vividbird「人間の成分」歌詞解剖
曲名にならって「解剖」としましたが、中身はいつもの歌詞考察です。
今作の作詞は今Pが「低く見積もって天才」と絶賛するヨロコビ氏。他にも多くのビドバ曲の作詞を手がけています。言葉に対してセンスがもの凄く鋭いです。
当初のほほーんと「哲学的な歌だなぁ」と聞いていたのですが、実際に歌詞に起こしてみると哲学は0.2%くらいで99.8%恋愛でした。アイドルとオタクの物語的な解釈もできる…なんてこともなく、ド直球の恋愛ソングです。
聴いているだけでは分かりにくいですが、どアップからカメラが引いて行って全体像が見えて来るような歌詞になっています。
まず、この歌詞の主人公は数年間付き合った彼と別れました。以前の2人の関係は、永遠に続くイーハトーブ(理想郷)のように感じており、それを何度も確かめ合っていました。しかし、長かった恋愛期間に反比例して、瞬く間にすれ違い、冷めていってしまいました。
そして、別れを告げ、ドアを閉めた瞬間にふと考えたのです。
「私たち何でできているの?」と。
サビ前半の時系列が今、後半が未来となっています。いったん未来の方は無視して進めます。
冷めてしまった主人公には、愛や恋などという感情は全て嘘のように思えてしまします。あなたの成分=あなたでなくちゃダメな理由、そんなものはないと思ってしまったのでしょう。
彼と別れた主人公は煙草を吸います。消えていく煙のように、2人の未来の可能性が無くなっていきます。嫌な残り香のような思い出だけを残して。
ふと懐かしい頃を思い出します。主人公も彼も、見た目から趣味から今とは違っていました。あの頃の瑞々しい感動の数々はどこへいってしまったんでしょう。
「ビビッと」とグループ名に引っかけた表現が出てくるのは気が利いていますね。
ここで場面が急展開します。おそらく、彼が追いかけて来て、何か恥ずかしい愛の台詞でも叫んだのでしょうか。それに対して何か返そうとするのですが、照れくささが邪魔してしまいます。「もっとマシな言葉ないの?」と自分にダメ出ししたくなります。
でも、慣れてしまった感情の中に感じた照れくささ。あの頃の気持ちを思い出しました。理由なんてどうでもいいから、もう一度彼と付き合いたい。それが主人公の素直な想いでした。
続きましては、圧倒的なナイスバディではありません、倒置法です。 「圧倒的な何かがない、この体を人にしてよ」ですね。人間のゲノムは他人と0.2%しか変わらないそうですが、その0.2%が足りない、人になれない=自分を見失っているということに置き換えられると思います。
恋愛をして、自分に足りない何か、体が求める何かを埋めていくことで人になる。それが、生きているということなんだ、とこの物語は終わります。
「それがなくても息していける0.2%こそがあなたをあなたたらしめ、わたしをわたしたらしめるのです」
これは三橋真子さんの言葉です。
この記事に辿り着いた人は、ほとんど全員がアイドルオタクだと思います。皆さんはライブハウスでしか呼吸ができないのでしょうか、アイドルとチェキを撮らないと死んでしまうのでしょうか。違いますよね。
チェキに2000円使うより、おいしいご飯を食べた方がよっぽど生きるのに、健康を保つのに役に立つ!そんなことはわかっているんです。わかっていても推しに会いに行ってしまうのです。
その気持ち、衝動の中に「自分自身」があるのではないでしょうか。
…気持ち悪い言葉が出て来ないうちに、このへんでお開きにしたいと思います(笑)。ありがとうございました。