令和6年予備試験論文 憲法


設問1
1 A町内会は国ではない認可地縁団体であるため、憲法が直接適用されないのが原則である。しかしA町内会は加入率が100%であり、その目的は「会員相互の親睦と福祉の向上…資すること」という地方自治体の本旨憲法92条といえるものだから実質的には地方自治体として機能している。したがって私人間効力としてではなく憲法による制約を直接受けるものと解すべきである。
2 A町内会が催事挙行費を一律徴収した町内会費から支出することは、20条1項、および20条3項、89条に反し違憲ではないか。20条は信教の自由を実質的に保障するために国による特定の宗教団体との関わり合いを禁止することを理想としている。しかし、宗教活動も文化としての側面を有することがある現代において国と宗教との関わり合いを完全に遮断することは困難である。そこで宗教との関わり合いが相当とされる限度を超える場合は違憲になると解する。その判断は、宗教的行為の目的、一般人からの評価、その行為にいたる経緯などを総合的に考慮して行う。
3 一律徴収した町内会費から催事挙行費を支出する目的は、C神社の運営保全にかかる費用を徴収し、神道形式の催事をとり行ったり、伝統舞踊の文化を承継したりすることでありその目的が宗教的意義を有することは明らかである。
たしかに、C神社は宗教法人ではなく、氏子名簿もない。そしてC神社には神職が常駐していないし、日々のお祀りはA町内会の役員が行っている。さらにC神社はA町内会と同じ集会所のにあり入り口の表記も並列であり、集会所は大きな一部屋からなるものだから、どちらが集会場の主であるかも明確でない。そうするとこのような施設への支出は一般人からしてさしたる宗教的意義を感じないとも思える。しかし、C神社には御神体が安置されていて、年に2回は派遣された宮司が祝詞をあげられ、神事も行われる。そしてC神社の催事を住民のほとんどがA集落の重要な年中行事と認識している。そうすると一般人からして、C神社への支出は特定の宗教の助長に繋がるものといえる。
C神社はかつて火事で神社建物が失われてしまったことで集会所の中に設置された。その後町内会費が徴収されその中の1000円がC神社に支出されるようになった。
これらを総合するとC神社への支出は宗教的意義を相当とされる限度を超えているものというべきである。
4 したがって、催事挙行費の支出は憲法20条3項に反する。
5 また89条は信教の自由を制度的に保障する再度だから上記と同様の判断基準で判断すると催事挙行費の支出は89条にも反する。
6 よって催事挙行費の支出は認められない。
設問2
1 一律徴収はXの信教の自由を侵害し違憲ではないか。
2 自らの望まない宗教行為への参加を強制されないことが保障される20条2項によって、自らの望まない宗教団体へ支出させられない自由も保障される。
3 A町内会はA集落という人口が170人しかいない地域の加入率100%の団体である。このような地域社会では非加入者はすぐに特定されうるし村八分のような扱いを受ける可能性もある。そうであれば実質的にA町内会への参加は必須であり、町内会費の支払も事実上拒否できない。町内会費からC神社への支出がされることでXは自らの望まない宗教団体への支出を余儀なくされるからXの信教の自由への制約が認められる。
4 望まない支出をさせられない自由は自らの信教の自由に繋がる重要な権利である。もっともA町内会の自治体としての裁量権も否定できない。そこで制約の目的が重要であり、手段が実質的関連性を有するかで判断する。
5 一律徴収の目的は、C神社の催事挙行費を効率よく徴収しひいてはC神社の存続や、催事を通じ、地域の文化を継承することにあるから重要な目的と言える。
一律徴収することで効率よく催事挙行費を徴収できるから手段適合性もあるといえる。
しかし、一律徴収をしないと催事挙行費の徴収に支障をきたすというのは会員Hがその方が楽であるという理由で発言した事由に過ぎないから実際にそのような支障があるかは不明である。したがって催事挙行費としての支出を望むもののみから徴収し、Xのように宗教的支出を望まないものにはA町内会費7000円のみを徴収するという方法でも十分に目的を達成できると言えるから手段必要性はない。したがって手段が実質的関連性を欠く。
6  よって一律徴収は20条2項に反して違憲だから許されない。以上

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