バナナパフェ。

サンドイッチやパフェなど、

単品で食べるよりも何種類かの素材を組み合わせることで、

感動級の美味しさになる食べ物がある。

そして、これじゃなきゃ! という黄金の組み合わせがある。

例えばサンドイッチ。

白い食パンにハム、レタスじゃ、ちょっとあたり前すぎ。

いやいや、美味しいけれどね。

ベーグルなら、やっぱりクリームチーズとスモークサーモン。

甘い系でいくなら、クリームチーズとブルーベリーのジャムもいい。

苦味のあるオレンジママーレードの組み合わせも捨てがたい。

黒パンには、バターを塗って薄いスライスチーズときゅうり。

トーストのサンドイッチなら、ベーコン、レタス、

ほんの真ん中だけが半熟の目玉焼き。

トマトを入れないのは嫌いだから。

世の中で何が嫌いかっていえば、小学生のときから生トマト。

青臭くて、あの種のところのべちゃっ、とろんとした感じと、

果肉のしょわんしょわんした感触が苦手。

そんなことを言うと「今のトマトはフルーツみたいで美味しいよ」

「どこどこのトマトは本当に美味しいから食べてみなよ」と

皆さん、薦めてくださいますが、基本的にダメ。

大人ですから会食等出だされたら食べますが、

小さいときから避けていたので、

美味しいかどうかの判断がつかないというのが正直なところ。

昔、レストランの取材をしたときに、お店のシェフが

「うちのトマトは三浦の農家のもので、すごく美味しいんです。

ぜひ、食べてみてください」と真っ赤なトマトを差し出した。

もちろん、食べます。

笑顔でかじります。

う〜ん…。わからない…。

やっぱりトマトの味でしかないような…。

「美味しいでしょう」とのニコニコの言葉に、

「ええ」と作り笑いでごまかす。

イタリアンレストランに行ったときに、

「苦手なものはありますか?」と聞かれたので、

正直に「生のトマトが」と答えたら

イタリア人シェフに「マンマ、ミーア!」と返された。

さらにサンドイッチは、パンにトマトの味がつくのがダメ。

青臭さと水気がパンに移って…。ダメダメ。

炒めたり、焼いたり、火が入ったトマトや

トマトソースは大、大、大好物なんだけれど。

そこが我ながらわからない。

でも「生トマトと加熱されたトマトは別物なんです」と、

強く訴えたい。

で、サンドイッチはトマト抜き。

スパゲッティも組み合わせが大事。

ナポリタンなら、粗挽きじゃない安いウインナー、

玉ねぎ、ピーマン、缶詰のマッシュルーム。

太めの輪切りにしたズッキーニとアンチョビも美味しい。

コンビーフとキャベツも最高。黒こしょうをいっぱいね。

オイルサーディンとねぎだけでペペロンチーニ風というのも、

なんとなく大人の味。白ワインが飲みたくなる。

グラタンなら鶏肉と椎茸と玉ねぎが基本中の基本。

玉ねぎは粗く切ったほうが、食感と甘味が出て美味しい。

パン粉いっぱい。こんがりと焦げ目をつけて。

じゃがいも、ベーコン、玉ねぎも最高の組み合わせ。

ドイツ人万歳。ビールに合う、合う。

豆腐、ねぎ、油揚げ、茄子、大根、キャベツ、ほうれん草…。

お味噌汁もまさに組み合わせの世界だ。

そんなことを考えていると切りがなくなるので、

最初のパフェに戻ろう。

黄金の組み合わせは、

バナナ×バニラアイスクリーム×チョコレート×生クリーム。

もう、これしかない!

このマッチングを最初に考えたひとは、

天才! ブラボー! 神に感謝! っていうくらいすばらしい。

どれひとつが欠けてもダメ。

甘くて、冷たくて、クリーミー。

女性なら誰しもとろけてしまう組み合わせだと思う。

昔、あるマンガで、主人公の女のコがチョコレートパフェを食べたくて、

板チョコと確かアイスクリームを食べて代用品にするんだけれど、

やっぱり違う…というようなシーンがあった。

そう、あれって、縦長のグラジオラスのお花みたいな、

パフェグラスにみんな入っているから、美味しいんだよね。

細長いシルバーのパフェスプーンで、

まず、生クリームをすくってひとなめ。

まだ固いアイスクリームを削るようにすくう。

小さいフォークで斜め切りのバナナをひとつ食べる。

スプーンを入れるごとに、

甘いチョコレートソースがからまる。

だんだんと、下の層へ。

食べながら、ときどき「あと、どのくらいあるかなぁ」って、

ちらっとグラスを横から確認。

残り1/4ぐらい下まで到達したときには、

アイスクリームもほどよく溶けて、

チョコレートとスポンジやコーンフレークスに混じって、

見た目はちょっと…という感じだけれど、

クリームでしっとりとして、これがまた美味しい。

最初から最後まで幸福の時間が続く喜び。

そして食べ終わったときの達成感。

う〜ん、幸せ。

住んでいた町には大きな神社があって、駅からその神社に続く道の

入り口に「イワタ」という喫茶店がある。

厚みのあるホットケーキが有名なのだけれど、

幼かったわたしは断然パフェ。

そんなに大きな店ではないけれど、

奥に進むと小さな中庭というかテラスがあり、

明るい日差しが差し込む窓際が特等席。

今はずっと行っていないから、変わってしまったかもしれない。

買い物の帰りなどに、母親に連れて行ってもらうと嬉しかった。

席に座ると「なに、食べる?」と母親が尋ねる。

メニューを見ながら、

いちごパフェとバナナパフェ、どっちにしようかさんざん迷って、

「バナナパフェにする」と答える。

結果はいつもバナナなのにそんな儀式をいつも繰り返していた。

母親は、そんなときもいつもコーヒーだけだった。

甘い物に興味がなかったのかな? 

いやいや、家ではケーキもどらやきも食べる。

パフェなんて子どもの食べるものだと思っていたのかな?

今のわたしは、子どもがいても、

きっと率先して「バナナパフェ! 」って頼んでしまうだろうな。

まったくもって大人になっていない。

どこで大人になることをあきらめてしまったのだろう。




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