見出し画像

3000m級登山(後編) 〜北アルプスの洗礼

雄山に登頂し、頂上でしばしくつろぎ、コーヒーを飲む。やりたかった3000mカフェでご満悦。

日本で初めて認定された氷河をバックに、一杯。

この日は翌日が荒天なこともあり、早ければ夕方には崩れるかも、と言う懸念はあったが、行動中は持つだろうと言う思いもあった。
ところが、明らかに雲行きが怪しい。そして雲の動きがめちゃくちゃ速い。コレは思ってるより早く崩れるかも知れない。
装備はあるが、天候が悪いと危険度は増す。
ほうじ茶を啜る友人に早めに下山しようと促し、さっさと出発する。
すると出発するや否やパラっとし始めた。

「来たな」

即座にレインウェアを着る。すると1分もしない内に一気に吹雪に。マジか。

ただ、私的には「コレだ!」と天啓を得たような感覚を得た。
「山の天気は変わりやすい」そんな昔からの話をリアルに感じる。そしてさっきまで穏やかだった天気が雨どころか吹雪だ。まだそこまで強烈ではないのでホワイトアウトするようなものではないが、その片鱗は味わえた。

「嗚呼!北アルプスだ!」

この日、一番そう思った。

立山から室堂の雄大な景色を見ても、遠くに見える槍ヶ岳をみても、剱岳を見ても、凍った植物を見ても、ライチョウの足跡を見ても、素晴らしいとは思っても「北アルプスに来た」と言う実感はなかった。
サーキットを走ってみて、何だ、意外とみんな大したことねーな、と思っていたのだが、一番速い2Sってクラスを走った初日、圧倒的な速度差でオレをインから差し、岡山国際のダブルヘアピンの入口でクルッとコッチを向き、「いかん、あの人飛んだ」と思った瞬間、フロントを軽く持ち上げながら猛然と加速していった人を見つけた時の感覚。

「来た甲斐があった!」

そう思う瞬間。オレにとってこの吹雪はそれに等しいものだった。

周りにはチラホラとコンビニのカッパみたいなのを着てる人もいれば、カッパすら無い人もいる。正気かと言いたいがまあ、ココでは珍しくもないだろう。せいぜい死なないことを祈るぐらいしか今のオレにはできない。

一の越山荘まで再び降りてきたところでとりあえずトイレを借りる。

すると友人を待っている時に、1人の年配の男性が同じく雄山から降りて来た。

山に詳しい人には分かるだろうが、レインウェアはモンベルのストームクルーザーの使用率は圧倒的に高い。とりあえずコレ持っとけ的な物だ。ところがその人はアークテリクスのベータARと言う、緊急用のカッパにするにはもったいないぐらいの代物を着ていた。恐らく悪天候でもガンガン登ったり、普段からハードシェル代わりに使っているんだろう。その他の装備も年期が入っていて、ベテランぽい雰囲気がビンビン出てる。その人に声を掛けられた。

「降ってきたねぇ」
「ですねぇ。思ったより早かったですね。」

一瞬、おっ、と言う顔をした男性は
「カッパも無い人もいれば、靴もスニーカー、なんてのも沢山いたねぇ…一般の人は天気予報とか見ないんだろうなぁ…」
と周囲の軽装を周囲に聞こえない音量でぼやき始めた(笑)

それが何か嬉しく感じた。コレだけベテランの方に仲間意識持ってもらえるんだな、オレ、って。(笑)
それを北アルプスの中で聞けたと言うのが、プロローグの中で触れた「北アルプスに行くタイミングを決めあぐねていた」オレへの答えに聞こえた。オレはココにいておかしくない人間なんだな、って。

その後は雨に変わった中を淡々と歩き難い石畳の道を歩き、室堂まで帰還し、アルペンルートを経由してホテルまで。

二夜連続の宴会と反省会をして、来年の「廊下は走るな!プロジェクト2023」を立案。
こうなったらトコトンやってやらぁ!と、お互いの意思だけ確認し、今回の山行は終了。

たかがマグロと侮ることなかれ。美味。

北アルプス行きの切符を得たオレも、もう遠慮はしないぜ。
リミッターカットだ。

-了-

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?