たとえ人間じゃなくても愛して欲しい

それは、今日のゲリラ豪雨のような感情。
激しさを連れてひとしきり降ると、途端に静けさを取り戻す。

好きな人の前では冷静で居られない。
友達とか、仕事仲間とか、そういった人たちの前では極めて冷静でいるつもりだ。特に、ネガティブな感情はコントロールできていると思う。
だけど、それが恋人の前だと、途端に制御できなくなる。大げさな音を立てて降る雨粒。やがて、嘘みたいに静かになる瞬間。
だから、恋人と居る私を見たら、みんなきっと驚く。だってほら、私って感情をそのまま表に出すタイプではないから。でもそれって社会性を持った人間の側面を保ってるだけなんだよ。彼の前では、限りなく動物みたいになってしまう。みっともなく、本能をむき出しにして。彼以外だれにも見せてあげないけれど。

こんな具合だから、感情がとつぜん洪水を起こす。小さなことが積み重なって、気持ちが突然バーストするのだ。そのくせ、自分の感情を口に出して説明することができない。曲がりなりにも物書きに憧れているのに。

「何にそんなに怒ってるの」と聞かれても、きっと「そんなの全部だよ」って頭の悪い回答しかできなくて。幼稚だと思われたくないから黙っとく。それもまた幼稚だけど、下手なことを言うよりはマシだろう。

彼の首筋に、すがるようにキスしながら、「私が自分のこと分からないのにお前に分かるわけないだろ」と非難する。彼はそれを見て「可愛い」と漏らした。変態め。あぁ、でも、彼の甘い匂いにあてられて、興奮で頭がくらくらする。私も変態だった。どうしようもないな。

これ以上私から、人間の部分を取り上げないで欲しい。私の身体を覆う冷静さを、あなたは薄皮を剥がすように、奪い取っていく。いや、奪い取るつもりはないんだろう。水に浸すと溶けてしまうオブラートのように、ごく自然に暴かれていくんだ。
ため息が出るくらい恐ろしい。

あなたといる私は、どこまで人間らしくいられるだろう。1つだけわがままを言わせてもらうなら、動物みたいに本能で生きる私であっても、愛して欲しい。

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