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近くて、遠い、友人。 -My influencer

Facebookでしばらく連絡取れてない友人からいいねが来た。

群馬に住んでるのかイギリスに住んでるのか・・・毎年年賀状を出してもいつしか戻ってくるようになり、どこにいるのかよく分からん奴だが、どうやら元気にはしているようだ。

彼とは高校は違ったが、姉妹校の出身で、浪人時代の予備校で知り合った。

当時割と流行ってた長髪が笑うほど似合うイケメン野郎だったが、中身はまあ、オレたちとそうそう変わらず、予備校に行きながらも大体居場所はお互いゲーセンや雀荘という、まあまあいい加減な奴だった(笑)

そもそも話をするようになったのもゲーセンが発端で、お互い当時大人気だったバーチャファイター2がきっかけ。

当時お互いにこのゲームにハマっており、よくゲーセンで出会っていた。特にオレの入れ込み様は半端なく、参考書を買うと言って親にもらった金を突っ込んだり、もしくはその釣りを800円しかない口座に200円入金して千円にして出す(出金は札しかできないので)なんてよく分からん技を駆使しながら100円に情熱をかけていた。気がつけば100円で対戦台に座ってりゃどんどん暇潰しの相手が来てくれるようなレベルにまで成長していたお陰で、彼から「バーチャめっちゃ上手いなぁ」って話しかけられたのが始まりだった気がする。そしてお互い医師の道を志してはいたが、当然の如くそんなクソ浪人生の学力が上がるはずもなかった。医学部なんて最後の模試までD判定で、結局学力不足で断念し、フツーの国立大工学部を受験することにした。

ところが何の因果か試験会場に行ってびっくり、彼と試験会場で邂逅したのだ。それだけではない。そんな偶然あるか?!と思うが、何と、受験番号まで隣だったのだ。

当日、会場で「コレどっちかが落ちたらチョンバレやんけ」と大笑いした(笑)

ゲーセンの通いすぎやとお互い罵倒しあいつつも、とりあえず腐っても鯛で、両者とも何とか合格していて胸を撫で下ろしたもんだった。そして同じ大学に通うこともあり、彼との距離は急速に近づいていき、遊びにいく機会が増えた。そして彼の家に行くと大体はバイクの話になった。そう、実は彼は予備校時代からバイクに乗っており、何と、オレがバイクに乗り始めたのは実は彼がきっかけである。

彼は2バルブのゼファーでタンクをZ2のタイガーカラー?と言うのに塗り替え、タンクの形も変えるほどのこだわりよう。当時オレはバイクに特段興味はなかったのだが、明らかに彼の影響を受けて「バイクもエンジン付きの乗り物だしな、ガリガリステップ擦って曲がってみてぇ」という興味がふつふつと湧いて来た。とは言えそんな動機だから、結局は中学の頃、一瞬憧れたNSRが欲しかった。そんな他愛もない話をしていると、彼から強烈な一言を見舞われた。

「NSRなぁ、ツナギ着てなかったらダサいで」

・・・正に。

オレが若い頃、どうしてもバイクを好きになれなかった理由はこのライダーのダサいファッションがどうにも許せなかったからだ。そんなオレを「カッコいいな、オレも乗りたいな」と思わせたのは間違いなく彼の影響で、彼がいなければオレはやはりバイクに乗ることはなかったのだろうと思う。

人間万事塞翁が馬とは正に、だろうか。

あの頃、ゲーセンに入り浸るダメ人間をやっていなければ、彼と関わることもなかったかもしれないし、そうなればオレはバイクに乗っていなかったのかも知れないのだ。

その後、オレは紆余曲折を経て、まあいわゆる「バイク馬鹿」と呼ばれる部類の人間にめでたく成長し、会社でもプライベートでも、昔の同級生でも、どこに行っても「キレネンコと言えばバイク」と言うイメージが定着するキャラになった。一方でΖ1大好きだったアイツは、残念ながら今はもうバイクにも乗っていない。そのぐらいバイクは離れた存在になってしまったようだ。

だが、久々に会うとやはりバイクの話になる。彼もオレと会うとあの頃の気分に戻るのだろう。今となっては知識も腕前も完全にオレの方が上になってしまったのだけど、昔の話をしていて、「いや、あの頃の時間がなかったらオレはバイクに乗ってなかったかも知れんな」なんて言うと、決まって彼は嬉しそうに言う。

「そう!お前がどれだけスゴイバイク乗りになっても、お前をバイク好きにさせたのはオレσ(゚∀゚ )」

ってね(笑)

人と言い方によるんだろうけど、オレは彼のこの言い方が好きでね。
聞き様によっちゃマウント取ってるような風にも聞こえるかも知れないが、コッチを持ち上げた上で、「オレはこいつを育てたんだぜ」と言いたげな誇らしげな姿が微笑ましく、こちらが嬉しくなってくる。ちなみに彼は初志貫徹、と言うわけでもないが、現在は医薬品の開発に携わって世界中飛び回ってる。そんな優秀な奴がオレみたいな何の変哲もない歯牙ないエンジニアにマウントとって嬉しそうにしてんのが可笑しくてさ。

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日常的に乱発されるSNSの「いいね」。

そのたった1回の「いいね」でも価値は人によって異なるものだな、と、燦然と輝く彼のサムアップマークを見て思った。

最後に会ったのはいつだったか?

お互い歳を取っちまったが、昔のようなカッコよさは失わないでいてくれたらいいな。

-了-

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