2021年6月8日 1学期のまとめ(後書き)のようなもの

 (残念ながら)試験対策のために試験の前にこれを読んでも、ほぼ(まったく)試験には役立ちません。

 これを書いている6月4日(金)は昨夜から雨でしたが、自己紹介に書いたようにいつも通り、朝5時にはカッパを着て家を出て飼い犬ジョンの散歩で後楽園を一周しました。雨が嫌いで雨が降ると散歩に行きたがらない犬もいるようですが、ジョンは雨が降ってもお構いなしです。

 1学期の基礎生物学1aは新型コロナウイルスの感染拡大防止対策のため、8週のうち、わずかに第2週めだけが対面の許された講義になってしまいました。ほとんどの受講生は最初から最後まで(試験を含めて)オンライン(オンデマンド)型講義での受講となりました。今年度4月から一般教育の受講登録システムの更新(変更)がありました。受講登録申請が簡略化されたためか、昨年度に開講された科目で対面講義での受講人数がそれまでの半分以下(講義室の席数の半分以下)に制限されたために受講できなかった2年生以上の学生が多く残ったためか、全学開放科目としてのこの基礎生物学1aの受講登録者は通常では考えられない356名となってしまいました。理学部の専門基礎科目としての受講生は39名(合わせて395名)です。当初は試験だけは講義室で100名の試験のできる会場を2会場で2回に分けて行えば、何とか行えるかとも考えていました。毎週の簡単な学習確認だけでも約400人ですから、1人に1分だけでも400分かかります。答案の採点は1人10分では到底終わりませんから、まるまる1週間は採点期間に当てなくては終わらないかと腹をくくっていましたが、(幸いにも?)オンライン試験になったため、採点地獄からは解放されました。専門基礎科目としては厳しく試験を行いたいところですが、全学開放の一般教育科目を兼ねるため、試験問題としてはかなり簡単な選択問題にしました。1回で合格点(60点)が取れない場合は3回まではチャレンジできるように設定してあります。

まとめ

 講義の初回でも触れましたが、この講義が一生のうちに受ける最後の生物学の講義になった人もいると思います。おもには細胞生物学の分野の内容を講義しましたが、もう一度振り返ってみましょう。

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 地球上に光合成細菌が現れ、今から25億年前くらいから大気組成の大きな変化がありました。光合成の仕組みについては第7週に習いました。

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 熱力学のところで習いましたが、熱力学第一法則=「エネルギー保存則」があります。地球の収支で考えると、太陽からの光(と熱)が植物により光合成によって糖の共有結合に保存されます。人などの動物は食物として取り込むことにより生命活動のエネルギー源としています。糖代謝で見たように、解糖系とミトコンドリアでの細胞呼吸によりエネルギーを効率的に取り出していました。
 太陽からの熱が大気圏内に余分に留まってしまうようになったことが地球温暖化の原因と考えられています。

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地球温暖化について

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 大気中の二酸化炭素濃度はずっと0.03%付近でしたが、産業革命後、人の活動に伴い急激に上昇し、ついに0.04%を越えてしまいました。地球温暖化が問題となっています。

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エコロジカル・フットプリント

 講義の中では触れる時間がとれませんでしたが、全く別の環境指標として「エコロジカル・フットプリント」という指標があります。WEB上で検索をかけてもらえば、WWFのサイトなどもヒットしますが、説明は下の通りです。

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 この指標を計算してみると、恐ろしい値が出てきます。少し古いデータですが下に2001年と2010年の値を示します。

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 人類全体のエコロジカル・フットプリントの値は1970年代に地球1個分の1.0を越え、今から10年前には既に地球1.5個分になってしまいました。家計に例えてみると単年度での支出が収入の1.5倍になっています。過去の蓄えを消費している形です。「地球上にある過去の蓄え」とは何でしょうか?化石燃料(石炭、石油、天然ガス)がこれにあたります。バーチャルな世界ならば、借金がいくら増えても問題ないかもしれませんが、リアル世界の地球では長続きしません。収支のバランスのとれた「地球1個分の暮らし」に戻す必要があります。

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人新世

 地質時代は生物の進化(と絶滅)を基準に大きく4つに分けられていました(酸素濃度の推移を表した図では古い名前が使われていました)。それは先カンブリア時代,古生代,中生代,新生代の4つです。現代は新生代の中の第四紀、完新世(11,700年前から現代まで)に区分されていますが、現代を人新世(ひとしんせい、じんしんせい)という新たな区分でとらえる考え方が出てきました。地球の歴史とともに積み重なってきた地層に人類の活動により不連続な新たな層が加わったからです。今では上空からの地上の様子を飛行機から、宇宙ステーションからの映像などで簡単に確認することができますが、人類はそれまでの地球のもっていた景色を一変させました。宇宙ステーションから関東地方の夜景を見ると、巨大なアメーバが富士山麓に向かって触手を伸ばしているようにも見えます。
 人類が今後も持続的に地球で生きていくためには、地球温暖化、エネルギー問題など、日本という国としてだけではなく世界が協力して乗り越えていかなくてはならない課題があります。生物学的考え方だけから答えを出すことは困難ですが、生物学的考え方を除外してしまっては解決法を見つけるのは難しいと思います。

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それでは、1学期はこれで終了です。

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