見出し画像

松坂引退に寄せて

平成の怪物、松坂が引退した。
およそスターに恵まれない恵まれても出ていき帰ってこない
西武ライオンズにとって、久しぶりの大きな引退イベントだった。

およそ渡米前の松坂と在籍のかぶる選手は数少なかった。
生え抜き最年長の栗山中村がまだ出てこようかどうかもいう時期だ、さもありなんと思う。
西口、豊田、赤田、小関、松井稼、といった当時の面々は皆もう指導者側だ。
監督だった東尾はライオンズナイターで管を巻いている。
長い年月だった。

おかわり中村剛也は同い年なのだが、彼のコメントでハッとしたことがある。

夏の甲子園、横浜vsPL学園の大熱戦を見ていた。
正確には、途中親と遠出し、出先のショッピングセンターのテレビで途中経過を見て、カーラジオで経過を追いかけて、
また家に帰ってきてテレビを見る。
小学時代を横浜で過ごした僕ら一家にとって、
松坂の活躍は輝かしいものだった。
あれは中3の夏のこと。
当然に今のライオンズのスターも同じ試合を見ていたのだ。

その年は横浜ベイスターズが日本一で、
何となく松坂も横浜に行くものだと思っていた。
しかしドラフトで当たりを引いたのは西武だった。
当時は今のようにほぼ全入という訳ではなく
(現実、同じ年の新垣は大きな騒動になった)
よくよく思えば良くぞ来てくれたと思う。

当時の西武は2連覇して2回日本一を逃していた。
強くはあったが、黄金世代は皆チームを去っていた。
松井稼頭央が若手のホープとして定着し、西口がエースになったくらいの時期だ。
松坂の登場はそのまま西武に新たな輝きをもたらし、毎日のようにテレビに西武が映し出された。イチローフィーバーとビッグボスの「これからはパ・リーグです!」の間、まだまだそれは考えられいくらいすごいことだったのだ。
僕もまた夢中で新聞のスポーツ欄を、深夜のスポーツニュースを追いかけた。
まあ、未だに語り継がれるくらいその年の打線はひどかったが

大学に入り、大体西武線の近くに住んだ僕だが、
西武ドームに行ったのは大学最終年、2006年のこと。
当時はインボイス西武ドームとか言っていた。

15年前の写真が出てきた

3月の開幕戦、ドームはとかく寒かった。
外野席の芝生は気がつくと居場所もなくなっていた。
カブレラの腕は太く、チャンテ2が高らかに歌われていた。
端っこの方にはカブレラ地蔵。
トイレはとても汚かった。
(この時点で、屋根以外の部分は既に20年以上使われているのだ)
試合は途中で西口が捕まって負けた(´・ω・`)

その冒頭にWBC2006の報告セレモニーがあり、
今のところ松坂を生で見たのはそれっきりだ。
この時のWBC、松坂はMVP。

翌年松坂はアメリカへゆき、僕も遅ればせながら就職した。
この年のオープン戦に出向くと、あの汚かったトイレは見違えるほどキレイになっていた。
松坂の移籍で入ってきたお金で整備されたのだ。
今でも「メラドのトイレを使うやつは松坂の悪口を言えない」と冗談交じりに囁かれる。

それから長い時間が経った。
会社の先輩と西武ドームに出向き、引退間近の清原にお客が殺到するのを目撃したこと。
WBC2009,伝説のイチローの打席で社内のほとんどがヤフーにかじりついていたこと。
(この時も松坂はMVP)
当時の推しがNACK5で西武ドームで始球式をしたこと。

フィールドウォーク中に投球体験とかもできた
(一応投げてる人は伏せた)

そうこうしている内に色んなことが変わった。
推しは結婚して引退。
(仲の良かった石川梨華が野上と結婚したりした)
僕も職場を転々とし、DJを始め、イベントに関わり…
松坂も帰国、ソフトバンク、中日と投げる場所を転々としていった。
そして当時の選手たちは刻々と戦列を離れていった。

西武に松坂が戻ってきたときは何の期待もしていなかったけれど、それでも僕は嬉しかった。
しかしながら、終わりが来るのを遠目で見つめながら、チームの動向の方に気持ちが移ろう日々であったことも間違いない。

15年前と比べるとこれでもだいぶ違うなあ

コロナ禍で野球を見る時間が増え、球場に足を運ぶことも増やした。
昔は一番安い外野席だった僕も、
今は下から3番目くらいの内野席に座るようになった。
往年、寝そべって野球を見ていた外野の芝生はついに今年、指定席に変えられた。

ビールを飲むようにもなった

松坂の引退試合のチケットは当然買える訳もなく、また買えていても見には行けなかった。

だが今は、インターネット中継でパ・リーグの試合は全部見られる。
松坂が来た頃にはとても考えられなかった。

ネット越しに松坂が最後の5球を投げるのを見ていた。
先頭打者、高校の遥か下の後輩、近藤健介に四球。
マウンドに向かうコーチは当時のダブルエースだった西口だ。
松坂は笑って首を横に振り、マウンドを降りる。

そうしてスターがまた一人、僕の前を去っていった。
僕の心には、中学時代から今までの人生が波打つように去来していた。
長嶋茂雄の言葉にあるように、野球は人生なのだ。
僕達は人生の中で野球を見、野球の中に人生を見る。
スターはその輝きと共に、軌跡を映し出す案内人なのだ。
それ故に僕らは惜しみない拍手を送るのだろう。

ダメ元で申し込んだら当たりました

明日は引退セレモニーがファン感謝デーの中で行われる。
メットライフドームで2度目の松坂が引退セレモニーになるとは思わなかったがこれも縁なのだろう。
このクソ寒いのに何であの山の中に行かねばならんと思うとしんどくないわけではないが
スターの旅立ちを見守り、自らの来し方行く末に思いを馳せようと思う。

このためにDJの準備は終わらせたよ(´・ω・`)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?