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その本質は龍大神にあらず。龍大神デッキ徹底解説

はじめに

 NR限定戦の龍大神や維持チューニングで用いられている方界バジェシステム、通称害悪ギミックをご存じだろうか。これはリンク数の確保や、サーチ不可能な札にアクセスできるマネキンキャットを活用し、浪漫ギミックを決めるためのギミックだ。それだけではなく相手のデッキが切れるまで耐えることができるほどの防御力を持つため、サーチの難しい札を引くまで待つことができ、浪漫ギミックの再現率の低さを解決することができる。
 既にNR界隈においてはこのギミックの恐ろしさが周知されている。しかしこのギミックの真骨頂は浪漫ギミックを決めることだけではなく、圧倒的な対応力と不利対面がほぼ存在しない柔軟な戦略の幅にある。特定のコンボを決めることだけを目的とし、対面相性によってギミックが否定されるとなすすべがなくなる他のデッキと、方界バジェシステムは格が違う。
 ではどうしてNRの浪漫ギミックを決める際に、このギミックがあまり使用されていないのか。その理由は3つある。一つ目はこのギミックが害悪デッキであり、対戦相手と使用するプレイヤーの双方に大きな苦痛を与えるためである。二つ目はこのデッキな特異な戦い方にあり、ビートダウンデッキともパーミッションとも、バーンとも異なるこれまでにない立ち回りや回し方が求められ、使いこなすのが難しいためである。三つめは方界バジェシステムが龍大神のためのギミックだと誤解されており、その可能性と対応力の高さが知られていないためである。繰り返しになるが、たとえ龍大神軸の方界バジェシステムであっても、その本質は龍大神によるワンキルではない。圧倒的な対応力の高さと、不利対面が存在しない戦略の幅広さがデッキの強みである。
 本稿の前半ではその方界バジェシステムの魅力について論じ、後半では特異な立ち回りについて考察する。このデッキの強みや魅力について少しでも伝われば幸いである。

ざっくり結論
・方界バジェシステムって何?害悪デッキだよ!
・方界バジェシステムはとにかくキモいギミックだよ
・長期戦を見据えて相手のリソースを意識した妨害を心がけるよ
・相手のデッキを見極めてデッキとしての戦い方を変化させるよ
・このギミックはあらゆる浪漫デッキに応用できるよ

ギミックの概要

出張するギミック部分
デッキの構築例

 まずはギミックのレシピと龍大神のレシピを見ていただきたい。出張されたカードがデッキの大半を占め、ギミックの枠が少ないことが特徴である。そのため初手に出張パーツの防御札を多く引くことができ、長期戦に持ち込みやすい。マーレラ、ヴィジャムの素引き、降世からアクセスできるヴィジャムは、戦闘で破壊されない耐性と、相手モンスターの効果を永続的に無効にする効果を持っている。そのためマーレラや降世からヴィジャムを3体並べれば、なかなか突破されない強固な盤面を築くことができる。当然対戦相手は戦闘で破壊されないモンスターを除去しようとするが、複数体のヴィジャムに対する回答に迷い風やディノミスクスなどの妨害を当て続ければ、相手は永久にヴィジャムを突破できない。このようにして時間を稼ぎギミックの下準備をし、準備が整えば浪漫ギミックを通しにいく。龍大神軸であれば、コーディネラルとマネキンがあればギミックが通るため、降世とバージェストマが墓地にたまればよい。
 既存の龍大神ではディノミ、迷い風、激流葬などのメジャーな妨害はもちろん、破壊輪、パニッシュメント、強制脱出装置、霧剣、デモンズチェーン、カナディア、月の書、奈落等の、あらゆる妨害をもろに受けてしまう。そのため龍大神は罠型に弱いという課題を抱えていた。そこで方界バジェシステムを導入することによって、罠型に弱いという課題を解決した。方界バジェシステム搭載型の龍大神はバージェストマで戦うというサブプランがある。その場合通常のバージェストマと異なる採用札は龍大神1枚(と壊獣2枚)のみであるため、ほとんど通常のバージェストマとして戦うことができる。そしてバージェストマは罠型に対して有利なデッキになる。罠型にはバージェストマ、罠型以外には龍大神として戦えば、不利対面はほぼ存在しないことになる。サブプランがメインギミックの相性を補完しており、方界バジェシステム搭載型の龍大神は理想的なデッキ構築といえるだろう。

龍大神を使用した日のNRルームマッチ戦績。龍大神は非常に強力なデッキである。
別の日のルームマッチの戦績。この日も龍大神とUAを使用し全勝した。

展開例

条件;墓地に発動条件を満たした降世(またはマーレラ)、バージェストマ2枚、相手のフィールドか墓地に光属性(または手札に壊獣)
着地点;極戦機王ヴァルバロイド2体+鉄駆竜スプリンド+α

同様な展開ができる例(要するにコーディネラル+龍大神が出せればよいです);降世(またはマーレラ)+モンスター1体+手札に龍大神

展開呪文;
降世EF、ヴィジャムを3体SS、バージェストマ2体SS、バジェ2体でマネキンSS、マネキンEF、相手の光属性を対象にデッキから龍大神SS、コーディネラルEF、龍大神のコントロールを移す、マネキンとコーディネラルでスリバをSS、龍大神EF、EXデッキからノヴァを落とす、ノヴァEF、EXデッキからヴァルバロイドSS、龍大神EF、EXデッキからノヴァを落とす、ノヴァEF、EXデッキからヴァルバロイドSS、龍大神EF、EXデッキからノヴァを落とす、ノヴァEF、EXデッキからスプリンドSS。

魅力

 このデッキの魅力は何といってもその気持ち悪さにある。そもそも破壊耐性もちのヴィジャムを数体並べて腕組みし、スリバやパワーコードなどのヴィジャムに対する回答に対してのみ妨害をあてるというだけでも大変性格が悪い。まるでコキュートスをたてて腕組みし、回答が出たら妨害を吐くデュエルリンクスの悪夢の再来である。そしてしばらく遅延し続けた後、突如として龍大神などの浪漫ギミックが牙を剥き、どうせ遅延し続けるだけだと油断した相手の喉笛に喰らいつく。気づいた時にはリーサルをとっており、対戦相手に敗北をプレゼントすることができる。なんと美しく相手に苦痛を与えるギミックであろうか。

 このデッキが苦痛を与えるのは対戦相手だけではない。このデッキは長期戦を見据えた特殊な妨害の当て方をするため、原則として相手の展開をすべて通す。そして展開の出力先に妨害を当て相手のリソースを削っていく。そのため使用している側は相手の強い初動やアドバンテージをとる動きをゆるさざるをえず、苦痛を与えられている。使っている側も苦しいのだ。これにはSの方もMの方もニッコリである。

システムカードで毎ターンアドをとられるのは本当に苦しい。ウソジャナイ

 方界バジェシステムの気持ち悪さは初見の対戦相手の油断につけこむだけではない。すでにこのギミックを知っている人にこそ、さらなる苦痛を与えることができる。龍大神のギミックを知っているからには、いつ龍大神が来ても問題ないように身構え、準備しておかなければならない。どうせ罠をセットしてターンを返すだけだから、とタカをくくって中途半端な盤面でターンを返すことが許されない。次のターン奴が来るのではないかと想定しその対策に回らなければならない。そしてここでさらなる恐怖が対戦者を襲う。龍大神に対してとれる対策がないのだ。妨害モンスターをたててもディノミスクスや迷い風、カナディア、パニッシュメント、懐獣で容易に対応される。罠を引けていればまだ希望があるが、スカルワゴンやオレノイデスに除去される可能性が否めない。龍大神使いは大量にドローしているのだ。回答を引いていて当然ではないか。そうなるともう祈るしかない。怯え、震えながら相手にターンを渡さざるを得ない。なんたる苦しみだろうか。

見えない龍大神を怖れ、さらに苦しむのだ

 ちなみにこんなことばかりやっているとルームマッチで対戦相手に露骨に避けられるようになる。私が座っている卓を避けて別の卓につこうとする人を私は何度も見てきた。しかしそういう場合は向こうの卓にこちらから押しかければいいのでモンダイナイ。

 これは以前行った害悪ギミック(方界バジェシステム)の是非を問う投票である。「カジュアル環境では使うな」という強い言葉を用いて否定派のボタンを押しづらくし、肯定派が多いという印象を与えるために行ったものだったが、それでも断固として否定する人が見られた。やはり嫌われている。

方界バジェシステムの立ち回り

 方界バジェシステムには複数の勝ち筋があり、どのプランをとるかによって戦略が大幅に異なる。相手の初動を見て相手のデッキの採用札を予測し、最も太い勝ち筋は何か判断する必要がある。
 このデッキはこの判断がとても重要であるため、このデッキを練習する場合、このデッキそのものを回すよりもむしろ、対戦相手の使用デッキを練習した方が良い。そのためこのデッキは基本的なNRデッキをすべて組んだことのある超上級者向けのデッキになる。

主な戦略は以下のとおりである。
①中、長期戦(5~10ターン)を想定する場合。リンク数を伸ばしたい場合、あるいはマネキンキャットから特定のモンスターにアクセスしたい場合。(例:龍大神)
②長期戦を想定する場合。初動が3枚しかないギミックなど、特定のカードを引きたい場合(例:維持チューニング)
③バージェストマ・ビートダウンとして戦う場合
④相手のデッキ切れを待つ場合

これを一つずつ検討していきたい。

中、長期戦を想定する場合。(例:龍大神)

ライフコントロール
 降世の効果を通す必要があるため、自分のライフを減らすことを意識して戦う。その際関羽などの相手のシステムモンスターにヴィジャムで自爆すると、モンスターの処理とライフコントロールが同時に行えるため効率が良い。多少自分のライフを減らした程度では、降世の効果を発動させないために相手が自傷することで対処される可能性がある。そのため自分のライフを大幅に削るプランも存在する。一方でライフがあまりに少なくなると、盤面の維持が難しくなるうえヴィジャムの自爆が許されなくなるという裏目が存在する。そもそもNR環境ではユーザーの経験値の絶対量が不足しているため、そこまで高度な駆け引きが発生しない。したがって相手がヴィジャムケアのために自傷することはない、と想定してもよいだろう。
仕掛けのタイミング
 前述のとおり龍大神はほぼすべての種類の妨害に弱く、貫通力が非常に低い。さらに一度の展開にリソースのすべてを消費するため、妨害を受けた後の立て直しが効かない。もちろん方界バジェシステム搭載型の龍大神は私以外に使用者が存在しないといえるほどマイナーなアーキタイプであるため、初見殺しが期待でき相手のミスを誘発できる。そして相手が妨害の当てどころを間違えた場合、2枚目のコーディネラルやマネキンキャット、聖光によるリソース回復などもにより再展開も見込める。しかし相手が妨害を正しく当ててきた場合には龍大神による勝ち筋を捨てなければならないため、大幅な戦略の見直しを迫られる。そのため妨害を当てられないことを意識したプレイが重要になる。その方法の一つがオレノイデスやスカルワゴンなどのバック割を引くのを待つことである。しかし相手のデッキに罠が多く採用されている場合は、こちらが割ものを引くよりも速いペースで相手が妨害を追加することが想定される。相手がPデッキであり罠を最大3枚までしかセットできないのどの例外を除き、5枚のバックをすべて割るのは不可能であると考えたほうが良い。
 話をまとめると、相手のデッキに妨害罠が採用されていないと判断するなら、セットカードを無視して展開を優先する。罠の採用率が低いと判断するなら、バック割を引くのを待つ。罠の採用率が高いと判断するなら、後述するバージェストマビートダウンとしてのプランを優先するべきである。

特定のカードを引きたい場合(例:維持チューニング)

 40枚デッキの中の特定のカード3枚の中から1枚以上を引きたい場合、期待値80%を超えるには17枚以上(初手5枚+ドロー12枚)引く必要があり,90%を超えるには21枚以上引く必要がある。そのため特定のカードを素引きするために10~20ターン以上耐えることが要求される。その場合通常の妨害の当て方が意味をなさなくなる。サブテラーの継承やマジェスティックP、パシフィスなどの毎ターンデッキに触るカードは、通常はマストカウンターになる。しかし10~20ターンのデュエルを見据えた場合、二枚目のカードにアクセスされたり、サーチ先のカードを素引きされたりする可能性が高く、裏目が大きい。そのため相手のデッキからアクセスできるカードを枯らすことを優先する。例えばパシフィスであれば戦渦3枚と浸渦3枚を枯らせば後続を断てる。同様にギミックにアクセスするカードに妨害を当てた場合、基本的には数ターンの猶予を得られるだけである。10ターン以上の長期戦を見据えるならば、サーチはすべて通し相手のデッキを枯らすことが優先される。そのため相手のデッキに何が残り何枚あるのかを意識し、相手のリソースの回復手段を断つことが求められる。環境にもよるが、私がよくプレイしているNR環境では対戦相手の構築が洗練されていないことが多く、初動率よりも上振れ札や展開が通っている前提のカードを過剰に採用した構築が多くみられる。そのため相手のリソースは多めに見積もった方が良い。

バージェストマビートダウン

 龍大神の革命的なところは柔軟な戦略性の幅にある。その戦略の一つがバージェストマビートダウンである。前述した通りこのデッキの通常のバージェストマと異なるメインデッキの採用札は龍大神1枚(と壊獣2枚と降世のギミック)しかない。そうであればバージェストマとしても十二分に戦うことができる。バージェストマとして戦うなら、当然自分のライフをできるだけ多く、相手のライフをできるだけ少なくすることを意識する必要があり龍大神として戦う場合と戦略が根本的に異なる。そのためどちらの勝ち筋を取りに行くのかを、早い段階で決める必要がある。また通常のバージェストマと異なり、EXデッキに龍大神のギミックを大量に採用しているため、EXのリソースに乏しい。そのため龍大神として戦う場合と異なり、ある程度短期決戦を優先すべきである。またバージェストマは小粒のモンスターを複数体並べることに適しているため、ディノミスクスやパニッシュメントのような単発除去に強い。反面激流葬などの全体除去に弱い。そのため言うまでもないことだが、降世などのモンスターをSSする効果はチェーン2以降で発動することが鉄則となる。X召喚をするとバージェストマを墓地に戻せるためリソースを維持できるが罠の受けが悪くなるため、状況に応じた判断が求められる。

ライブラリアウト

 ライブラリアウトと聞くと対処法を失ったデッキの苦肉の策であり、机上の空論であって実現不可能だと捉えられがちだ。しかしこのデッキのライブラリアウトは本気である。実際ギミックを通す前に相手がヴィジャムを突破する手段を失って投了することは非常によくあることだ。そのため中終盤に仕掛けのタイミングを誤るなどして、戦略の見直しを求められた場合は十分検討できるプランになる。ただしこのデッキはドローソースが大量に入っている。そして相手のデッキを削るカードが1枚も入っていない。そのため相手より先に自分のデッキが切れる恐れがある。ドローソースを使わないと相手の手数を抑えきれなくなる恐れがあるため、ドローソースを使わざるを得ない。そのため相手がすでにデッキのカードにアクセスし、自分より大きくデッキ枚数を減らしている場合にしか取れないプランになる。

このデッキの対策

 このデッキの使用者はあまりにも少ないため、デッキ構築の段階からこのデッキを想定するべきではないだろう。そのため実際に対面した後、どのような対策がとれるか考えてみたい。
 繰り返しになるが龍大神は相手の動きに合わせた柔軟で繊細なプレイイングを求められる。そのため相手がブラフで魔法カードを複数枚セットするだけでも、相手のデッキタイプを見誤り戦略を大幅に間違えかねない。そのため変わったプレイによって自分のデッキを違うものであるかのように見せ、相手のミスを誘発することが重要である。

無限の可能性

 ここまでは方界バジェシステムが龍大神のためのギミックであることを中心に説明してきたが、このギミックはあらゆるギミックに応用できる。NR環境ではドローソースやサーチカードに乏しく、デッキの初動率が低くなりやすい。方界バジェシステムは相手のデッキが切れるまで耐えることができるため特定のカード2枚の組み合わせなどを素引きすることができる。アクセスしたいカードがモンスターなのであれば、壊獣やマネキンキャットから簡単にリクルートできる。そのためあらゆる浪漫デッキや成功率の低いコンボに応用できるのだ。さらに龍大神をたてる手段も方界バジェシステムに限られない。マネキンキャットとコーディネラルを並べられるあらゆるテーマから龍大神を展開できるため、あらゆる2軸のテーマは龍大神の可能性を持っているのだ。

龍大神愛好家の末期症状は
レベル2が2体並んだだけで龍大神の姿が浮かぶことである

 皆さんもぜひ自分なりの浪漫デッキに方界バジェシステムや龍大神を組み込んでみてほしい。そしてカジュアルマッチでルームメイトから嫌われてみてほしい。方界バジェシステムは友人をなくすということを除けば、大変素晴らしいデッキである。龍大神の可能性を探す旅路に幸あれ!

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