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香川県の方言や習慣、西と東の違い

(はじめに)


 
 皆さん今年(平成5年(2023年))後期)のNHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』のヒロインは、「東京ブギウギ」で知られる歌手 笠置シヅ子さんですが、笠置シヅ子さんは、手袋生産日本一の町、香川県東部の大川郡引田町(現:東かがわ市)の、すぐお隣の村のご出身で、大正4年(1915年)生まれです。大川郡は、香川県の東の端です。
 ここで、笠置さんの言葉はNHK朝の連続テレビ小説を見ていると、ほとんど関西弁のように聞こえますが、生まれの言葉(ネーティブランゲージ)は、東讃岐弁でしょう。私も、香川県の出身ですが、笠置さんとは反対に香川県の西の端の方の三豊市の出身なので、私は西讃岐弁がネーティブランゲージです。香川県の方言は全県同じ様に思われることが多いですが、実は同じ讃岐弁といっても、西讃と東讃ではかなり違います。結婚式や初孫誕生の時の祝い方などの習慣もだいぶ違います。本拙文はその、香川県の方言や習慣の西と東の違いについて、私が今までに知っていることをまとめたものです。皆様のご参考になれば嬉しいです。
 

1.    讃岐弁、東と西の違い


 
私が昭和56年(1981年)に東芝の新入社員の研修で、香川県高松市のダイエーの電気売り場で販売実習の為二ヶ月半働いていましたが、その時聞いた笑い話です。今でもそのようですが、量販店の電気売り場には、ダイエーなどの社員は一人しかおらず、後は14・5人全員が、東芝や日立などの電気会社からのヘルパーでした。そこで、同時期にヘルパーに来ていた東芝の先輩の工員さんから聞いた笑い話です。
 ダイエー高松に来たお客さんがテレビのわくを触りながら、「このテレビいた!?」と電気売り場のある店員に聞きました。その人は、地元のダイエーの店員ではなく、関東の出身の東芝の工員さんだったので、意味をとり違いえて、「これは、板じゃない、プラスチックだ。」と答えました。東讃岐弁の「いた」は「いただきます」のなまったもので、これ下さいといったのでした。これを聞いた時、私は大笑いしました。
 三豊・観音寺地区の出身の私は、西讃岐弁なので、高松近辺の東讃岐弁の「いた」は使いませんが、同じ県なので、意味は分かります。しかし、西讃岐の人は、「いた」とは言わず必ず「つか」といいます。同じ県でも少し言葉が違うのをこういう時実感します。方言は、面白いですね。
 また、「~だから」という意味の格助詞では、東讃岐弁では「けん」と言い、西讃岐弁では、「きん」と言います。それで、手紙を「かかんきんこん、こんきんかかん(書かないから来ない、来ないから書かない)」という、面白い表現が、西讃岐弁では使われます。(ご参照:https://note.com/ko52517/n/n2649c1d6a475?from=notice )

 

2. 「いた・けん」圏と「つか・きん」圏の境 考察


 
 ようく観察していると、満濃町の人は、「つか」と「きん」と言っていますね。高松の人は、「いた」と「けん」と言いますよね。三豊・観音寺からみると満濃はかなり高松に近いのですが、「つか・きん」圏のようですね。満濃って三豊・観音寺からは象頭山越えて行かないといけないので、随分遠いと思っていたのですが、地図をよく見ると、高松より三豊のほうに近いですね。となると、坂出と綾歌郡のあたりの人々が「つか・きん」って言っているか、「いた・けん」と言っているかですね。この辺りが境の様ですので、昔の高松藩と丸亀藩の領地の境が、このように、「いた・けん」圏と「つか・きん」圏に分かれているんじゃないでしょうか。どなたか、このことが証明できる文献をお知りでしたら教えて頂ければ大変嬉しいです

3. 発音に関する丸亀藩と高松藩の違い


 
 東讃岐弁の高松の人の発音で、特に気がつくのはkhの発音があることですね。「いかぁんわの」のかぁがkaではなくてkhaになっています。これって、中国語の有気音のように激しい風が出ています。韓国語の激音と同じですよね。これって、西讃岐弁の三豊・観音寺の人の発音にはないですね。
 それと、三豊・観音寺(最近この地方をミカン(三観)地区と呼ぶらしい)の人は今は「かんおんじ」って発音していますが、私の親の時代までは「くぁんおんじ」でしたね。つまり、kaじゃなくてkwaというkw発音が歴然とありました。わが母校の偉人大平元首相も「くぁんさい(関西)」「くぁんとう(関東)」と国会でも言っていました。kw発音は、三豊・観音寺ではすたれましたが、高松にはまだありますか。どなたか教えていただければ幸いです。
 おお、そういえば、関西学院大学の英語表記はkwanseigakuinでkwですね。「かんせいがくいん」じゃなくて本当は「くぁんせいがくいん」なんですね。名古屋市立大学のK山先生が、関西学院大学に入学した時、徹底的に自分の大学名をkwの発音で正しく言えるように、先輩から、教え込まれたとか言っておられました。標準語にはない発音ですからね。
 

4.  高松藩と丸亀藩の習慣の違い:結婚の嫁土産「おいり」



 近所で嫁入りがあると、子供たちは、そのおうちを訪ねて、お嫁さんの御土産の「おいり」を必ずもらいに行っていました。おいりは、もち米から作った小さい球状のおかきみたいなもので、五色に色づけられ、ニッキの味がします。子供たちにはそれをもらうのが楽しみでした。
 このおいりの習慣、香川県の東半分つまり旧高松藩の方には有りません。私は大きくなってから初めてそのことを知りました。漠然と香川県全体にある習慣だと思って居たのです。Wikipediaに当ってみると、このおいりの習慣は、香川県の西半分と、愛媛県でも香川県に近い、四国中央市、新居浜市、西条市にまであるそうです。でも、全国的にこの辺りしかなく、他にはこのような習慣はないようです。
(ご参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%84%E3%82%8A )
 
 

5. 高松藩と丸亀藩の習慣の違い:初孫誕生で贈る魚の違い


 
 娘が結婚して、初孫が生まれたというと、丸亀藩の地域では、娘の実家の両親は、それっと言って、チヌ(=クロダイ)を嫁ぎ先に届けます。これはお祝いの意味と、産後の肥立ちを一日でも早く回復してもらいたいという親心です。しかし、高松藩の地域では、チヌは「血が狂う」(産後うつ病になる)と言って、絶対にそうしません。クロダイ(チヌ)ではなく、普通の赤いタイを贈ると言っていました。これ、私の母親からも5,60年前に聞いたし、30年前(42年前)東芝の新人研修で泊っていた高松市の旅館のおばさんも同じことを言っていました。
 
 

(おわりに)


 
香川県は全国での1,2を争う、小さな県なのに、なぜ、隣同士の丸亀藩と高松藩では、こんな違いが生まれたんでしょうか?極めて面白い話だなあと思います。高松藩は親藩で、丸亀藩は外様藩だったので、お互いに、間諜(スパイ)を防止するためでしょうか?
 
 
 
平成23年(2011年) 2月6-7日 随筆
令和 5年(2023年)10月23日  加筆
 
 
*なお、冒頭のおいりの写真は、下記のURLのウィッキペディアから引用させて頂きました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%84%E3%82%8A
最終更新 2023年7月25日 (火) 07:24

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