PCIから考察する有馬記念の各馬適正

はじめに

今年(2022年)の有馬記念もタフなレースになると考えております。(※「タフなレース」の意味合いは後述します。)

その中で、本レースに求められる「タフさ」に適正がある馬を、PCIという指数にて評価してみたいと思います。(※「PCI」が何かは後述します。)

有馬記念のタフなレース特性

2022年の有馬記念ですが、今年もかなりタフなレースになると考えています。
タフなレースとは何か?最後に各馬が脚が余っていない持久戦。具体的には、上がり3Fのラップが(それまでのラップに対して)相対的に遅くなるようなレースのイメージです。
実際、過去の有馬記念のレースにおいては、先行馬のペースが速い/遅いに関わらずこの傾向になっています。

タフなレースになる理由は、舞台となる「冬場の中山芝2,500mコース」における下記2点の特徴が挙げられます。

1. 中山芝2,500mは距離の長さもさながら、高低差が激しい+小回り3ターンの立ち回りが求められるコース
【参考:競馬ラボ コースデータ超分析 中山芝2,500m】
https://www.keibalab.jp/yosou/coursedata/nakayama/t2500/

2. 冬のオーバーシード時期で洋芝が混ざるため、瞬発力が効きにくい馬場となる
【参考:JRA 第5回中山競馬の馬場概要】
https://www.jra.go.jp/keiba/baba/overview/2021_5_nakayama.html

PCIとは

PCI(Pace Change Index)= ペースチェンジ指数
JRAの公式分析ツールに「TARGET」というものがあります。そちらで定義されている指数です。
【TARGETについて】
https://bit.ly/3v9JJxk

上がり3Fのペースが、上がり3F地点までのペースと比較して、速いか遅いかを判断する指数です。
この指数は、各馬ごとにそれぞれ算出されます。

・値が高い→上がり3Fのペースが相対的に速い=脚をためて、ラストに瞬発力使えてる
・値が低い→上がり3Fのペースが相対的に遅い=脚が余ってなくて、ラストは持久力で走ってる
数字の分布はだいたい45~65くらいです。

PCIの派生型として「PCI3」「RPCI」という指数がありますので、以下に説明して行きます。

まず、「PCI3」について。
これは、各レース単位で1~3着に先着した3頭のPCIの平均値です。
どのくらいのペースで走った馬が好走しているかの参考値になります。
つまり、この数字が高いほど瞬発決着、低いほど持久決着、と一般的には判断できます。

・値が高い→瞬発戦:上がり3Fのペースが相対的に速い馬が1~3着に好走
・値が低い→持久戦:上がり3Fのペースが相対的に遅い馬が1~3着に好走

数字の分布はだいたい45~65くらいと言いましたよね。
僕のイメージはこの数字が55未満だと持久戦、55以上だと瞬発戦です。

次に、「RPCI」について。
RPCIとはレースペースチェンジ指数のことで、レースラップの上がり3F地点までのタイムと上がり3Fタイムの比を表したものです。
レースラップは、レース中1番手で走っている馬がバトンして行くラップです。つまりこれはほとんどの場合、逃げ馬のPCIと近い値になります。
RPCIの値が低いほど、逃げ馬が「序盤からペースを飛ばして最後脚が余っていないレース」と考えられます。
またRPCIが低いほど、逃げ馬の飛ばしたペースに引っ張られてレース全体として各馬のPCIもセットで低めのレースになる傾向にあります。

まとめます。

「PCI」とは?
・上がり3Fのタイム:上がり3F地点までのタイム比から算出される指数
・各馬ごとに算出され、値が高い→上がり3Fのペースが速い(最後脚が使えている)、値が低い→上がり3Fのペースが遅い(最後脚が使えていない)
・数字の分布は、おおよそ45~65

「PCI3」とは?
・各レースで1~3着に先着した3頭のPCIの平均値
・数字の分布は、おおよそ45~65(※PCIと同様)
・55を閾値として、55未満だと持久戦、55以上だと瞬発戦と判定可能

「RPCI」とは?
・レースラップの、上がり3Fのタイム:上がり3F地点までのタイムの比から算出される指数
・値が低いほど、逃げ馬がペースを飛ばしたレースと考えられる

「PCI / PCI3 / RPCI」を活用してできることは?
上記のように指数「PCI / PCI3 / RPCI」の見方を理解することで、
・各レースが「瞬発戦/持久戦」のどちらに分類されるか
・各馬が「瞬発戦/持久戦」のどちらが得意/苦手なのか
を判定することができる。

【PCI / PCI3 / RPCIの詳細説明に興味ある方はこちら】
https://team-d.club/other-horse-racing-services/about-target-pci-pci3-rpci/

PCIで見る過去の有馬記念

まず、下記はTARGETで抽出した中山芝2,500m重賞の過去データです。
日経賞と有馬記念の2つですね。

ここから有馬記念をひとつ飛ばしで見て行くと分かりますが、有馬記念のPCI3は直近5年で51.83~57.00で推移しています。
ただし、このうち2017年のキタサンブラックがコーナー通過順位「1-1-1-1」で勝ち切ったレースは異次元なのでこの数字は除外しましょうか。
そうすると、51.83~54.60。
前述で「PCI3が55未満だと持久戦のイメージ」と言いました。
つまり昨今の有馬記念はかなり持久戦になる特徴を持っていたことになります。

では、その上で有馬記念に出走する馬をどう評価すべきか。
「中山2,500mに類似した舞台」で好走した馬で、そのレースにおけるPCIが低い馬(持久戦寄りのレースで結果を出している馬)が評価できる、ということになります。

参考までに、昨年(2021年)の有馬記念のレース結果を見ましょうか。
各馬のPCIの数値はここで確認できます。1着のエフフォーリアが52.1ですね。52.1は持久戦タイプのレースなので、エフフォーリアは中山芝2,500mレースの持久力戦で好走しているということが分かります。

一旦、PCIで見る過去の有馬記念の説明はここまで。

2022有馬記念出走馬の持久戦適正評価

先に結論から。

【持久戦向き(4頭)】→今回持久力面を評価
3.ボルドグフーシュ
10.ジャスティンパレス
13.タイトルホルダー(※ただしこいつは割と瞬発戦も行ける両刀使いです、恐るべしw)
16.ディープボンド

<※12/24追記:持久戦向きの上記4頭についての各懸念>
3.ボルドグフーシュ:脚質後ろ過ぎて届かないリスク、加えて福永さん騎乗で過剰人気の可能性
10.ジャスティンパレス:マーカンド騎乗がマイナス(彼は中山苦手&追いのスペシャリスト→タフ戦は馬を気持ちよく走らせる騎手の方が向いていると思う)
13.タイトルホルダー:ハナを切って自分の脚を余らせる瞬発力戦の方が持久戦より向いている可能性あり(昨年の有馬でも5着と馬券圏外だったし悪い面で少し気になる)、加えて海外帰りの調子面での懸念
16.ディープボンド:とにかくズブいので鞍上川田がうまく馬をコントロールできるか、加えて大外枠自体は勿論プラスではない

【持久戦向きだが、近走パフォ落ちで評価できない(2頭)】
4.アリストテレス
7.エフフォーリア
(※ともにエピファネイア産駒、早熟の血統の呪いか、、?)

【瞬発戦向き(6頭)】→今回は持久力面で割引
6.ヴェラアズール
8.ウインマイティー
9.イクイノックス
11.ラストドラフト
14.ボッケリーニ
15.ブレークアップ

【類似距離で好走できてないので評価対象外(4頭)】→好走歴ないため持久力面の裏付けなし、かつ各馬距離不安がある
1.アカイイト(※持久戦向き)
2.イズジョーノキセキ(※瞬発戦向き)
5.ジェラルディーナ(※持久戦向き)
12.ポタジェ(※持久戦向き)

上記は、ここまでの説明で述べたように
「中山2,500mに類似した舞台」で好走した馬で、そのレースにおけるPCIが低い馬(持久戦寄りのレースで結果を出している馬)
かどうか?を判断して仕分けしております。

具体例を紹介しておきます。
PCIから見て「6.ヴェラアズール」が瞬発戦向きだということを見てみましょう。

参戦レース全般のPCIを漠然と眺めても、あまり意味がありません。「『中山芝2,500m』に近い舞台で好走している」レースを中心に見て行く必要があります。
なぜなら「近い舞台で好走傾向のあるPCIを見る」ことで、この馬が同舞台(中山芝2,500m)の「瞬発戦向き」なのか「持久戦向き」なのかを判断するわけですから。

実際に見て行きましょう。
5走前が中山2,500m戦ですね。ここで3着。レースのPCI3は58.50。この馬のPCIは60.7です。「PCI3の値が高いほど、上がり3Fのタイムが相対的に速い=瞬発戦」という話をしましたよね。つまり脚が余っていて最後に瞬発力で勝つタイプのレース、ということです。
さらに、近6走がすべて2,400m以上の距離でいずれも1着or3着に好走していますが、全部PCI数値が55より高い状態ですよね。これらは瞬発戦で好走してきたということです。
一方、2,400m以上の距離で持久戦を経験したことがありません。凡走歴があるわけではないので「持久力もあるかもしれない、素質に期待」することはできるかもしれませんが、この近走6戦の強さは「持久戦に強い」ことを裏付けしたものではない、ということがお分かりいただけると思います。

今度は「16.ディープボンド」が持久戦向きだということを見てみましょう。

もう慣れてきたらパッと見で分かるレベルの持久戦向き。
距離長めの舞台で好走したときのPCIの低さをご覧ください。
4走前の阪神大賞典こそPCIが58.7と高めで比較的瞬発戦を制していますが、PCIが50前後のレースでの数値が続出。
持久戦になればなるほど、この馬は相対的に浮上するということになります。

ちょっと全頭説明するのはしんどいので2頭だけ代表例を挙げさせてもらいました。有馬記念の予想の参考に。
また、データを見るのがお好きな方はTARGETをどんどん使いこなしましょう。

一旦、説明は以上まで。
長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

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