彼女のこと
ボクが彼女を知ったのは、中学校の卒業式の時だった。
長い式が終わって、体育館から開放された卒業生たちは和気藹々と仲の良かった子たちやお世話になった先生たちと会話してる。
涙ぐんだ女の子を慰めようとしている子も。
笑顔で写真撮影していう子もいる。
卒業だ。
なんとなく実感がわかない。
明日からはもうこの学校には通わない。
3年間通った学び舎は予算が足らないとかで改修工事もされずに古びたままで、設備は満足いくものなんてなかったけれども。
それでも、なんだか感慨深いものがあった。
だから、ボクはなんともなしに友人たちの輪から離れて、校舎を見上げていた。
3年間通った、今日見納めとなる学び舎を。
「あれ」
そんな時に校内に人影を見た。
今日は卒業式。校内は開放されているけれどもついさきほど終わったばかりの式典の後にすぐに校舎にいくだろうか。
しかもさっきの人影はひとりだったように思う。
校内を見て回るにしても誰かと共に見て回るのではないだろうか。
いつもなら、一そんな人もいるんだな気にも止めないのに。
その時は、なんとなくその人影がが気になって、影を追うように校舎の中に足を踏み入れた。
今日最後の、先程もう二度と足を踏み入れることはないと別れを告げたはずだった校内に。
それがボクと白瀬冬火(しらせふゆひ)という不可思議で不思議で不安定で不愉快でふしだらでどうしようもない女の子との、長い付き合いのはじまりとなる出会い。
いわば、入り口だったわけだ。
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