【USG2020】Patrick VegeeとCount Down Style

2020.9.30
UNISON SQUARE GARDENの8枚目のアルバム「Patrick Vegee」が発売された。
ファンとしての感想や考察を綴ってみる。

というのを10.30の発売1ヶ月のタイミングで出そうと思っていたが、延びに延びて年内に出そうとなり、なだれ込んで年越し配信ライブを見た後でもいいかという気になってしまった。
まぁ結果良かった。
最後にUSG2020 LIVE(in the)HOUSE -Count Down Style-のことも綴ろうかなと。

本人たちによるセルフライナーノーツ(完全生産限定盤の特典)や、a flood of circleの佐々木亮介さんによるラジオでのディスクレビュー、レジーさんというライターさんによるBa.田淵智也さんへのインタビュー記事などを既に見聞きしてしまっているが、なるだけフラットな感覚で書いてみたい。
佐々木のポッドキャスト、興味深いので、Patrick Vegee気に入った方はぜひ。


『MODE MOOD MODE』から2年半

7枚目の『MODE MOOD MODE』(以下、MMM)から2年半が経ってのリリースだった。
個人的にはあまり待たされた感じがしなかった。それほど、MMMが素晴らしいアルバムだったということだと思う。

MMMの主軸は「オーケストラを観にいこう」と「君の瞳に恋してない」の2曲だった。3人以外の音が足されたポップの極地。個人的には「Dizzy Trickster」も相当破壊力高かったけど。
ここにシングルが4曲と、とにかくてんこ盛りだった。

4枚目の『CIDER ROAD』でポップな部分を存分に出した後は、5枚目の『Catcher In The Spy』でロックバンド然としたものを作った。
6枚目の『Dr.Izzy』は最大のヒットソングが入りながらも、武骨に、それでいてポップさも併せ持ったユニゾンの真ん中をいくアルバムだった。
7枚目がこれなら、きっと8枚目は尖ったロックバンド然としたアルバムになるのかと予想していた。



シングル3曲のリリース

今回はシングル曲が3曲入っている。この3曲があまりにも毛色が違いすぎて、どんなアルバムになるのか想像がつかなかった。という思い出話をこれからします。
長くて飽きたら飛ばして読んでください。
CDの帯が3枚ともまた良くて。

まず、春が来てぼくら
MMMのリリースから約1か月半でのリリースであった。MMM発売以前に告知があったけど、そこには入れないよというアナウンスがあり、タイアップということもあってMMMのどの曲よりも先に聴けた。
まず、MMMがあまりにもポップネスを極めていた。そこにストリングスがバリバリに入ったこの曲が発表された。
田淵は当時「(音楽性の幅を広げた)『MODE MOOD MODE』を出したあとのタイミングだし、『ユニゾンだったら何をやってもしょうがねえ』と受け止めてもらえる要素もあると思いますけどね。」と語っていた。
「そんなにやりすぎてるか?」と当時は思っていたが、ユニゾンがこんなことをやるのは初めてだし、そのスケールがとてつもなく大きかった、と今では思う。完全にMMMからの流れで麻痺していた。
で、8枚目にこれが入るのか...とずっと思い続けていた。7枚目のようにポップなアルバムにするわけがないのは分かっていた。じゃあ、春が来てぼくらはめちゃくちゃ浮いちゃわないか...?と。

この曲にはいつまで経っても飽きが来ない。シングルとしてあまりに強烈だった。個人的にはボーカルの優しさと、コーラスの美しさが絡み合っていて大好き。
Vegeeには関係ないけど、カップリングが大暴れしていて大興奮したのはきっと彼らの狙い通り。思うつぼ。

「ざまみろ、これは僕らの歌だ。」

次に出たのがCatch up, latency。
もうこの時点で混乱していた。こんなにもストレートなUNISON SQUARE GARDENのど真ん中が、春が来てぼくらと同じアルバムに入るのかと。
この曲については、MMMからのロックサウンドへのより戻しの意味合いがあるのかなと思っていた。

歌詞が良いですよね。文章的にというわけじゃなくて、まぁ語らずともというか。田淵がバンドで書く歌詞が本当に好き。
イントロのベースは心地よく、カッコイイ。アニメの世界観にもドンピシャの爽快さで、画にも合ってたしタイアップとしてもものすごく好きだった。

「ロックバンドは、正しくない。」

そしてPhantom Joke。
15周年真っただ中で、Fateシリーズというビッグネームとのタイアップが発表されたときは心底驚いたし、ワクワクした。キャッチコピーが「だめだ、そんな悲しいこと言うな。」、これは歌詞そのままだったわけだけど、強烈だった。
そしてMV公開。もっと驚いたし、ワクワクした。というか正直混乱した。四拍子と三拍子を行ったり来たりするし、サウンドは尖りすぎだし、何より速すぎて貴雄は人間ではないと思ったし、キー高すぎるのに「過去最高難易度というわけではない」と言っていた斎藤は本当に頭がおかしいと思った。(でもLIVE(in the)HOUSEのときは斎藤大変そうだったな)

MV公開から初めのうちは「なんかいつもと違うような」という謎の違和感があったのだが、気付いたら発売前にはその違和感はなくなっていた。
たぶん、Catch up, latencyからの流れに戸惑ったというのもあったんだと思う。単純にこんな曲今までなかったというのももちろんある。

「正義も悪も、見極めなくちゃね。」

で、これも8枚目に入るのかと。
ということで私は約2年半、アルバムのことを考える度にずっと混乱し、どんなものになるのかと興奮しながら待っていたわけです。
こんなにもタイプの違う3曲が、1つのアルバムに入るとなると、本当にアルバムの全貌が掴めそうにない、と。



『Patrick Vegee』


これを書き上げてみて、改めて歪なアルバムだと思った。
数周聴いてみて、違和感がありつつもこれまでで1番好きなアルバムになりそうな予感さえした。
どのアルバムが好きかと聞かれたら迷わず「Dr.Izzyです」と答える用意をしているけど、ぶっちゃけその日の気分で変わるし、どれが1番だなんてどうでも良いか~~。

M1~M4
Hatch I need〜マーメイドスキャンダラス〜スロウカーヴは打てない(that made me crazy)~Catch up, latency

お馴染みの数字コールは1曲目。Hatchという単語を使うかなと予想していたのはドンピシャ。
イントロのベースの歪み方は癖になる。<Aと> <Bと>でエイトビートを表現する歌詞にはニヤリとさせられる。
にしてもベースリフの歪みが何と強烈なんだろう…

マーメイドスキャンダラスは試聴動画が出たときからもう確信があった、絶対に好きになる。マイナーキーだけど、その速さと斎藤のボーカルはUNISON SQUARE GARDENらしさのど真ん中を突いてきたと思う。
Hatch I needからのシームレスは曲の雰囲気が思いっきり変わるから最初は少し違和感あったけど、Count Down Styleで見たときにこの繋ぎじゃないと逆に違和感出ちゃうなと思った。

スロウカーヴは...何でしょう、聴く度により好きになってしまう。サビの歌詞めちゃくちゃ面白いし、<I must doubt "Pop music">からの<You may doubt "Rock festival">の言葉ノリの良さ。<超ウケる>って言葉を歌詞に使ってもコミック感が微塵もないのは斎藤のボーカル力の賜物じゃないですか。
というか歌詞が全部、本当に好きで。
2サビの歌、歌詞、天才的。<すごい角度でミットに来る>。で、ラスサビの<って君の覚悟を聞いているんだよ!>。もうこの曲に関しては斎藤がすごすぎる。AFOC佐々木がポッドキャストでこの曲とthrowcurveのリコールの話を熱量高くしているのでそちら聞いてください。
Count Down Styleで田淵ノリノリで跳んでて楽しそうだったな。

Catch up, latencyはいつも通り感というか。音源でもライブでも。そこがめちゃくちゃ好きで。
ライブではベースのイントロが心地よく鳴っていくところからのギター、バーーーン感が良いっすよね。まぁリリースしてからフェス観にいってないし、ツアーで1回、自主企画で1回、周年ライブで1回、配信で1回しかお目にかかれてないんですけどね。
毎ツアー入れて欲しいくらいには好き。セットリストの2曲目とかでも面白そうじゃないですか。

M5
摂食ビジランテ

ここが1番の違和感の核。「なんかグチャっとしてんだよな。」を象徴する1曲。
田淵曰く「何も言ってない曲が欲しかった」らしい。
摂食ビジランテについては歌詞も未だに何も掴めない。この曲がここに来ることで、4曲目までの勢いの良さを一旦食い止めてる。
Count Down Styleを見て思ったけど、アルバムで聴く以上にここでlatencyの最高潮のテンションをぐっと引き戻す。頭で分かってはいてもそれ以上に違和感が押し寄せてくるのだ。
正直、特に気に入っているという曲ではなかったけど、ライブをやる上でこういうピースがあると面白くなるだろうなという気持ちは強まった。
前作で言うところのフィクションフリークみたいな、対バンのように短いセットリストでも一球で変化を付けられるという意味では今後は定番の曲になってくるのかもしれない。フェスでやるにはちょっとダークすぎるかな。
(WINDOW開けるみたいなこういう球がそろそろ欲しかった、みたいなことを田淵はどこかで言っていた気がする。気がする。気がするだけかも。)

M6〜M8
夏影テールライト〜Phantom Joke〜世界はファンシー

夏影テールライトに関しては、買って1週間くらいは「良い曲だな、綺麗な曲だな」くらいで聴いていたけど、もう今では1番のお気に入りかもしれない。正確に言うとPhantom Jokeへの繋ぎまで込みで気に入っている。
このアルバムの中で1番大切に作られたんだろうなという感じがするし(田淵もどこかのインタビューでそんなことを言っていた)、完全に憶測ですが歌詞は変えた可能性あるけど、MMM出してから割とすぐ書いた曲なんじゃないですかね。完全に憶測ですが。
あとこれもイントロのベースとドラムの心地よさですね。これが欲しくてついつい贔屓して何度も聴いてしまう。
コーラスも本当に綺麗で。SpotifyでボーカルOffにしてもこのコーラスは完璧に残ってるのちょっと笑っちゃう。高すぎて声判定してもらえなかったのかな。
<ジョークってことにしといて。>の一言だけで上手くつなげられてる理由はイマイチ分かってない。分からなくていいけど。

Phantom Jokeは、もう先ほども述べたので良いでしょう。貴雄が鬼。変態。
斎藤は、ライブでのこの曲の状態はまだ日によってばらつくのかなと思っているけど(個人の感想です)、ツアー東京1公演目のときはめちゃくちゃ強く歌ってて震えました。田淵が書いた中でもぶっちぎってトンデモ曲。

ファンシー、あっという間に馴染んできた感じがある(自分に)。
715のオンラインライブ後にMVがゲリラ公開され、今までにないタイプのUSGだと感じていたけど、いまになってみればPhantom Jokeと同じこと思ってたなと。公開時から熱量高く気に入っていて、Phantom Jokeの前後に配置されるだろうと思っていた。カラオケで歌うのは言葉数的に至難、初見殺しもいいところ。
Count Down Styleでの完成度は新曲の中ではこれが群を抜いてましたね。貴雄の「1234」カウントを聴くとどうしてもこれを想起してしまう。イントロの田淵の足ガッて開いて重心下げるあれ好き。
これがリードで良かったというか、必然だったなという決まり方で、今年やる予定のツアーがより一層楽しみになった。本当にツアーできる世の中に戻って欲しい。


M9~M10
弥生町ロンリープラネット~春が来てぼくら

やはり今回のアルバムに関しては春が来てぼくらをどこに置くのかが重要になってくると思っていた。個人的にはアルバムの最後から2番目に置くと綺麗になるのかなと思っていたが、いざリリースされたものを聴くと「ストリングス入りの大名曲だから最後から2曲目」なんて浅かった。

弥生町ロンリープラネットが良い味を出しているというか。歌詞繋ぎはまぁそうとして、春が来てぼくらでバッと開くための立ち位置として素晴らしい。イントロのギターリフとか。サビのキーは高いけど、<冬の終わり>って歌詞が的確な曲に仕上がっていると思いました。
ファンの間では瞬く間に噂になり、本人たちもラジオで言及していた「椿町ロンリープラネット」はまだ読んでいません。「ひるなかの流星」も1巻目はお試しか何かで読んだ記憶があるんだけど…

で、春が来てぼくらですね。
満を持している感じが、メンバーがどれだけ大切な曲として見ているかが見て取れる。
そして最後の2曲に持っていくと。

M11~M12
Simple Simple Anecdote~101回目のプロローグ

アネクドートが直前の試聴の段階でめちゃくちゃ好きになる気がしていた。
<全部が嫌になったなんて簡単に言うなよ>なんて。さわれない歌やお人好しカメレオンみたいに、不意に寄り添う歌詞を歌われると弱い。あと短いのがこの位置に来るのが良い。
リズムはシャッフルっていうんですね。知識があるとそういうのも楽しいんでしょうね。
フォロワーと「pillowsにトリビュートしたときのfool on the planet似てますよね」なんていう話をしたけど、あれもシャッフルらしい。
シャッフルが何か分からないし、コード進行とか言われても細かいこと分からんが好き!!って人、仲間。

101回目は、まぁ限定盤にインタビューで言及されていたけど、タイトルに「おぉ」となった。
最後の終わりそうで終わらず繰り返す構成はガリレオのショーケースっぽい。アカペラ良い。AFOC佐々木がHoney Moon Songでよくやるやつ。絶対ライブでカッコイイじゃん。715のフルカラーはここから得た逆輸入的な発想だったのかな。
何にせよサビの歌詞のストレート感と、ダイナミックな曲構成は歪なアルバムを綺麗にまとめ上げるにぴったりだと思った。
田淵のスラップ激レアね。

「食べられないなら、残しなよ。」



USG2020 LIVE(in the)HOUSE -Count Down Style-

本編は先に触れた通りです。latencyとファンシーめっちゃ良かったな~。
トークパートで今年のランキング企画ワースト10を発表してるのは面白かったですね。全曲好きだから、笑って見ていられた。ワーストランクインの曲は田淵が自画自賛している傾向があると言っていた斎藤、仲バッチバチすぎんだろ。

おまけパートは上手いセットリストだなと。これは調べればすぐ出るので載せないけど。もう完全に最後の1曲の締めで持っていかれた。
一番好きなバンドの、特別な曲の、最後のキメで迎える年越しなんて今後あるのかな。
2Aあたりから座り込んで号泣しながら年越しました。田淵が配信を年越しでやるのはおもろいとずっと言っていたけど、こんな素敵体験が待っているとは思わなかった。田淵の企み、ユニゾンの企みはいつだって感動をくれる。




投稿日今日現在、世の情勢はどう転ぶか分からないけど、またライブハウスでUNISON SQUARE GARDENを観られる日が来ますように。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?