戯言
年を越せば四捨五入で大台に乗る。
宝くじ売り場に並ぶ人の群れを見てそう思った。
今年は何があったっけ。
最初から最後までコロナ一色だったな。
今年の初めはまだ海外旅行にも行けてたよね。ギリギリだったけど。
当時もなんかやばいことになってきてるなという気持ちはあったけど、ここまで身の回りのことや自分の気持ちに制限をかけられる、かけざるを得ない状態になるとは思ってなかったな。
こんなに長い間マスクをし続けるとも思ってなかったし。
海外旅行したかったな… 新しい出会いもなかったな…
あ、出会いがないのはいつものことか。
今年は何をしたっけ。
仕事はどうだったっけかな。
転職ぐせのある私にしては少々のトラブルはあったものの、なんとか耐えられたんじゃないか?上出来だよ私。それなりにそれなりだわ。
でも、成長はしてないか。
歳をとって鈍感になっただけかな。
世がパンデミックだ、ロックダウンだと騒いでいても騒いでなくてもいつもどおり、さして成長していない、出会いを求めにいかない私でいたのだ。
世の中がどうなろうが私は私らしく、1日1日を無駄にして生きていたらしい。全く誇れない。
さて、話を戻そう。
来年で私の年齢は大台に乗る。
不妊治療の技術は進歩しているらしいし、40代で初産なんてことも聞く。
経済的に自立した女性が独身を謳歌することは大変素晴らしいことで、
そういう生き方に輝きや未来を感じると同時に、結婚や妊娠をするのであれば若いうちにしておくべきであったなと私は思う。
「マンション購入 ローン」「賃貸 購入 メリット デメリット」「老人ホーム 資金」「独居老人 死亡」
行く先の不安は絶えない。
パートナー欲しいな。
欲を言えば、子供も。
そう思って、マッチングアプリを始めたのも今年のことだったな。
メッセージをやりあおうと、実際に会おうと、これもなかなか先が見えない。
ただ、知らない人とコミュニケーションをとることで自分を知れたこと。
それは、普段出会いのない私にとって大きな糧になったと思う。
私のなかで気づきが芽生えて、そこから自分にフィードバックする。今後の人生に活かしていけそうな何かを学べる。
ただ、ここで思い出して欲しい。
目的は果たせていないのである。
そうなると、頼るのは酒である。
縋るように細い道を抜け、鰻の寝床へ向かうのだ。
酒が回る。
見知らぬ人たちの声も回る。
バンドマンたちが話す 「音楽をやる理由」 回り回る自問自答。
私の中で繰り返す 「人との出会いを求める理由」 回り回る自問自答。
私は何がしたいのかな。
達成されない目標、見失う目的、結婚や出産は選択肢のひとつだと自分を慰めること、それでも奇跡を願うこと。
そうやって流し込む日本酒。いぶりがっこ美味しいよ。
まさかじゃがいもとこんなに相性が良いなんて、この店に来るまで知らなかったな。
出会いってこういうものなのかな。
先入観を捨てて飛び込む。
ぐちゃぐちゃに崩されたじゃがいもの中へ。
そこで始まる何かがあるよね。
いや、出会いがないんだって。あっても活かせないんだって。
情けないよね。
回る 回る
今日も酒に回って、空いた心の穴に水分を満たして、戯言を垂れる。
酔いが覚めて、現実に戻る。
回る 回る
いつか巡りくる奇跡を夢見て 今日も私は私らしく一日を無駄にして生きる。
それでも生きる価値があると信じて。
(2020/12/05)
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