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コーヒー、特にスペシャルティコーヒーについての散文

コーヒーにはいろんな流儀や好みがあって、僕はスペシャルティコーヒーと呼ばれるコーヒーを好んでいる。スペシャルティコーヒーの定義は人や機関によっても違うが、一言で言えば「テロワールを感じるコーヒー」ということになろう。

コーヒーは農産物なので生産される土地や年によって味が違うもので、ワインをイメージしてもらえれば分かりやすいか。品種、土壌、気候、栽培手法、生産処理方法などの組み合わせごとに味が変わり、それらはその農場、その豆の固有のテロワールを生む。

僕は経験したことがないが、完熟したコーヒの実は非常に甘い果実らしい。その果実味はその種であるコーヒー豆からも感じることができるのだが、これこそがテロワールの正体であろう。ところがこの果実味は焙煎することによって大部分が失われてしまう。スペシャルティコーヒーを名乗るコーヒーに深煎りが少なく浅煎りが多いのはこのようなことが関係していると思われる。

スペシャルティコーヒーは上記の理由から殆ど必然的に浅煎りになるし、フルーティな甘酸っぱさを追求した飲み物になるのである。また、素材が持つ味を最大限に引き出そうという試みは料理を引き算で考える日本人と相性が良い。

スペシャルティコーヒーは上述の理由から甘酸っぱさを中心に評価される。甘さがあるか、フルーティな酸味を持つか中心にそれを邪魔しないクリーンさを持つか、後味はどうか、口当たりはどうか、個性やバランスはどうか、といった項目で評価されるのである。

コーヒーは苦いもの、というのは先入観に過ぎない。苦味を楽しむのもコーヒーの魅力の一つに過ぎない。苦くないコーヒーには広い世界が広がっているが、日本を含め世界中の人がまだそれに気づいてない。より多くの人がスペシャルティコーヒーの魅力を知ってくれれば幸いである。

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