母とチョコレート

母に感謝を伝えるなら、お手紙を書いてチョコレートも一緒に添えようと思います。

私の母の好物はチョコレートです。私と姉弟がわからないようチョコレートを冷蔵庫の野菜室に隠して一人食べていました。
子供に隠れて食べるしかなかったからです。

私の姉弟はみな、卵と牛乳の食物アレルギーを持っています。いまではだいぶ落ち着き、食べた翌日にちょっと鼻水がでる軽度な花粉症レベルですが、小さいときはおなかを壊すことやお尻に蕁麻疹ができることがありました。特に重度だった姉はチョコレート食べて失神、救急車に運ばれたこともありました。

大好物だけど、子供には共有できない。かわいそうだから目の前では食べられない。
そのため母は一人で家にいるときだけこっそり食べていました。ただ、子供だって何となくは気付きます。ある日、幼稚園のお友達の家ではじめて食べた麦チョコがとても美味しかったからこっそり母がいない間に冷蔵庫を開けて、そこにあったチョコレートを食べてしまいました。
ちょっとしなびた野菜をかき分けて、手づかみで麦チョコを片手2回分すくって食べたとき、甘い味が口の中で広がると同時に心臓がバクバクしはじめました。冷蔵庫の隅に一粒落としてしまったからでしょうか。母にはすぐに見つかってしまい、怒られて家の廊下で真っ暗闇の中、年齢の数と同じ5分間、そこで反省をさせられました。

自分の年齢が、私生んだときの母の年齢と同じになってようやく伴侶をもって子供を育てることの大変さが想像できるようになりました。いまよりもアレルギーに関する情報も多くはない中、いつか子供たちが卵も牛乳も食べたいときは食べられるようにと、独学で食事療法を学んでいました。家では卵や牛乳の製品は取り入れず、自然食・オーガニックフードを取り入れて毎日ご飯支度をしてくれました。小学校で漢字を習ってからは私も食品の原材料確認をしていましたが、それはスーパーに行く母を真似てのことでした。当時は当たり前の光景でしたが、それが確実に今の私の健康につながっているのです。

次の帰省では、チョコレートをもっていこうと思います。デパートのちょっといいチョコレートと麦チョコを。麦チョコにつけた黄色のリボンに笑ってもらいながら、わたしの目の前で堂々と美味しそうに食べてもらうのです。

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