機内食は美しく。

もう、いい大人なのに、

情けないことに食べるのが下手。

長年の付き合いの友人にもずっと怒られているのだけれど、

お箸がちゃんと持てない。

煮豆はつまめます。

お茶碗についたごはん粒ひとつまで食べられます。

焼き魚をキレイに食べることもできます。

でも、微妙に持ち方が正しくない。

そして、よくこぼす。

ミートソース、カレーうどん、気がつけば服に点々のシミが…。

ということはよくある。

つい話に夢中になっちゃって、注意力散漫に。

いやいや、すみません、言い訳です。

レストランに行って、白いキレイなテーブルクロスがかかっていると

ちょっと緊張する。汚しちゃったらどうしよう。

そして、気をつけているのにソースなどをこぼす。

ぽたっ。

わ、やっちゃった。

お皿やグラス、ナプキンなどでさりげなく隠すけれど、

きっとバレているはず。

本当にいい大人なのに情けないと思う。

そんなわたしが、ひとつだけ心がけていることがある。

それは機内食をキレイに食べること。

エコノミークラスの座席は、

狭いし、隣の席との距離も近く、テーブルも小さい。

そこに運ばれてくる夕食や昼ごはんをキレイに食べることは

なかなか難しい。カトラリーやおしぼりの入っていた袋、

塩や胡椒の袋、コーヒー用の砂糖の袋やコーヒーミルクのポーション、

それに料理の上にかけてあるアルミのフタやラップなど、

どんどんゴミが出る。

食べ終わって、狭いテーブルのお皿の上に、

ぐしゃっと丸めたソースのついたナプキンや

ゴミ、ビールの缶や、ワインの小瓶、プラスチックのカップなどを

山のように乗せているひともいるけれど、あれが苦手。

見た目にやっぱりキレイじゃない。

以前、乗った国際線の飛行機で、

パンを投げるように渡すCAがいて、ちょっと悲しかった。

「エコノミーの乗客は荷物と同じ、機内食はエサと同じ」

そんなことを言うひともいる。

でも、汚く食べるのことは、

自分でその食事をエサにしちゃうことじゃないか。

だから、なるべくキレイに食べたいと思う。

エプロンをしたCAが、

狭い通路を飲み物や機内食を配るワゴンを押してくる。

あちこちの席から、パタンパタンとテーブルを出す音がする。

眠っていた体勢からぐ〜っと伸びをして、ヘッドフォンを外す。

リクライニングの椅子を戻し小さなテーブルを出す。

かちゃかちゃと音を立てながらトレーが置かれる。

飲み物は大抵、炭酸入りの水かオレンジジュースをお願いする。

飛行機の中ではお酒を飲む気にはあまりならない。

肉料理などが入った、長方形の深皿のアルミのふたをとる。

そのまま、お皿の下に敷いて場所を取らないようにする。

カトラリーの入ったビニールの袋や、

サラダやデザートの上にかかったラップは、

小さくまとめてお皿の横に置く。

パンはすぐに固くなっちゃうから早めに。

バターやクリームチーズをナイフで少しずつ塗りながら食べる。

袋入りのクラッカーなどは、あとで食べようと座席のポケットやバッグに。

食べ終わったら、お皿の中にカトラリーを入れて

もう一度アルミのフタをする。ナプキンを折り畳んでお皿の横や、

下に置く。見た目もこれならすっきり。

ごちそうさまでした。

コーヒーやお茶を飲む用のカップと、ミルクとマドラー、

小さなカップに入ったミネラルウォーターだけ残して下げてもらったら、

ゆっくりとコーヒータイム。

コペンハーゲンやヘルシンキに行く便なら、コーヒーが濃くて美味しい。

窓の外に広がるのは、青い空と白い雲海。

昔のひとは知ることがなかった、神様だけの風景だといつも思う。

座席の前のモニターで、自分が今いる位置を確かめる。

まだまだロシア上空。広いぜロシア。

さて、音楽でも聴きながら、読書でもしましょうか。






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