そんなものない

春の風は 日陰の氷やつららを通ってくるから清潔だ
秋の風は 熟れすぎた柿や腐乱死体を通ってくるから眠くなる
冬を通り越して、今日は春の風が吹いていた

膜が張っちゃって 世界がよく分からないなあ
鈍れ、鈍れ
言葉を手放せ

闇にも消えないススキの穂
河原の上の広い空
どの橋にしようか選びながら帰った
日が落ちて 感傷がしらけた

オリオン座が追いかけてくる
走っても走っても追いかけてくる
隔てるものが何も無いことにゾッとする



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