良

  • 勝ち馬(鞍上):フィエールマン(ルメール)

    • コーナー通過順位:7-5-4-1

    • 2着馬との差:クビ差(タイム差なし)

    • 上がり3F:34.5(12頭中2位)※1位と0.1差、3位と0.7差

    • PCI:57.4

  • レース傾向

    • PCI3:56.83(※瞬発戦)

    • RPCI:57.4(※逃げ馬=ヴォージュ)

  • タイム

    • 1,000m通過:59.8

    • 2,000m通過:2:04.0

    • 勝ちタイム:3:15.0

    • 判定:スローペース

  • レースコメント

    • ヴォージュがハナを切って先行、序盤そこそこ飛ばしての縦長展開。しかし1,200~1,800mあたりでペースかなり緩み各馬が差を詰めてくる。残り800m付近でヴォージュ垂れての各馬追い比べ。最終コーナー通過はフィエールマン×グローリーヴェイズの2頭が追い出して抜ける。最後は追い比べながら2頭そのままゴールイン。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

2018年

  • 舞台:京都 3,200m

  • 天候:晴

  • 馬場:良

  • 勝ち馬(鞍上):レインボーライン(岩田康誠)

    • コーナー通過順位:10-10-11-11

    • 2着馬との差:クビ差(タイム差なし)

    • 上がり3F:35.2(17頭中1位)※2位と0.1差

    • PCI:55.6

  • レース傾向

    • PCI3:54.27(※やや持久戦)

    • RPCI:53.0(※逃げ馬=ヤマカツライデン)

  • タイム

    • 1,000m通過:1:00.3

    • 2,000m通過:2:02.8

    • 勝ちタイム:3:16.2

    • 判定:ミドルペース

  • レースコメント

    • ヤマカツライデンがハナを切って先行、そこまで飛ばすわけではなく落ち着いたペースでの縦長展開。1,500m地点くらいから徐々に差を広げながら2,000m時点では2番手以下を10馬身以上突き放しての独走。しかし脚が余っている各馬が残り1,000m地点から猛追、残り600mでヤマカツライデンが馬群につかまる。最終コーナーまわって馬群の中からシュヴァルグランが一旦先頭に立つも、内から伸びてきたレインボーラインがこれをわずかにかわしてゴールイン。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

2017年

  • 舞台:京都 3,200m

  • 天候:晴

  • 馬場:良

  • 勝ち馬(鞍上):キタサンブラック(武豊)(※2連覇)

    • コーナー通過順位:2-2-2-1

    • 2着馬との差:1 1/4馬身差(タイム差0.2)

    • 上がり3F:35.3(17頭中4位)※1位と0.3差、2位と0.1差

    • PCI:52.8

  • レース傾向

    • PCI3:53.37(※持久戦)

    • RPCI:53.0(※逃げ馬=ヤマカツライデン)

  • タイム

    • 1,000m通過:58.3

    • 2,000m通過:1:59.7

    • 勝ちタイム:3:12.5

    • 判定:ハイペース

  • レースコメント

    • ヤマカツライデンがハナを切って先行、序盤からかなり飛ばしての縦長展開。2,000m手前地点では2番手以下を10馬身以上突き放しての独走。次いでキタサンブラックが2番手を保持しながらの追走。しかし脚が余っている各馬が残り1,000m地点から猛追、残り600m手前でヤマカツライデンが馬群につかまる。最終コーナーまわって2番手から先頭に立ったキタサンブラックが馬群の中から伸びて他馬を寄せ付けずそのままゴールイン。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

2016年

  • 舞台:京都 3,200m

  • 天候:晴

  • 馬場:良

  • 勝ち馬(鞍上):キタサンブラック(武豊)

    • コーナー通過順位:1-1-1-1

    • 2着馬との差:ハナ差(タイム差なし)

    • 上がり3F:35.0(18頭中10位)※1位と0.7差

    • PCI:55.7

  • レース傾向

    • PCI3:56.60(※瞬発戦)

    • RPCI:55.7(※逃げ馬=キタサンブラック)

  • タイム

    • 1,000m通過:1:01.8

    • 2,000m通過:2:03.5

    • 勝ちタイム:3:15.3

    • 判定:ミドルペース

  • レースコメント

    • キタサンブラックがハナを切って先行、落ち着いたペースで2馬身差くらいでのマイペース逃げのまま後続との馬身差あまり変わることない淡々とした独走を継続。そのまま2,000m通過、最終コーナーまでほぼ変わらぬ馬身差。3番手で追走していたカレンミロティックが一旦内から伸びて差しそうに迫ってくるがキタサンブラック粘る。最後2頭まったく並んでゴールイン。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

2015年

  • 舞台:京都 3,200m

  • 天候:晴

  • 馬場:良

  • 勝ち馬(鞍上):ゴールドシップ(横山典弘)

    • コーナー通過順位:14-14-3-4

    • 2着馬との差:クビ差(タイム差なし)

    • 上がり3F:35.0(17頭中5位)※1位と0.6差

    • PCI:55.3

  • レース傾向

    • PCI3:55.60(※やや瞬発戦)

    • RPCI:54.2(※逃げ馬=クリールカイザー)

  • タイム

    • 1,000m通過:1:01.4

    • 2,000m通過:2:03.2

    • 勝ちタイム:3:14.7

    • 判定:スローペース

  • レースコメント

    • クリールカイザーがハナを切って先行、落ち着いたペースで2馬身差くらいでのマイペース逃げのまま後続との馬身差あまり変わることなく淡々と独走継続、そのまま2,000m通過。残り1,000m強地点でゴールドシップが仕掛けて一気に後方からまくり上げを開始、あっという間に3~4番手につける。最終コーナーで序盤から好位に付けていたカレンミロティックが先頭に立つも、直線で伸びたゴールドシップがこれをかわしてゴールイン。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

2014年

  • 舞台:京都 3,200m

  • 天候:晴

  • 馬場:良

  • 勝ち馬(鞍上):フェノーメノ(蛯名正義)(※2連覇)

    • コーナー通過順位:8-8-7-5

    • 2着馬との差:クビ差(タイム差なし)

    • 上がり3F:34.3(18頭中6位)※1位と0.3差

    • PCI:58.2

  • レース傾向

    • PCI3:58.83(※瞬発戦)

    • RPCI:56.3(※逃げ馬=サトノノブレス)

  • タイム

    • 1,000m通過:1:01.7

    • 2,000m通過:2:03.4

    • 勝ちタイム:3:15.1

    • 判定:ミドルペース

  • レースコメント

    • サトノノブレスがハナを切って先行、落ち着いたペースでの逃げで馬群固まり気味の序盤展開。徐々に先行勢が前に出て行って縦長展開となり2,000m通過。残り600mで脚が残っている各馬が仕掛けて馬群が再度固まって行く。最終コーナーをまわってサトノノブレスが引き続き粘るが残り200mで各馬につかまる。各馬最後ものすごい脚での追い込み、その中で早めに抜けたフェノーメノが大激戦の中ゴールイン。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

2013年

  • 舞台:京都 3,200m

  • 天候:晴

  • 馬場:良

  • 勝ち馬(鞍上):フェノーメノ(蛯名正義)

    • コーナー通過順位:7-7-3-2

    • 2着馬との差:1 1/4馬身差(タイム差0.2)

    • 上がり3F:36.2(18頭中1位)※2位と0.2差

    • PCI:50.7

  • レース傾向

    • PCI3:50.30(※持久戦)

    • RPCI:50.4(※逃げ馬=サトノシュレン)

  • タイム

    • 1,000m通過:59.4

    • 2,000m通過:1:59.7

    • 勝ちタイム:3:14.2

    • 判定:ハイペース

  • レースコメント

    • サトノシュレンがハナを切って先行、序盤からかなり飛ばしての縦長展開。2,000m通過時点で2番手以下を10馬身以上突き放しての独走。しかし各馬脚が残っており残り600m地点でサトノシュレンが馬群につかまる。最終コーナーをトウカイパラダイスが先頭で迎えるも、2番手で追走したフェノーメノがあっさりこれをかわしてそのままゴールイン。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

2012年

  • 舞台:京都 3,200m

  • 天候:晴

  • 馬場:良

  • 勝ち馬(鞍上):ビートブラック(石橋脩)

    • コーナー通過順位:2-2-1-1

    • 2着馬との差:4馬身差(タイム差0.7)

    • 上がり3F:36.5(18頭中15位)※1位と3.0差

    • PCI:49.5

  • レース傾向

    • PCI3:56.50(※データ上は瞬発戦)ビートブラック以外は脚が溜まっている馬が好走

    • RPCI:49.5(※逃げ馬=ゴールデンハインド→ビートブラック)

  • タイム

    • 1,000m通過:1:00.0

    • 2,000m通過:2:01.9

    • 勝ちタイム:3:13.8

    • 判定:ミドルペース

  • レースコメント

    • ゴールデンハインドがハナを切って先行、そこそこペースで逃げつつ2番手に2馬身差でビートブラックが追う状況で1,000m地点通過の縦長展開。2,000m通過時点でこの2頭が3番手ナムラクレセントを10馬身差と離し、さらにこの馬から4番手以下馬群まで10馬身差の異常な縦長展開。残り800m付近でビートブラックが先頭に出て後続までは15馬身差以上。最終コーナーまわってもそのまま垂れずにゴールイン。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

2011年

  • 舞台:京都 3,200m

  • 天候:曇

  • 馬場:稍重

  • 勝ち馬(鞍上):ヒルノダムール(藤田伸二)

    • コーナー通過順位:9-8-7-6

    • 2着馬との差:1/2馬身差(タイム差0.1)

    • 上がり3F:35.3(17頭中3位)※1位と0.2差

    • PCI:58.1

  • レース傾向

    • PCI3:57.07(※瞬発戦)

    • RPCI:55.5(※逃げ馬=ゲシュタルト→コスモヘレノス→トゥザグローリー→ナムラクレセント)

  • タイム

    • 1,000m通過:1:04.2

    • 2,000m通過:2:08.7

    • 勝ちタイム:3:20.6

    • 判定:スローペース

  • レースコメント

    • 各馬バラッとしたスタートの中で先行したのはゲシュタルト、ドスローペースの中で馬群は詰まった展開。1,000m通過後にコスモヘレノスがかわして先頭、1,500mあたりで今度はトゥザグローリーがかわして先頭に。さらに1,900mあたりで後方からナムラクレセントが一気にあがって先頭に立ち、同レース内の道中で4度目の先頭交代という珍しい展開。馬群詰まったまま最終コーナーを迎えてナムラクレセントがスパート。各馬なかなか差を詰められない中で脚を溜めていたヒルノダムールが最後にかわしてゴールイン。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

2010年

  • 舞台:京都 3,200m

  • 天候:晴

  • 馬場:良

  • 勝ち馬(鞍上):ジャガーメイル(ウィリアムズ)

    • コーナー通過順位:9-8-7-5

    • 2着馬との差:3/4馬身差(タイム差0.1)

    • 上がり3F:33.7(18頭中1位)※2位と0.5差

    • PCI:60.9

  • レース傾向

    • PCI3:58.93(※瞬発戦)

    • RPCI:59.0(※逃げ馬=ミッキーペトラ)

  • タイム

    • 1,000m通過:1:00.7

    • 2,000m通過:2:04.6

    • 勝ちタイム:3:15.7

    • 判定:ミドルペース

  • レースコメント

    • ミッキーペトラがハナを切って先行、そこそこのペースでの逃げの中で縦長展開、1,000m通過時点で2番手に4馬身差程度。各馬脚が残っている状況で、最終コーナーでは馬群固まっての各馬追い比べ。ここからマイネルキッツが抜けて突き放しにかかるが、ジャガーメイルが鬼の末脚で猛追、かわしてゴールイン。

  • レース結果コンテンツ(netkeiba)

過去レース結果から見る天皇賞(春)の傾向

  • 瞬発戦になりやすい京都のコースと馬場

    • 2021,22年は舞台が阪神だったが、2020年以前の舞台は京都。阪神に比べて、PCI3が比較的高めの瞬発戦になりやすい傾向。

  • 瞬発戦/持久戦を決めるキー

    • 瞬発戦/持久戦を決めるキーは「逃げ馬のペースメイク」。序盤からある程度飛ばすレースではRPCIが低くなり、伴ってPCI3も低くなる持久戦になりやすい傾向。これは序盤より各馬が脚を使うため、上がり3Fのタイムがそれまでのタイムより相対的に遅くなるためである。

    • 例外的にRPCIが低いがPCI3が高いレースも存在する。2012年のレースがそれに当てはまり、大逃げを決めた馬が個別には持久戦で逃げ残るも、全体的にはバテ差し合戦となり脚をためたPCIが高い馬が好走したケース。

  • 持久戦傾向になるほど、好位で最終コーナーを迎えないと届かない

    • 持久戦になるほど、最終コーナー通過順位が好位でないと好走は厳しい。決め手の上がり勝負に持ち込めないためである。

    • 2018年は持久戦ながら、1着馬のレインボーラインのコーナー通過順位は「10-10-11-11」で一見これは異常に見える。しかしレース動画を観ると分かるが最終コーナーでかなり馬群は詰まっていてこの馬は好位で運べていたことからも、やはり持久戦における好走条件に「最終コーナーにおける好位ポジション」という点は欠かせなそう。(補足だが、岩田オヤジのイン突きのコース取りは神騎乗に見える。)

  • 馬場状態と瞬発戦/持久戦の関連性

    • 馬場状態が悪いほど、当然ながら1,000m通過タイムやレース最終タイムなどを代表に時計がかかる展開になる。

    • 一方で、だからといって持久戦になるかというとそうとは限らない。時計がかかる状況なりにも逃げ馬が落ち着いたペースでレースを運ぶと、結局最後は各馬脚が溜まっての瞬発戦になる。2011年のレースがその顕著な例である。

  • 連覇馬の多さ

    • 過去を振り返ると、2連覇している馬が多い。

      • フィエールマン(ルメール):2009-2010(4歳→5歳時)

      • キタサンブラック(武豊):2016-2017(4歳→5歳時)

      • フェノーメノ(蛯名正義):2013-2014(4歳→5歳時)

      • テイエムオペラオー(和田竜二):2000-2001(4歳→5歳時)

      • メジロマックイーン(武豊):1991-1992(4歳→5歳時)

    • 共通点としては、4歳時に勝利→5歳時に同騎手騎乗で連覇していること。(タイトルホルダーも今回1着になれば同じ条件での連覇。)

    • また、瞬発戦と持久戦と異なるタイプの状況で連覇している馬が多いことにも驚く。

      • キタサンブラック:2016→瞬発戦、2017→持久戦

      • フェノーメノ:2013→持久戦、2014→瞬発戦

      • テイエムオペラオー:2000→瞬発戦、2001→持久戦

2023天皇賞(春)について

出走馬

https://race.netkeiba.com/race/shutuba.html?race_id=202308010411

  1. ジャスティンパレス(ルメール / 2回連続4度目)

  2. ディープモンスター(浜中俊 / 2レースぶり2度目)

  3. タイトルホルダー(横山和生 / 8回連続8度目)

  4. メロディーレーン(幸英明 / 8レースぶり2度目)

  5. アイアンバローズ(坂井瑠星 / 初騎乗

  6. アスクビクターモア(横山武史 / 初騎乗

  7. ディープボンド(和田竜二 / 2回連続17度目)

  8. トーセンカンビーナ(岩田望来 / 初騎乗

  9. ヒュミドール(武豊 / 初騎乗

  10. サンレイポケット(Mデムーロ / 初騎乗

  11. ディアスティマ(北村友一 / 4回連続11度目)

  12. ブレークアップ(松山弘平 / 2回連続2度目)

  13. ボルドグフーシュ(川田将雅 / 2回連続2度目)

  14. マテンロウレオ(横山典弘 / 3回連続10度目)

  15. エンドロール(永野武蔵 / 8回連続11度目)

  16. シルヴァーソニック(レーン / 3回連続3度目)

  17. アフリカンゴールド(国分恭介 / 4回連続11度目)

想定PCI3

52-54くらいを想定。
別の馬が逃げる(ディアスティマやアフリカンゴールドなどがハナを切る)可能性は否定できないが、実質的にはタイトルホルダーのつくるペースメイクがキーになるのは間違いなさそう。スローにし過ぎない程度に序盤から脚を使いつつも、残り3Fにて衰えない脚で後ろから他馬を詰めさせない超絶スタミナがこの馬の持ち味。
この馬がペースメイクのキーになる限り、そこそこペースを流して得意の持久戦に持ち込むと思われる。となると、ここ2年の阪神コース戦よりはPCI3の値は上がるとはいえ、そこまで高くならないと考える。
RPCIが52-54、PCI3も同じくらいの値の「持久戦~やや持久戦」のレースを想定する。

出走馬の過去レースPCIから分析する適正

1.ジャスティンパレス(★3.5)
瞬発戦向き。
スローペースの展開で好位に付けながら余った脚で勝つ展開が黄金パターン。例外的に2022菊花賞(GⅠ)は消耗戦を3着に持ってきているが、3頭以外のレベルはさほど高くなく脚を溜めて追い詰める展開にできたことが好走要因に見える。
有馬記念/ダービーのようなハイレベル持久戦で脆かったことから、少々割り引きたいが、阪神→京都がわりでの瞬発力が活きる状況での浮上はあり得るかもしれない。

レース一覧_ジャスティンパレス

2.ディープモンスター(★2)
持久戦向き。
3歳児の同世代戦こそPCI3の高い瞬発戦を好走してきたが、オープン入りしてからは持久戦を連続好走後、前走2023金鯱賞(GⅡ)は瞬発戦にて4着。
GⅠ3,200m戦を好走できそうなほどの過去実績は見えず、狙いにくい。

レース一覧_ディープモンスター

3.タイトルホルダー(★5)
本質的には持久戦向き。
ただし先行してペースメイクできるレース展開にて道中スローに運び、最後まで落ちない脚を使うことで、瞬発戦ながら逃げ切るレース展開も多い。典型的な例が2022日経賞(GⅡ)で、このときはクッション性の低い稍重馬場ということも手伝って自身もPCI59.8の脚を使って逃げ切っている。
雨の影響で当日レースがクッション性の低い重たい馬場になっているほど、この馬には有利にはたらくことが想定できる。
2022有馬記念(GⅠ)のらしくないスタミナ切れっぽい凡走は、凱旋門賞帰りの疲れ残りか。今回は万全のローテでスタミナ面は問題なさそう。
別の逃げ馬に先行されても、番手くらいで追走できれば実質この馬がペースメーカーになると思われるのであまり脅威にならなそう。
スキを見つけるとするならば、ペースメイクをスローにし過ぎて想定以上の瞬発戦になった場合のキレ負け展開だろうか。

レース一覧_タイトルホルダー

4.メロディーレーン(★1)
瞬発戦向き。
脚がキレるわけではないので持久戦もこなすが、実は好走パターンは中距離以上の瞬発戦を好位で運べたケースが中心。
しかしながら、GⅠ3,200m戦にて体格の小さい7歳牝馬の彼女の好走を期待するのは厳しそう。狙いにくい。

レース一覧_メロディーレーン

5.アイアンバローズ(★2)
瞬発戦向き。
条件戦までは、ペースの遅めの瞬発戦で好位から末脚を使っての好走多し。
オープン入りしてからは長い距離でも好走しているが、同じように好位追走が楽なスローペース戦の瞬発戦パターンに限られる。
今回タイトルホルダーの存在で厳しい流れになりそうなGⅠ3,200m戦で期待するのは難しそうで、狙いにくい。

レース一覧_アイアンバローズ

6.アスクビクターモア(★4)
持久戦向き。
好位から運んで持久戦に持ち込んで好走するパターン多し。
瞬発戦になると2022皐月賞(GⅠ)のようにキレる馬にかわされる可能性が高まり、クッション性が低い馬場だと前走2023日経賞(GⅡ)のように好位追走が難しくなり凡走する可能性が高まる。
相対的には京都よりも阪神の方がPCI3が低い持久戦になりそうなのでこの馬にとってはマイナス材料。さらにはタフ属性で実績ともに上回るタイトルホルダーの存在が同じく評価の上ではマイナスにはなってくる。
しかしながらある程度時計の出る馬場で好位を取れる展開になるならば、2022ダービー(GⅠ)で見せた驚異の粘り能力が輝く可能性も。馬場状態に注目。

レース一覧_アスクビクターモア

7.ディープボンド(★3.5)
持久戦向き。
好位から運んで持久戦に持ち込んで好走するパターン多し。
スタミナ豊富だがとにかくキングオブズブい馬でキレないため、好走するためには好位につける必要がある。
上がりがかかるレースの方が好走しやすく、クッション性が低い(=雨の影響で馬場状態が悪い)ようならそれが手伝って好走チャンスが増す。
阪神よりも瞬発戦傾向のある京都への舞台がわりは正直マイナスか。当日の馬場状態に注目。

レース一覧_ディープボンド

8.トーセンカンビーナ(★1)
瞬発戦向き。
後方から運んで脚を溜めて末脚を爆発させることがハマる瞬発戦に好走パターン多し。
好位から運んで持久戦に持ち込んで好走するパターン多し。
昨年2022天皇賞春(GⅠ)は1着から3.2秒差の10着に敗れており、昨年よりは多少PCI3が上がりそうとはいえ、さすがに狙いにくい。

レース一覧_トーセンカンビーナ

9.ヒュミドール(★1)
持久戦向き。
本質的には持久戦向きと思われるが、3,000m以上の重賞レースを3度経験しており、いずれもスローペースの瞬発戦気味レースでの好走経験がある。
しかしながら各レースさほど高レベル戦ではなく、かつ今回はさすがにペースがそこそこ流れそうなGⅠ3,200m戦で、さすがに狙いにくい。

レース一覧_ヒュミドール

10.サンレイポケット(★2)
瞬発戦向き。
瞬発戦にて、脚を溜めて後方から末脚を使う好走パターン多し。
基本得意コースレンジは基本2,000~2,200mも、前走阪神大賞典(GⅡ)は3,000m戦をこなして1着馬から0.6秒差の6着。
しかしこのレースはドスローペース&PCI3が60.80の極端な瞬発戦。
今回タイトルホルダーの存在で厳しい流れになりそうなGⅠ3,200m戦で期待するのは難しそうで、狙いにくい。

レース一覧_サンレイポケット

11.ディアスティマ(★2)
持久戦向き。
逃げてペースメイクし、持久戦で押し切る好走パターン多し。
2年前の2021天皇賞春(GⅠ)では速いペースで逃げたペースメーカーであったが、このときは大逃げはさせてもらえず最後の直線でつかまった。
タイトルホルダーが追走してくる展開の中、逃げたとしても好走するのは難しそうな印象。
ただしペースメイクに関わり展開を大きく変える可能性がある馬なので注目の一頭となる。

レース一覧_ディアスティマ

12.ブレークアップ(★2)
瞬発戦向き。
好位につけて良い上がり3Fタイムを出す好走パターンが多いが、3勝クラス以降はいずれもすべて瞬発戦での好走。
PCI3が低めの持久戦ではかなり脆い。
今回タイトルホルダーの存在で厳しい流れになりそうなGⅠ3,200m戦で期待するのは難しそうで、狙いにくい。

レース一覧_ブレークアップ

13.ボルドグフーシュ(★4.5)
持久戦向き。
なのだが、溜めた脚の爆発力すさまじく、参戦11レース中8レースが上がり最速という武器を持つ馬。その中で、PCI3が高めの瞬発戦も(能力でカバーして)好走を果たしている。
驚異的なのは2022有馬記念(GⅠ)にて1着馬イクイノックスの上がり3Fタイムを0.2秒上回る脚をつかっての2着好走。
後方脚質なので仕掛けどころがポイントとなりそうで、連続騎乗の川田の手腕にかかっている。

レース一覧_ボルドグフーシュ

14.マテンロウレオ(★3.5)
属性不明。
過去レース結果を見た感じ、瞬発戦/持久戦のどちらが得意とも言い難い。
東京/中山のレースで極端な凡走をしているので、輸送の影響が少ない関西戦の方が得意な可能性。今回の舞台が京都なのはプラスになるかも。
距離適性が未知なので狙いにくい部分はあれど見限るにはまだ早く、このオッズなら抑えてみても良いのではと考える。

レース一覧_マテンロウレオ

15.エンドロール(★1)
瞬発戦向き。
ただし、少々の持久戦であれば得意の末脚を活かせるバテ差し展開で好勝負できることも。
しかしながら低レベル戦を幾度となくこなしてようやく2勝クラスを勝ち上がったこの馬は、さすがに狙いにくい。

レース一覧_エンドロール

16.シルヴァーソニック(★2)
瞬発戦向き。
3,000m以上の距離のレースを連続好走しており、その中では比較的PCI3が低い持久戦もこなしている。
しかしながら、いずれもペースがゆったりとした低レベル戦が中心。
今回タイトルホルダーの存在で厳しい流れになりそうなGⅠ3,200m戦であり、海外遠征帰り初戦という状況。狙いにくい。

レース一覧_シルヴァーソニック

17.アフリカンゴールド(★2)
瞬発戦向き。
先行して味が出るタイプだが、実は瞬発戦向き。先行してスロー展開に持ち込んで、自身も脚が残っている状態で好走するパターンが多い。
前走2023阪神大賞典(GⅡ)は1着馬から0.4秒差の4着と好走したが、このレースのPCI3は60.80、この馬自身のPCIも59.0というかなりの瞬発戦。
今回タイトルホルダーの存在で厳しい流れになりそうなGⅠ3,200m戦で期待するのは難しそうで、狙いにくい。

レース一覧_アフリカンゴールド

評価順上位馬と馬場状況による各馬の上げ/下げ

3.タイトルホルダー(★5):重馬場(クッション性低い)なら↑
13.ボルドグフーシュ(★4.5):馬場不問、良馬場過ぎると脚質的に↓
6.アスクビクターモア(★4)
:良馬場(クッション性高い)なら↑
7.ディープボンド(★3.5)
:重馬場(クッション性低い)なら↑
1.ジャスティンパレス(★3.5):
良馬場(クッション性高い)なら↑
14.マテンロウレオ(★3.5)
:馬場不問、距離適性未知の穴馬候補

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