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手仕事を続けるために売る

蔦屋書店でふと手にした本「完売画家」(中島健太著)。帯のコピーは「絵描きは食えないを変えたい」。
実は最近、手仕事仲間で雑談した折に「家にお金って入れてる?」という話題が出た。その作家さんは市内中心部のビルの一室にアトリエショップを構えている。私にとっては、それだけでもスゴい!と思える。が、「家に入れるほどの利益なんてないよね」というのが、たいていの作家仲間の実情だ。

話を戻して、「完売画家」を読んでみると、アートと手仕事という異分野といえ、わたしと共通する現状もまあまあある。
1.製作できる作品点数が限られること
2.ギャラリー(私の場合はショップ)を介すると利益が3割程度
3.学びの現場で「この仕事では食べれません」と宣言され、ビジネスのノウハウが全く得られなかったので、全て手探り状態であること

さらに読み進めてゆくと共通課題も多い。
1.作品の質に加えて数も必要。製作スピードも大切
今年は独立して4年目。最初は年間100枚だったが、どんどん手も速くなって、今年は倍は作れそう(娘に糸巻きのアルバイトを頼んでいるおかげもある)

2.伝統と同時にマーケットも意識する
出店シーズンが終わり1カ月のみオンラインショップを実施すると、傾向が顕著に出てきた。世間が私に求めるのはオリジナル。すでに〝倉敷ノッティング〟の存在を知っていると思われる全国の購入者は、伝統柄に見向きもしなかった

3.売るにはギャラリーとデパート、直売(EC含む)の3路線
著者が言うに、絵の場合はギャラリーでの買取を目指すことが重要らしいが、わたしの手仕事はちょっと違う。3つのバランスは大切だし、売るだけが目的でもない。それぞれの違いと特徴を私の場合で紹介してみよう。

〈ショップ〉
目利きのプロ、ショップオーナーはたくさんの作家さんも見てきたので、作品のアドバイスしてくれる。
作品展では購入目的のお客様が訪れるので売上も大きい。デパートで出店した時の一週間の売上が、作品展3日間に匹敵するほど。ただ販売委託料(ロイヤリティー)は30%が相場。DMや展示方法については、オーナーと相談して進める。遠隔地の場合はホテル連泊する。お金はかかるが旅行みたいで気分転換になる。作品展に在廊すると直接お客様と交流でき、スタッフやオーナーとも深い話ができて楽しい。買取の場合は価格の6割になるので、私は避けている。その代わり、なるべくワンシーズンで商品を変えるようにして、商品を回している。
難しいのは、どのお店と付き合うか。
遠過ぎても交流できないし、お店同士の距離も大事。広島の場合、市内中心部に暮らす人は郊外に行かない。しかし山口県の人は車で積極的に移動するから、例え車で90分の距離でも客層が重なる。地域事情とご縁を考えながら決めるしかない。

〈デパート〉
地元の富裕層がメインで、ブラリと寄ったついでに高額な買い物をされるお客様もいらっしゃる。が、初見の場合は次回以降購入される方が多い。例えば「去年見たから」と翌年3枚の椅子敷きを買われるお客様。「先日デパートで見たから」と次に出店場所に来られるお客様。「実物を見たくて」と訪れるインスタのフォロワーさん。
つまりデパート出店はプロモーションだと思う。とはいえ、お店としてはすぐの売上が欲しいもの。しかしながら、1週間の中で売上0円の日も必ずある(出店前に神社にお参りしたとしても)し、天候やデパートの催しによってお客様の出は左右される。だから他の作家仲間と組んで出店する。そうすれば休憩中もサポートしてもらえるし、作家同志の話もできる。
搬入搬出は自力(私の場合は椅子も持参する)で、什器(じゅうき)はレンタル。展示方法は空間に合わせて考える必要がある。搬入はずっと赤帽さんに頼んでいたけど、今は娘夫婦のワンボックスカーを借りて、自分だけでやっている。花のアレンジも手配する。
私の場合、商品価格が張るので、地方のデパートでの販売は難しかったという経験から、現在は広島だけ。
昨今は広島のデパートも顧客の高齢化により売上が減少する傾向にあり、京阪神や東京のデパートに遠征する仲間も多い。
広島のデパートの場合、ロイヤリティーは30%、デパート自身が顧客に向けた広報をしてくれる。ただし直接取引ではない。

〈直売〉
さまざまなマーケットに参加したり、アトリエで直売したり、ネット販売したりして利益率アップを目指すのは手仕事作家の必須課題。
ただ私の作品は屋外での販売には不向きだし、ウール作品なので時期も限られる。作品の製作時間も他の作家さんよりかかる。
現在はホームページより全国から注文をぼちぼちいただき、年に一回1ケ月間だけオンライン販売している。
デパートやショップの出店の後日、ホームページからの注文というオマケもある。「年中オンラインで売れば楽じゃない?」という意見もあるけど、さまざまな場所やお店と繋がりたいし、お客様とも直接話したい。
今は店頭販売と直売が半々というバランスなので、私にとっては理想的かな。






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