見出し画像

ニューハルピン参内 最終章 -Halpinistize 6

高速に乗って15分。

ハイペースで走り、ふと流石にこのハイペースはキツいなとアクセルを戻すと何やらプラスチッキーなカタカタ音。

以前から時々感じていた異音だ。もう、明らかにおかしい。回転同期で負荷を高めるほど音は大きい。まさか、エンジン内部か?

Pの例が頭をよぎる。

似たような走り方をするPのエンジンが逝ってしまったのなら、いつオレに起こってもおかしくはない。

でも、トルクダウンはしてないし、エンジンが止まりそうな気配は一切ない。

とにかく大幅にペースを落として、5000rpm程度で走れるレベルで淡々と走る。

最寄りのサービスエリアで一旦止まり、有識者に相談。色々アドバイスを頂き「いきなりぶっ壊れることはないと思いますが」の一言を都合よく切り取り、

「よし、行くぞ」

こんなもんは出たとこ勝負だ。とにかく負荷をかけないように淡々と。

新潟まで片道500km、西と東から攻め入ってお互いエンジンぶっ壊してりゃ世話ねぇや。とにかく、止まらない限りは走り続けるぜ、と苦行のような高速走行を続けた。

とにかく、音を気にして、負荷を掛けない、低トルク運転。ペース的には苦行のようだが、こう言うエンジンとの対話は嫌いではない。

途中ほんのり匂う焼けたオイルの匂い。

大丈夫、白煙も上がってないし、オレのマシンじゃない。

マフラーから火も出ていない。そんな事を気にしながら数時間走っているとだんだん慣れてきた。まあ、今から何かが起こる可能性は低い。だがしかし、異常であることは間違いない。淡々と。気持ちを「無」にして、淡々と。

その結果、鬼門の舞鶴道で給油すりゃいいものを「ここまで来たらチキンレースだ!」と無給油で乗り切り、行きはフルタンク130kmしか走れなかったはずのマシンで200kmの航続距離を記録し、無事帰宅。

エンジンを止め、何とか家まで無事に運んでくれた愛機に感謝しつつ、関係者に無事帰宅の連絡。

なかなか様々な要素が入り乱れたツーリングだったが、こう言うツーリングこそ深く思い出に残る。終わり良ければ全て良し。コレからのことはコレから考えればいい。

画像1

時間も金もかけた。

オマケにマシンは満身創痍。

でも、だからこそ価値があった。

2人の「バイク乗り」がエンジン壊してでも求めた、一杯のラーメン。

エントロピーの低い所に向かうには、何かに抗う、それなりのエネルギーを要するのだと言うのは当然の事だ。むしろそうであった事を嬉しく思う。

-----------------------

そんな「無理」ついでに店主にお願いして頂いてきた「資格」をコソッと貼り、ちょっとだけ「ハルピニスト」になれた気がした、2021年の春。

画像2

-了-


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?