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アルプスに咲く花 -Alpinestar

アルパインスターという花がある。エーデルワイスと言った方が一般的な通りは良いか。

この花は高地にしか咲かず、アルプスのもっとも高いところに咲く花だ。つまりはその高みに行った者だけが見られる花でもある。

Alpinestarsといえばライディングブーツのメーカとして有名だが、そこのブランド名の由来でもある。

ハイキュー!!というアニメ(漫画)があるが、それを見ていて自身の高校時代、チームスポーツを通して「高みを目指すことの重要さ」を身をもって経験したのを思い出したので少し書き残してみようと思う。


子供の頃、比較的運動神経が良かったオレは様々なスポーツを体験する機会を得た。何をやってもそこそこできたがために、チームスポーツは他人に足を引っ張られる感が強く、面白いと思っていなかった。そんなチームスポーツが面白いと初めて感じたのは高校の本職だったバスケだった。

きっかけは、高校教諭のバスケ指導者向けの講習があって、そのモデルチームをやるか?と言われた時だった。当時はよく分かってなかったが皆と相談し、「まあ何か面白そうやしやろうや」って軽いノリで「やります」と返事をした。
そして当日、よく分からないまま、ユニフォームを着て、選手入場。観客席には見たことある先生やその他の先生が数十人。その中で何か偉い人からプレイの指導を受けた。それを観客席の顧問たちが見守っていて、ああ、これは偉い人が「オレたちへの指導方法」を「顧問に指導」しているのだと、その場に立ってようやく理解した(笑)

この時受けた指導で一番印象的だったのは(少し専門的な話になっていくが)ドリブルが使えない状況でディフェンスからプレッシャーを受けた時の対応だ。この時、オフェンス側はそのプレッシャーから逃れるにはバックターンをすれば意外と易々と抜けられることを指導して頂いた。

その後、実際にオレがオフェンス側の時にそんな状況になった。その瞬間、なかなか頭の切れるチームメイトがディフェンス側からプレッシャーを掛けてきた。おっと、と一瞬考えたオレ、今習ったばっかだったな、とバックターンをすると見事なほどあっけなく、綺麗に交わせた。

そこでその偉い人が「ストップ!」と入った。
「今のはさっき教えたことを実際にやってみてくれたんだよな?」とオレに確認があり、「こういう時、必ずプレイヤーを褒めてやってください」と偉い人は観客席の各校の顧問たちに訴えた。鼻高々のオレ(笑)(ホントに褒められるべき陰の功労者はその練習の機会をくれたチームメイトなんだけど(笑))

凄い、なんか面白い、スポーツにもちゃんと理論があるんだとその時、恥ずかしながら初めて知った。そして後日、NBAを見てると、プロのプレイヤーは皆当たり前のようにやってた。そこに一番感動した。

その後もリバウンドの落ちる方向の確率、その為のポジションの取り方、スクリーンアウトの仕方、スクリーンの後のロールオフの重要さ…理屈と言うものを叩き込まれた。役に立たないケースもあるが、他のプレイヤーはそれをやっている前提があれば確実に攻撃や守備の幅は広がる。まだいないところに確実に後追いで入ってくるプレイヤーに対して、針の穴を通すようにパスを送る、この辺に投げときゃ誰かいるはずと投げたところにフレーム外からプレイヤーが飛び込む、逆に見えないところからいきなりボールが手元にある、なんてことも起こる。そういう経験を重ねていって初めて、「チームスポーツってめちゃくちゃおもしれー!」と思った。

それまで元々「自分だけができる」という低次元な水域にしかいなかったからわからなかっただけなのだ。高みに行けば、こんなに面白いことが待っている。これはオレの大きな成功体験になった。

一方でその為にはチームのレベルが合っている事が重要で、大学のサークルみたいなところではオレの望むレベルのバスケは出来ず「体育会系のバスケ部はあちらです」と軽くあしらわれる始末だった。

ではどうすれば、バスケに限らずこの面白い領域に飛び込めるのか。

手っ取り早いのはテッペンを目指す事だ。上を目指して行けば必ず同じ方向に向かう人に出会える。下っていく者、登る意志のない者に構う必要などない。自分がとにかく向かう先を決め、そこに向かって邁進していく。そうすれば自ずと会える人間というのは厳選される。

ハイキュー!!を見ているとチームメイトそれぞれが、お互いがお互いの期待に応えるべく努力、切磋琢磨を繰り返す姿勢にこちらまで嬉しくなってしまった。日向翔陽の「オレ…ここに来れてよかった!」ってセリフが思い切り突き刺さってね。

頑張ってると「意識高い」と小馬鹿にする者も中には出てくるが、気にしちゃいけない。疾走り続け、登り続けていれば、必ずいつか分かってくれる人は現れる。そしてそれはかけがえのない友人となる。

己の半生も振り返りながら、そんなことを、改めて。

-了-


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