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カレーとビールと野球。

年に数回、球場に野球を見に行く。

家にはテレビもないし、
熱心に応援しているチームがあって追いかけているわけじゃないけれど、
野球そのものが楽しいと思うし、なんといっても球場の雰囲気が好き。
ヒットやエラーがあるたびに
「ああああっ」「も〜!」「きゃああ」「やったぁ」と何も考えずに、
声を出すのも楽しい。

屋外であり、都内でアクセスがいいこともあり、
いちばん好きなのは神宮球場。
ビルが立ち並ぶ界隈にぽこんとある緑の外苑。
古めかしい茶色のアーチの回廊が、ぐるりと小さな球場を囲んでいる。
球場内に入れば、応援の声で賑やかだけれど、
周囲は意外と静かで、緑が多いせいか空気もひんやりとしている。

ゲートをくぐり、階段を上がり、四角く切り取られた出口を抜けると、
大きく全方位に視界が開ける。
緑の芝生、赤茶色の土が盛られたマウンド、
白いベース、そしてスタンドの青いシート。
デイゲームなら青空。ナイトゲームなら
紺と黒が混じったような夜空が落ちてくるように感じる。

開幕の頃はまだ肌寒いけれど、
夏の夜はスタンドに吹き抜けていく風が心地よい。
人工の涼しさではなく、自然の風のひんやりと優しい肌あたり。
夏は花火も上がるし、それになんといってもビールが美味しい。
「ビールいかがですかぁ」と声をはり上げる、
売り子の女の子も元気でかわいい。

食べ物はいろいろあるけれど、屋台と一緒で昔からある
なんでもないメニューがいい。焼きそば、タコ焼き、
それにカレ−ライス。

試合の流れを見ながら、
「買いに行っている間に点を取られたらやだなぁ」と思いつつ、
お財布を持って売店へ急ぐ。
「カレーライスください」
手慣れた店員さんからプラスチックの器に入った
カレーライスを受け取り、ごはんの横に福神漬けを盛って、
またスタンドへ戻る。
お肉はいったいどこ? みたいなカレーだけど、
それで十分美味しい。いや、これでなきゃ。

目線はグラウンドを見つめながらも、
プラスチックのスープンでごはんをとカレーをすくい口に運ぶ。
美味しい。美味しい。楽しい。楽しい。
ビールもごくごく。もう一杯おかわりしようかな。
気分も盛り上がってくる。       

日本の国に野球があってよかった。
カレーライスがあってよかった。
そしてビールも!

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